記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
お腹の風邪ともいわれる「胃腸風邪」を引いた場合、ぱっと思いつく症状は下痢や嘔吐などでしょう。では、ただの胃腸風邪で高熱が出ることはあるのでしょうか?治療法と併せて解説していきます。
風邪は、鼻から肺までの空気の通り道にウイルスや細菌が侵入し炎症を起こして、鼻水、のどの痛み、咳などがでる気道感染症です。「胃腸風邪」とは、同じようにウイルスや細菌の感染によって起こる病気ですが、気道ではなく消化管に入って炎症を起こし、嘔吐や下痢、腹痛などを起こします。
これは、風邪とは全く異なる「感染性胃腸炎」とよばれるもので、イメージしやすくするために胃腸風邪などと説明される場合がありますが胃腸炎と同じです。
ウイルス性の感染性胃腸炎には、突然強烈な吐き気や嘔吐を起こすノロウイルス、赤ちゃんに多いロタウイルス、風邪に近い症状に加え種類によってさまざまな消化器官に症状を起こすアデノウイルスなどがあります。また、細菌性には代表的な食中毒であるカンピロバクターのほか、サルモネラ、ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがあります。
胃腸風邪は消化器に起こる感染症なので一般の風邪薬では治らず、逆に胃を荒らしてしまう場合もあります。治療は、細菌性のものには抗生物質などを投与しますが、ウイルス性のものには特効薬がなく、基本的に対症療法となります。
通常の胃腸風邪の場合38℃以上の発熱はなく、ウイルス感染によるものの場合には、症状である嘔吐や下痢によってウイルスが排出されるまで水分を補給し、食事はしないようにするのが一番です。ただし、水分がとれない状態であれば、吐き気止めの坐薬を使った後に少量ずつとるようにし、それでもだめな場合には医療機関で点滴による補液を受けるようにしましょう。
通常の胃腸風邪では、38℃以上の発熱はありません。高熱がある場合は血液検査を行い、その結果、細菌性胃腸炎であれば抗生物質の投与、点滴による補液を行います。そうでなければロタウイルス感染が疑われます。
ロタウイルスは、生後半年から2歳前後の子供に感染しやすく、ほとんどが5歳までに1度は経験するものです。成人も感染することはありますが発症しても軽症ですみ、子供でも2度目の感染では軽症ですむ場合がほとんどです。
症状としては、2~4日の潜伏期間を経て、悪心・嘔吐、水便、38℃以上の高熱、下腹部の痛みがあらわれ、これが3~4日間続きます。汚染された食べ物やおもちゃなどをなめたりすることで感染し、治療の特効薬はなく嘔吐や下痢によってウイルスを体外に排出するしかありません。ただし、子供の場合は特に脱水症状に陥る危険があるため、医療機関で受診して点滴による補液、場合によっては解熱剤を処方してもらうようにしましょう。
胃腸風邪とよばれているものは、感染性胃腸炎というウイルスや細菌が消化管に炎症を起こす胃腸炎で、風邪とは異なります。
嘔吐、下痢、腹痛などが主な症状で、高熱が出ることはほとんどなく、高熱が出た場合は細菌性胃腸炎かロタウイルスが疑われます。早めに病院を受診しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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