記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/11
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
膵臓にできる腫瘍の一種「IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)」をご存知でしょうか。今回はこのIPMNがどんな病気なのか、タイプごとの特徴や治療法についてお伝えしていきます。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)とは、膵臓にできる腫瘍の一種です。膵臓の中にある膵液の流れる管である膵管の中に、乳頭状に増殖する膵腫瘍のことで、どろどろとした粘液を産生することで膵臓の中に嚢胞をつくる疾患です。この嚢胞ができることによって膵管が拡張されるため腹痛や腰痛が出現することもあります。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)は、腫瘍性細胞ががん化する可能性があるものの、よほど病気が進んで膵管の外側へ飛び散っていない限りは、100%近く治せるといわれています。その理由としてIPMNは、がん化していても膵管の中にがんがとどまっていることが多いからです。そのため予後の良い膵がんともいわれています。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)は主膵管型IPMN、分枝型IPMN、混合型IPMNの3種類があります。
主膵管型IPMNとは、主膵管の内側の腫瘍性細胞から産生された粘液により膵液の流れが悪くなり、主膵管が全長にわたって太くなるのが特徴で、全体的あるいは部分的に拡張します。主膵管が5mm以上に拡張している場合のことを指す場合が多いのですが、主膵管の太さが10mm以上の場合はハイリスク群として、がんを合併する可能性が非常に高いとされているのがこのタイプです。
分枝型IPMNとは、膵液を集めて十二指腸まで誘導する膵管の枝に、ブドウの房状に多房性の嚢胞の形を呈するもので、良性から悪性までさまざまです。主膵管と交通する分枝が5mm以上に拡張している場合を指します。嚢胞の大きさが3cm以上であったり、嚢胞の中に隆起性病変が見られたり、嚢胞壁が厚くなっているような場合は悪性の可能性が高いことが報告されています。他にも短期間で急激に嚢胞が大きくなった場合も注意が必要です。
混合型IPMNとは、主膵管型IPMNと分岐型IPMNの両者が混合しているタイプであり、がんが合併する可能性が高いといわれています。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)は悪性であった場合や悪性が疑われる場合には、膵がんと考えて手術にて切除をするのが基本的な治療方針です。切除法は3種類あります。
1つ目が膵尾側除術といい、PMNが膵体部あるいは膵尾部に限局している場合に行われます。がんの可能性が低いなど状況によっては脾臓を残すことが可能です。
2つ目は膵中央切除術といい、病変が膵体部に限局し、がんの可能性が少ない場合に選択される方法です。膵臓の中央部を小範囲だけ切除するため、膵臓の多くを温存することができるというメリットがありますが、その一方で尾側膵に対する再建術が必要となります。また膵離断面が2か所になるため膵液が手術後に漏れ出し、重篤化する術後膵液瘻の発生率が高まるといったデメリットもあります。
3つ目は膵頭十二指腸切除術で通常の膵臓がんの場合にも行われる術式です。IPMNが膵頭部に存在する場合に選択されます。
これらの手術をする範囲によっては、膵臓からのインスリン分泌量が減少することもあります。その場合はインスリン自己注射療法を導入することもあります。
また、年齢や体調によっては手術を受けられないこともあります。そういった場合や進行していて手術で取ることが難しい場合は、化学療法や放射線療法も検討されます。また、胆管や十二指腸が詰まってしまう場合にはステントを通して再開通させたり、胃空腸バイパス術などで食べ物や胆汁の逃げ道を作ったりといった対症療法が行われます。
あまり聞きなれない病気であるIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)。がん化する可能性があるため、怖い病気と考える方もいるかもしれません。しかしがん化する可能性は低く、予後良好な膵がんともいわれています。
治療では一般的に手術で嚢胞部分を切除することになりますが、場合によっては化学療法や放射線治療をしたりすることもあります。IPMNが発見されたら、医師の指示に従い、治療を進めていきましょう。
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