記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
国の難病にも指定されている潰瘍性大腸炎。この潰瘍性大腸炎の合併症が起こる可能性があるのは、大腸だけに限らないということをご存知でしょうか。以降で詳しく解説します。
潰瘍(かいよう)性大腸炎は、大腸の内側の粘膜に炎症が起き、潰瘍やびらんができる病気です。潰瘍とは、皮膚や粘膜などの一部の組織がただれて欠けてしまう状態のことです。浅いものをびらんといい、潰瘍が深くなると穴が開いて、穿孔(せんこう)を起こすこともあります。
潰瘍性大腸炎は、厚生労働省から難病に指定された原因不明の病気であり、10代から20代前半では女性より男性の発症者が多い傾向にあります。その他の年齢では男女間にほとんど差はなく、幼児から高齢者まで幅広い年代で発症します。
主な症状としては、下痢、血便、腹痛、発熱、貧血などがありますが、これらの症状以外に合併症に注意が必要な疾患でもあります。潰瘍性大腸炎の合併症は大腸を中心に起こるものだけではありません。一見すると関係がなさそうな、眼や関節に起こる合併症もあります。
潰瘍性大腸炎において、大腸そのものに起こる合併症は腸管合併症といいます。緊急手術が必要になったり、命に関わったりするものもあります。
潰瘍によって粘膜が深くまで欠けてむき出しになった血管や、潰瘍が治った後にできた塊から大量出血をしたりすると、ショック症状になったり貧血が起こったりすることがあります。
ショック症状とは、急激に血液が失われることで血液循環が悪くなり、全身に十分な血液が運ばれなくなることです。ショック状態が長引くと、それぞれの臓器に酸素や栄養が足りなくなり、組織や臓器に重大な障害を引き起こしかねません。
潰瘍性大腸炎の症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しているうちに、腸管が狭くなってしまう狭窄(きょうさく)や腸管に穴が開く穿孔なども合併症として起こります。狭窄や穿孔では手術が必要になることがあります。
腸内のガスや毒素は本来は排出されるものですが、こういった不要なものが腸内に溜まり、腸が巨大化されてしまった状態です。中毒性巨大結腸症が起こると、中毒症状として発熱や、脈が速くなる頻脈などの全身症状があらわれます。また、腸管の穿孔が起こるリスクがあり、緊急手術が必要となることもあります。
潰瘍性大腸炎による炎症が長期にわたったことで、腸管内でがんが生じるリスクもあります。
潰瘍性大腸炎では、腸以外のさまざまな場所でも合併症が起こります。関節や皮膚、目の病変、口腔内の炎症など、様々なものがあります。
最も多い合併症は関節炎です。足首や膝といった関節が腫れて痛みます。結節性紅斑(けっせつせいこうはん)は、足首やすねに多くみられ、痛みと赤い腫れが生じます。壊疽性膿皮症は、多くは足に見られる症状で、炎症が広がるとともに深い潰瘍が生じます。
また、目の症状としては、虹彩やぶどう膜と呼ばれる部分に炎症が起こり、強い痛みや充血のほか、光をまぶしく感じます。丸くて白いできもの(潰瘍)が、頬や唇の内側、舌、歯茎などに発生するアフタ性口内炎が起こることもあります。
ほかにも、胆のうに結石ができたり、肝硬変や肝不全になったりすることもあります。また、血管内に血の固まりができて血流が阻害されてしまうこともあります。
潰瘍性大腸炎は難病に指定されている疾患です。大腸の粘膜に炎症が起こり、下痢や血便といった症状があります。潰瘍性大腸炎の原因ははっきりしませんが、炎症を抑える治療が上手くいけば、日常生活に大きな支障なく暮らしていくことができます。
ただし、症状が進むと大腸だけではなく、全身に合併症が起こる可能性がある病気です。主治医と相談をしながら、きちんと治療を続けていきましょう。
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