脳挫傷の症状や後遺症の種類は?症状は時間がたってからあらわれる?

2019/1/10 記事改定日: 2020/9/28
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳挫傷とは、脳が何らかの強い衝撃によってダメージを受け、脳の組織が損傷してしまう疾患のことです。脳震盪も頭に衝撃を受けた状態ですが、脳挫傷とどんな違いがあるのでしょう。この記事では、脳挫傷の症状や後遺症「高次機能障害」の種類や日常生活への影響を説明します。

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脳挫傷とは?

脳挫傷とは、頭に外部から強いダメージが加わることにより、脳の実質(脳そのもの)の組織が損傷してしまう疾患です。損傷の起こった部位は死滅してしまうため、再生することができません。
脳挫傷の程度は、衝撃の強弱や意識障害の程度ではなく、損傷した部位が多いか少ないかによって決まります。

脳は通常、硬い頭蓋骨で守られていますが、交通事故などによって突然の強い加速や減速が起こり、強い衝撃が加わるとその頭蓋骨に脳そのものが打ちつけられてしまい、脳挫傷が起こることがあります。脳挫傷が起こると脳に出血が生じたりむくみが生じたりして、事故の際に生じたダメージだけでなく、二次的なダメージによっても脳の損傷が広がることもあります。

衝撃を受けた部位のすぐ近くに起こる脳挫傷を「直撃損傷」と呼び、衝撃を受けた部位と正反対の側の脳に起こる脳挫傷を「対側損傷」と呼んでいます。

脳挫傷と脳震盪の違いは?

脳震盪(のうしんとう)の場合、脳には強い衝撃が生じても損傷は起こっていないため、症状はしばらくすれば回復することがほとんどですが、脳挫傷は脳の細胞そのものにダメージを与えてしまうため、後遺症が残ることもあります。

脳挫傷の症状は時間がたってから現れることも?

脳挫傷の症状は、事故などでダメージを受けたその瞬間に起こるとは限りません。また、
脳挫傷の部位が非常に小さく狭い範囲であった場合は、特に症状が出なかったり、後遺症も残らないこともあります。

しかし、事故直後には何の問題もなくても、時間が経つにつれてだんだんと意識障害が起ここることもあるので注意が必要です。頭を打った後などは、手足の麻痺やしびれなど以下の症状に気をつけましょう。

  • 意識がもうろうとする
  • 意識がなくなる
  • 吐き気や嘔吐
  • 手足の麻痺(運動麻痺)
  • 記憶力の障害
  • 頭痛
  • 感覚障害
  • けいれん
  • 脳ヘルニア など

脳ヘルニアとは

脳が圧迫されて頭蓋骨に入りきることができなくなり、飛び出してしまう脳ヘルニアという状態になることがあります。脳の下の部分は特に隙間が多いため、脳ヘルニアによって飛び出した脳が脳幹(生命維持の中枢部分)に飛び出してしまうことがあり、最悪の場合死に至ることもあります。

脳挫傷の後遺症「高次機能障害」が残ることもある?

脳挫傷の後遺症の中には、「高次脳機能障害」という後遺症が残る場合があります。高次脳機能とは、目・耳・口・皮膚から受けた刺激が脳に送られ、脳がそれを言語化したり学習したりして、さらにそれらの蓄積された知識や経験から判断を下したりする脳機能のことです。

交通事故などで脳挫傷が起こると、これら高次脳機能に障害が出て、記憶や集中力・理解力や言語の障害・行動異常などが生じることがあります。主な症状としては、以下のようなことが考えられます。

記憶障害

  • 日付や自分のいる場所がわからない
  • ものの置き場を忘れたり、新しい出来事が覚えられない
  • 自分のしたことを忘れる
  • 作業中に声をかけられると、していたことを忘れる
  • 人の名前や作業の手順が覚えられない

注意障害

  • 気が散りやすい
  • 長時間、一つのことに集中できない
  • 一度に二つ以上のことをすると混乱する
  • 言われていることに興味を示さない
  • 片側にあるものだけを見落とす

遂行機能障害

  • 自分で計画を立てられない
  • 物事の優先順位をつけられない
  • 行き当たりばったりの行動をする
  • 仕事が決まったとおりに仕上がらない
  • 効率よく仕事ができない

社会的行動障害

  • すぐに怒ったり笑ったりと、感情のコントロールができない
  • 食欲や購買欲などの欲求が抑えられない
  • じっとしていられない

自己認識の低下

  • 自分が障害を持っていてもわからない
  • うまくいかないことを相手のせいにする
  • 必要なリハビリや治療を否定する

失行症

  • 道具がうまく使えないなど、日常の動作がぎこちなくなる
  • 普段している動作であっても、指示されるとできなくなる

失認症

  • 物の色や形、触っているものがわからない
  • 人の顔が判別できない

失語症

  • 言葉を聞いても理解できなくなる
  • 意図した言葉をうまく話せなくなる
  • 音読や読解など、読むことができなくなる
  • 意図した文字が書けなかったり間違えたりしてしまう

脳挫傷の薬物療法、手術療法などの目的は?

脳挫傷を治療する場合、脳の損傷を受けた部位に対してアプローチする必要があります。

脳の出血や腫れの治療

時間経過とともに脳に出血や腫れが生じることも考えられますので、脳の浮腫(むくみ)を取る薬を使うことがあります。

呼吸、循環機能への治療

呼吸や循環機能が不安定になることもありますので、酸素を供給したり、チューブを挿し入れて呼吸を管理したり、輸液などを行うこともあります。

手術療法

損傷を受けた部位を手術によって切除したり、脳の圧力をコントロールするために頭蓋骨を開く外減圧術や、大きくなってしまった脳の一部を切除して体積を減らす内減圧術などの脳圧力をコントロールするための手術が必要になることもあります。実際に選択する治療法は、意識の状態や損傷部位などを総合的に判断して決定します。

脳挫傷のリハビリについて

脳挫傷は損傷した部位や範囲などによってどのような症状が現れるか大きく異なります。そのため、リハビリは現れた症状に合わせて行われます。

四肢麻痺に対するリハビリ
関節可動域訓練、筋力強化訓練、歩行訓練
言語障害に対するリハビリ

発生訓練
嚥下障害に対するリハビリ
嚥下訓練

また、脳挫傷後に目立った神経的な症状はなくとも、行動や思考が著しく変化する高次脳機能障害を引き起こすこともあります。高次脳機能障害に対しては、生活訓練や職業訓練などを行いながら社会復帰を目指していくこととなります。

おわりに:脳挫傷は要注意!後遺症はさまざまな症状があり日常生活に影響します

脳挫傷は、脳の組織そのものがダメージを受け、その部位が死滅してしまう疾患です。死滅した脳の部位は回復することができないため、死滅した部位に応じた後遺症が残る可能性があります。脳挫傷が起こると、これらの高次脳機能に後遺症が残ってしまう場合もありますので、頭を打った後などは医師に相談すると安心です。

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