肝臓の調子が悪くなると、眠気や疲れに襲われるのはどうして?

2018/10/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

人間の体の各臓器を正常に働かせるための大切な役割を持つ肝臓は、いわば縁の下の力持ちのような存在です。この肝臓がダメージを受けて機能が低下すると、私たちの体には、気づかぬうちに思わぬ影響が出ることがあります。
ここでは、肝臓が調子が悪くなったときにみられる症状や、その改善法について解説していきます。

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肝臓が弱くなると疲れや眠気が出てくるのはどうして?

肝臓は、タンパク質、糖質、脂質などを分解して、アルコールなどの有害物質を排泄する働きを持ち、また、吸収された栄養素を体のエネルギー源として作り変えるなど、多くの役割を担っています。したがって、肝臓がダメージを受けると、体全体にさまざまな不調をもたらす可能性があります。

肝機能が低下すると、「体がだるい」「眠い」「疲れやすい」「食欲がない」などの症状がみられることがありますが、これは肝臓の働きが悪くなったために、体に必要なエネルギー源を作り出せず、有害物質が蓄積したことが原因となって起こるものです。もし、寝ても疲れがとれない、だるくて仕事が捗らないなど、年齢やストレスのせいだと思いがちな症状がみられたら、それは肝機能の低下が原因かもしれません。

また、肝臓機能の低下によって、炎症や発熱の原因となる物質の分泌が増え、微熱などがみられることもあります。単なる疲労感だけでなく、悪化すると深刻な病気を引き起こすことがあるため、くれぐれも注意が必要です。

疲れの原因は肝臓かも…と思ったときに効く食べ物は?

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど、我慢強くてタフな臓器です。自覚症状のないまま、気づいたときには手遅れというケースも少なくありません。もし、日頃の生活習慣として下記の項目に当てはまるものがあれば、知らず知らずのうちに、肝臓に負担をかけている可能性があることを自覚しておきましょう。もし、日頃からこれらの生活習慣に覚えがあり、常に疲労感を感じているようであれば、肝臓機能が低下している可能性が高いかもしれません。

  1. 暴飲暴食を続けている
  2. 慢性的な運動不足
  3. 過労やストレスが多い
  4. 喫煙の習慣がある
  5. 睡眠不足が続いている

肝臓を健康に保つためには、適度な運動や規則正しい生活、そして何よりバランスの良い食事が必要です。肝臓をいたわり、元気にするためにはビタミン類、なかでもビタミンB群やミネラルが欠かせません。これらは主に、豚肉や大豆製品、ナッツ類、牛乳、うなぎやカツオなどの魚に多く含まれています。また、抗酸化物質を多く含む緑黄色野菜、柿などの果物、日本茶やコーヒーも肝臓をサポートする食品です。また、胆汁の分泌を助け脂肪肝を改善するタウリンという栄養素を含むしじみや牡蠣も、肝臓の強い味方となります。

このほかにも、脂質や糖質を控えめにすることや、塩分の摂りすぎに注意すること、肝臓の解毒作用に負担となってしまう加工食品やレトルト食品、スナック菓子、インスタント食品を控えることも、肝臓をいたわる大切なポイントです。

肝臓からくる疲れを和らげるために、日常生活で気をつけることは?

また、忘れてはいけないのが、運動や睡眠などの日常生活の見直しです。黄疸や腹水、むくみなどがみられる進行した肝硬変の場合などを除き、30分前後のウォーキングなど、軽く汗をかく程度の適度な運動は、肝臓機能の回復に大変役立ちます。ただし、食後は胃腸と肝臓が活発に働くため、できれば食後1〜2時間はゆったりと過ごすことを心がけてください。

そして、規則正しい睡眠も大切です。もし、昼夜が逆転するようなことがあれば、肝性脳症(肝臓の機能低下による意識障害)の可能性もありますので、医師に相談するようにしましょう。場合によっては昼寝も効果的ですが、くれぐれも長く寝すぎないよう心がけてください。

食事や日常生活に気をつけても疲れが取れないときは病院へ

以上のような生活習慣、あるいは食生活を改善しても疲れがとれない場合は、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。くり返しますが、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど、我慢強くてタフな臓器です。それゆえに、異常が現れても痛みなどの症状を感じることはほとんどありません。これは、肝臓が再生能力に優れているため、ダメージを受けても正常細胞が余分に働き、機能を維持しようとするためです。

したがって、自分の肝臓が正常に機能しているかどうかを正確に知るためには、定期的な健康診断などで、血液検査を行うしかありません。どれだけ日常生活に気をつけていても、特有の症状が出にくいために、気づいたときには肝炎や肝障害、肝硬変や肝臓がんといった深刻な病気に陥ることがあるのです。少しでも「おかしい」と感じることがあれば、症状が進行する前に医療機関で相談をするようにしてください。

おわりに:どうしても疲れがとれない場合は、迷わず医療機関を受診しよう!

肝臓という臓器が、私たちの体の中で非常に多くの役割を担っていることがおわかりいただけたかと思います。食生活や生活習慣を見直しても、疲れがとれなかったり、だるさが続くようであれば、「これくらいよくあることだから」と放置せずに、迷わず医療機関を受診するようにしてください。

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