記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/19 記事改定日: 2020/6/15
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
手足がしびれる、歩くと足が痛い、じっとしていても手足が刺すように痛むなどの症状があれば、それは足の病気ではなく、血管の病気「閉塞性動脈硬化症」かもしれません。足の動脈硬化である閉塞性動脈硬化症について、どんな初期症状があらわれるか、検査法や予防法を解説していきます。
足に異常を感じたとき、最初は湿布やマッサージなどで治そうとする人も多いことでしょう。しかし、痛む頻度が多くなったり、歩いていないときでもしびれや痛みを感じるようであれば、足の血管に動脈硬化が起きている可能性があります。聞きなれない病名かもしれませんが、これを「閉塞性動脈硬化症」といいます。
最初の初期症状としては代表的なものは冷えであり、もしこれまで冷え性でもなかったのに、急に季節を問わず足元が冷えるようになった、歩いている時に軽いしびれを感じる、などの症状が見られた場合には注意が必要です。すみやかに医療機関を受診するようにしてください。
なお、閉塞性動脈硬化症は、最近はもう少し幅広い概念を表す「末梢動脈疾患(PAD)」と言われることが多くなっていますが、この記事では「閉塞性動脈硬化症」を使っています。
閉塞性動脈硬化症の初期症状として、もっとも典型的なものが「間欠性跛行」です。
安静にしているときや歩き始めは痛みを感じないのに、歩き続けることで痛みや痺れ、疲労感を感じるようになることが間欠性跛行です。足を引きずるような歩き方になり、休憩を挟めば歩けるようになることが特徴です。もし長時間歩いているときに、「歩く」「休憩」をくり返している場合は間欠性跛行のサインの可能性があるので早めに病院へ行きましょう。
閉塞性動脈硬化症は中高年の男性に多くみられる疾患で、放置していると潰瘍ができ、最悪の場合は足を切断しなければいけないケースもあります。
初期段階で気づくことができれば足を切断するといった状況を免れることができます。したがって、いかに早くこの病気に気づくことができるか、正しい処置を受けられるかが、非常に重要になってきます。
間欠性跛行の兆候があるときはもちろんですが、足の痛みが頻繁に起こったり、思い当たるきっかけがないのに足に痛みがあるときは、早めに病院で検査してもらいましょう。
閉塞性動脈硬化症には、ぜひ覚えておきたい注意点があります。それは、この病気の診断を受けた段階で、足だけではなく、脳や心臓などの血管にも動脈硬化が生じている可能性があるということです。これは、脳卒中や心筋梗塞など「命の危険がある病気」のリスクも高い状態にあるといえます。
閉塞性動脈硬化症は放置すると足の切断や全身の動脈硬化を引き起こすおそれがありますので、下記のような気になる症状があらわれた時点で医療機関を受診することを強くおすすめします。
病院では、視診、触診、上腕・足関節の血圧比検査(ABI)、血管造影剤を使用したレントゲン検査医、そのほかサーモグラフィーや超音波を用いて、精密に検査が行われます。
また、動脈硬化に関連するほかの病気を合併している可能性が高いため、糖尿病や高血圧、高脂血症などの検査をすることもあるでしょう。
これらの検査で、自覚症状がほとんどない状態でも病気を見つけることができることがあります。少しでも「おかしい」と感じたら、念のため病院を受診するようにし、検査を受けた方がいいか医師に判断してもらいましょう。
閉塞性動脈硬化症は喫煙習慣によって引き起こされることが多いため、診断された場合は禁煙することを強くすすめられます。また、血行をよくするには薬物療法を行うことも大切ですが、初期段階では適度な運動をして血行を改善する運動療法が行われるのが一般的です。
このような生活習慣の改善を行っても症状が改善しない場合や診断時にすでに重度な閉塞性動脈硬化症であるときは、次のような治療が行われます。
閉塞性動脈硬化症では、足を中心に全身の血流を良くすることが必要です。そのため、まずは血液をサラサラにする抗血小板薬や血管を広げる血管拡張薬などの投与が行われます。
薬物療法を行っても症状が改善しない場合などは、閉塞した血管を拡げたり、別の血流路を形成して血行を改善したりする手術が必要になります。
近年では、血管にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入して、狭くなった部位をステントなどで広げるカテーテル治療が広く行われるようになっています。一方で、カテーテル治療が困難な部位の血管が閉塞している場合やカテーテル治療では対応できないような重度な閉塞がある場合には、手術によって「バイパス」を形成する治療が必要になります。
動脈硬化は血管の老化ともいわれることから、どんな人にでも起こる可能性があります。
では、閉塞性動脈硬化症を予防するために、私たちが日頃からどんなことに気をつければよいのでしょうか? 以下の項目を、ぜひチェックしてみてください。
動脈硬化の進行を遅らせるためには、運動が欠かせません。血液の循環を促進させるとともに、筋力をつけることで血管の伸縮を助けることができます。できれば週に3回以上、30分〜1時間適度のウォーキングが良いとされていますが、まずは階段を使うように心がけるなど、できることから始めてみましょう。
閉塞性動脈硬化の患者さんのうち、全体の3/5に高血圧の持病があり、1/4に糖尿病の持病がみられるというデータがあります。症状がないことを理由に、高血圧や糖尿病などといった生活習慣病を放置してはいけません。
初期症状の冷えを見逃さないようにしましょう。定期的に足先を触るなどし、左右の感覚におかしなところがないか、片方だけ冷えていないかなど、チェックしてみてください。
閉塞性動脈硬化は、誰もがかかる可能性のある病気です。日頃から運動を心がけるとともに、動脈硬化予防と一緒に生活習慣や健康状態の改善に努めましょう。また、冷えや痛みなど初期症状に気づいたら放置せず、すみやかに医療機関を受診してください。
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