首都圏で流行中の「風疹」、ワクチン未接種世代の30~50代男性は要注意

2018/9/4 記事改定日: 2018/9/12
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

いま、東京や千葉、神奈川などの首都圏を中心に流行が拡大している「風疹」。対策としては予防接種が有効ですが、現在30~50代の男性はそもそも未接種の可能性があり、実際にこの世代の男性での感染が多く見られます。

また、過去に接種歴のある人でも風疹に感染してしまうケースも存在します。そこで今回は、風疹の流行状況や抗体検査を特に受けるべき人についてお伝えしていきます。

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いま首都圏で、男性の風疹患者が急増中

2018年9月11日、国立感染症研究所は今年の風疹の患者数が362人になったと発表しました(9月2日までの集計値)。これは昨年1年間の患者数のおよそ4倍にあたる数値で、風疹が大流行した2013年に匹敵する規模の感染拡大が危惧されています。

東京、千葉、神奈川などの首都圏を中心に感染が報告されており、さらに累計患者の8割は男性で、特に30~40代の男性患者が多くを占めます。一方の女性患者は、特に20代に多く見られます。

風疹は、妊婦が感染すると高リスクな感染症

そもそも風疹とは、風疹ウイルスの感染が原因で起こる感染症の一種です。みなさんも子供の頃に予防接種を受けたことがあるかと思いますが、風疹を発症すると全身の発疹や38℃前後の発熱、耳や首の後ろのリンパ節の腫れなどの症状が現れます。子供の場合は軽い症状で済むことが多いのですが、大人が発症すると高熱に見舞われたり、発疹が長引いたりと重症化することがあります。

なかでも、風疹に感染した場合特にリスクが高いとされるのが、妊娠中の女性です。妊娠初期(妊娠20週頃まで)に風疹ウイルスに感染すると胎児にも感染し、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」という病気になる恐れがあります。

先天性風疹症候群とは、難聴や心臓の病気、白内障といった目の病気、精神や運動発達の遅れ、発育の遅れ、低出生体重など、風疹ウイルスの感染が原因で起こる障害のことです。先天性風疹症候群の発症リスクは、風疹の感染が妊娠初期であればあるほど高いことがわかっており、特に妊娠12週までが高リスクとされています。

パートナーの男性や家族、職場の人もワクチン接種が必要!

風疹は予防接種を受ければ高い確率で感染を予防できる感染症ですが、妊娠中の女性は予防接種を受けることはできません。しかしながら風疹は感染力が強く、感染者の咳やくしゃみ、会話中の唾などの飛沫を吸い込むことによって感染してしまいます。そのため、妊娠中の女性のパートナーや家族はもちろんですが、抗体を持っていない人は同じ職場で働く人も予防接種を受け、流行を未然に防ぐ必要があるのです

「昔、予防接種を受けたことがあるから大丈夫」とは限らない

風疹の感染を防ぐには予防接種が有効ですが、多くの方は子供の頃に風疹ワクチンを接種したことがあると思います。なので「予防接種を受けたことがあるし、自分には関係のない話」とお思いの方も少なくないでしょう。しかし、生まれた年や年齢によっては、たとえ予防接種を受けていても抗体が不十分な可能性があります。

2012~2013年、当時20代以上の人を中心に、風疹が流行したことを覚えているでしょうか。平成2年4月2日以降に生まれた人であれば、2回風疹の予防接種を受ける機会がありましたが、それより上の年齢の人は予防接種を受けていても1回です。
さらに、昭和54年4月1日以前に生まれた男性は予防接種の機会が一度もなかったため、風疹に対して十分な免疫を持たない世代が蓄積していたことが、このような流行を引き起こしたとも考えられます。

また、現在は風疹ワクチンの接種率の上昇とともに風疹ウイルス自体にさらされる機会も減ってしまったことで、幼少期に風疹ワクチンを1回しか接種していない人が増え、その人達がそれ以降免疫が強化されずに、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まってしまったことも、流行の原因のひとつかもしれません。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

風疹への免疫がないor低い年代って?

では、風疹への免疫がない、あるいは低い可能性があるのは、具体的に何年生まれの人なのでしょうか。風疹の予防接種の回数が1回のみ、または全く接種をしたことのない世代は、以下の通りです。

昭和37年4月1日以前生まれ 定期接種は行われていませんが、自然に風疹に感染しているため、免疫がある人も多いです。
昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれ 中学生のときに1回、女性のみを対象として、学校で風疹ワクチンの集団接種が行われています。一方、男性は定期接種が行われていないので、風疹に対して免疫がない人が多いです。
昭和54年4月2日~昭和62年10月1日生まれ 中学生のときに1回、男女とも風疹ワクチンの接種を受けることになっていました(一部、風疹ワクチンではなくMMRワクチンを1回、1~6歳の間に受けた人もいます)が、個別に医療機関で予防接種を受ける制度であったため、接種率が低く、風疹の免疫を持たない人が多いです。
昭和62年10月2日~平成2年4月1日生まれ 男女とも1~7歳半のときに1回、風疹ワクチンの接種を受けることになっていました(1~6歳の間に1回、風疹ワクチンではなくMMRワクチンを受けた人もいます)。接種率は比較的高いのですが、自然に風疹に感染する機会が減少していたため、接種を受けていない人は風疹の免疫がない人が比較的多い世代です。
平成2年4月2日~平成7年4月1日生まれ 男女とも1~7歳半までに、1回目の風疹ワクチン(あるいは、1~6歳の間に1回目のMMRワクチン)を受けています。そして高校3年生相当の年齢で、MRワクチンの追加接種をすることになった世代でもあります。つまり計2回、予防接種をする機会がありましたが、2回目の接種を受けそびれている人も少なくありません

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

30~50代の男性&接種回数が1回のみの人は要注意!

上記の表でわかるように、特に風疹への免疫が足りないと考えられるのは、昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれ、2018年現在30~50代の男性です。また、昭和54年4月2日以降の生まれであっても、少なくとも平成2年4月1日までに生まれた方は、1回しか予防接種の機会がありません。

現在の制度では、風疹ワクチンは1歳のときと小学校入学前の1年間の計2回、接種を行うことになっています。これは、2回の接種で風疹を約99%予防できるためで、1回の接種では予防率は約95%に留まるとされるからです。95%も高い数値とはいえますが、それでも5%ほどの人は抗体がつくられないということを示します。また繰り返しになりますが、1回の接種の場合、年数が経つにつれて徐々に抗体が減ってしまうともいわれています。

1回きりの接種ではこうした問題点があるために、抗体をより長く持続させるためにも、また1回の接種では抗体をもてない人のためにも、風疹ワクチンは2回接種することが重要なのです。

冒頭にて「現在男性の風疹患者は30~40代に多いこと、女性は20代に多いこと」をお伝えしましたが、これは表からわかる「ワクチン未接種世代」「接種回数不足の世代」とおおよそ重なります。該当する世代の人は、なるべく早めに抗体検査と予防接種を受けるようにしてください。

おわりに:「ワクチン未接種世代」「接種回数不足の世代」は抗体検査を

上記の表で「風疹への免疫が足りないかもしれない」と思った方は、まずは抗体検査を受けるようにしましょう。抗体検査は医療機関だけでなく、お住まいの自治体や保健所でも受けられ、自治体によっては助成金が下りる可能性もあります。

助成制度について詳しく知りたい方は、ぜひ次の記事もチェックしてみてください。

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