記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/25 記事改定日: 2019/5/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胃潰瘍とは、胃の壁に一定以上の傷がついている状態のことです。
腹痛や出血、貧血などを引き起こし、胃が位置するみぞおちあたりに痛みを感じます。
こちらでは、胃潰瘍を治療するにあたって手術は必要なのか、説明していきます。
胃潰瘍の主な原因は、ピロリ菌の感染と、解熱鎮痛剤の一種である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服です。
胃は健康であれば、胃酸やペプシンと呼ばれるたんぱく質分解酵素などから自分を守るために、胃粘液を分泌して粘膜を保護擦ることができます。
しかし胃粘液や胃壁の血流減少が起こると、胃酸やペプシンの働きが優位になり、胃粘膜を傷つけてしまうのです。
胃壁は粘膜固有層・粘膜下層・固有筋層・漿膜(しょうまく)の4層に分けられますが、胃潰瘍は粘膜下層よりも深いところまで傷ができている状態を指し、治療は薬物療法によって行われます。
治療では、胃の壁に傷をつけてしまう胃酸などを抑える薬、胃の粘液を増加させる薬、血流を改善させる薬、傷の修復を促す薬などが使われます。
ただし、出血性潰瘍・穿孔性潰瘍・難治性潰瘍・狭窄症例などがある場合は、入院や手術が必要になる場合があります。
とくに出血性潰瘍の場合は強くすすめられることもあります。出血性潰瘍を患った場合、潰瘍部分から露出した血管から出血が起こり、吐血、下血(タール便)、貧血などの症状があらわれます。
この場合では薬物療法ではなく、内視鏡による止血術が行なわれます。
内視鏡を用いて行なう止血術には、以下の方法があります。
出血部位を加熱して止血する方法です。
レーザー照射法、高周波凝固法、ヒ-トプローブ法などがあり、組織を凝固止血します。
レーザー照射法は、出血部位をレーザーで焼き、出血を止めます。
高周波電流による止血法は、出血部位に高周波電流を流して、集中して発生する熱により止血します。
ヒートプローブによる止血法は、先端が発熱する鉗子を血管の周囲に押し当てて止血します。
出血している血管や粘膜を、クリップで圧迫して止血する方法です。
高周波やレーザーなどの熱を使わずに止血する方法なので、より安全性が高いといわれています。
エピネフリンと呼ばれるホルモンを使い、血管を収縮させて出血部位を止血する方法です。
血液を硬化させて止血する方法です。
出血部位(血管周囲)に少しずつ局注し、出血血管を収縮させ、血管壁の凝固・壊死、血栓形成を導きます。
強力な止血効果を得ることができますが、組織への障害作用も強いため、総量に注意して使用しなくてはいけません。
胃酸分泌を抑える薬剤や内視鏡治療の進歩により、現在では胃潰瘍で手術が必要になるケースは殆どありません。
しかし、なかには出血が多く、上記のような内視鏡治療を行っても止血ができないケースもあります。そのような場合には多量の出血により非常に危険な状態になることもあり、手術による止血や病変部の切除を行うこともあります。
手術を行った場合、入院期間は全身の状態や術後の経過によって異なりますが、一般的には2~3週間程度の期間を要します。退院できる目安としては、手術の傷口が回復し、流動食から固形物が摂取できるようになることが挙げられます。
以上のような内視鏡手術後には、絶飲食、絶対安静、止血剤や胃酸を抑える薬の服用、もしくは点滴などの処置が必要です。
手術部位からの再出血があれば内視鏡検査を行ない、状態にあわせた処置が施されます。
また、再出血がなくても露出していた血管の確認のため、内視鏡検査を行なうケースもあります。
術後の食事再開は、露出していた血管の消失が確認されてから医師の指示に従い、ゼリーやヨーグルトなどの流動食から食事を始めて、徐々にお粥やうどんなどの消化しやすいものに変えていき、その後通常食と食上げしていきます。
腹圧のかかる運動(ゴルフやテニス、ジョギングなど)は 1週間は禁止され、遠出や海外などへの旅行も、何かあったときのために避けるように指示されるでしょう。その他、アルコールや喫煙、入浴の制限などもあります。
体の中の「見えない場所」ですので不安もあると思いますが、医師の指示に従い手術部位に気を使いながら日常生活を送れば、再出血のリスクが少なく良好に過ごせるといわれています。
胃潰瘍は再発しやすく、腹部の痛みや貧血など、日常生活の質を下げることにもなりかねません。
とくに出血性潰瘍は、胃潰瘍の合併症で最も多いといわれています。
薬物を服用するだけでの治療は難しい場合もありますので、医師にすすめられた場合はリスクとメリットを十分理解したうえで、手術への意思決定をしましょう。
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