記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
狭心症の治療法のひとつがステント治療ですが、このステントとはいったいどんなものでしょうか。ステントの種類や特性、リスクなどを解説します。
ステント術は狭心症の基本的な治療法で、血管内にステントを留置することで、再狭窄が起きないよう血管を支えるという仕組みになっています。
狭心症とは心臓に栄養を運ぶ冠動脈という血管にコレステロールが蓄積するなどして動脈硬化となり、血管の内腔が狭くなって血流が不十分となり、心臓に血液が送られない虚血状態に陥ったことによってさまざまな症状が出現する病気です。
この病気は狭くなった血管の内腔を広げなければならず、そのためにステント術が行われます。
ステントという治療法は1994年に保険適応となっており、日本で心臓血管の治療の主流ともなっています。その安全性も高いことが報告されており、保険適応となって20年あまりたった現在でもステントの腐食などの報告はあがっていません。
冠動脈ステントの種類には、「ベアメタルステント(BMS)」と「薬剤溶出性ステント(DES)」があります。
ベアメタルステント(BMS)とは、通常の金属製のステントのことをいいます。
ベアメタルステントのメリットはステントが血管の細胞に覆われるため、むき出しの状態ではなくなることから、血小板と反応しにくく、ステント血栓症が起きにくいということや、別の治療法であるバルーン留置術と比較して再狭窄が起きにくいというところにあります。
デメリットとしてはステントという金属が体に異物と認識されてしまうので、炎症がおこり、血管の壁が厚くなってしまうことから、再狭窄が一定程度起きるということです。ベアメタルステントによる再狭窄の可能性は約20~40%とされています。
一方、薬剤溶出性ステント(DES)とは、ステントの表面にコーティングされた薬剤が溶出することによって、再狭窄を起こりにくくしたステントのことです。現在日本では、シロリムス、パクリタキセル、ゾタロリムスをコーティングしたステントが使用されています。
メリットは、血管の細胞増殖を防ぐ薬剤をステントから徐々に溶出させていることによって、ベアメタルステントと比べて再狭窄を起こしにくいというところです。
デメリットはステントが血管の細胞に覆われず、むき出しのままとなるため、血小板と反応しやすく、その結果としてステント血栓症が起きやすいことです。そのため、予防として強力な抗血小板薬が必要になってしまいます。
冠動脈ステント術は、前述したように合併症として再狭窄を起こす可能性があります。
ベアメタルステントでは再狭窄を起こす可能性が薬剤溶出性ステントと比較して高いものの、6カ月前後で再狭窄を認めなかった場合はその後に再狭窄をきたすことは少ないのが特徴で、狭窄度が軽快(退縮)することが多くなります。
一方、薬剤溶出ステントでは再狭窄を起こす可能性が極めて少ないものの、1年以内に再狭窄を認めなくても,その後に再狭窄が進行する場合が少なくありません。また、日本では平成16年8月から薬物溶出性ステントが保険認可されているものの、ベアメタルステントと比較すると値段が高いということも特徴となります。
ステント術とは狭心症の治療に主に用いられる治療法で、ステントで狭くなっている血管の内腔を広げることで血流を再開通させるものです。
ステントにはベアメタルステントと薬剤溶出性ステントの2種類があり、それぞれメリット、デメリットがあります。特に薬剤溶出性ステントはステント術の中でも新しい治療法で、現在は保健認可されているものの治療費は従来のステント術と比較すれば高価になります。しかしながら自分の体に合ったステント治療を受けることが望ましいため、主治医と相談して決定するようにしましょう。
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