脳出血の予後はあまりよくないって本当?

2019/2/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

血管の異常や高血圧、外傷などが原因で脳内の血管が破れてしまい、脳のなかで出血して血の塊ができることで、さまざまな症状を起こす病気を「脳出血」といいます。

この記事では、脳出血の治療と予後について、代表的な治療法と予後、また少しでも脳出血の予後を良くするためにできることについて解説していきます。

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脳出血の治療法は?

医学的には「急性期」と呼ばれる、脳出血を起こして間もない時期の治療では、脳出血による血の塊・血腫が大きくなるのを防ぐため、まずは投薬治療が行われます。具体的には、収縮期血圧が140mmHg未満になることを目指して、点滴で降圧剤を投与したり、脳のむくみを予防・改善するための薬を投与したりして治療していきます

ただし、脳出血による出血の量が多く、脳内の血腫が大きくなって危険な状態であると判断される場合には、外科手術による治療が必要になります。脳出血治療のための外科手術では、開頭して脳内に溜まっている血液や血腫を取り除いてから、出血源である血管を止血する手法が一般的です。

脳出血の治療後、どのくらい回復する?

投薬など内科的な治療、または外科手術によって脳出血を治療しても、出血によって損傷した脳が発症前の状態に戻る可能性はありません。実際に、脳出血を起こして適切な治療を受けて生還した人のおよそ半数の人は、要介助、または寝たきりになるといわれています。脳出血は、発症すると元の状態まで回復するケースの少ない、予後の良くない病気なのです。

脳出血からの回復後に残る後遺症は、出血を起こした場所・量によっても変わってきますが、代表的な後遺症としては以下が挙げられます。

半身麻痺、また感覚障害
大脳のなかにある被殻(ひかく)と呼ばれる部分に出血、または出血に伴う圧迫が起こると、右脳で起こった場合には左半身が、左脳で起こった場合には右半身に後遺症がのこります。
被殻出血による後遺症が起こると、左右どちらかの半身に麻痺、しびれや温度や質感を感じられなくなるなどの感覚障害が起こるケースが多くなります。
言語障害
大脳皮質の下、皮質下(ひしつか)と呼ばれる場所で脳出血が発生すると、特に言語障害の後遺症が生じやすくなります。
言語障害が残ると、周囲が話す言葉や文字が理解できなくなり、自分の意思や気持ちを言語や文字にすることが困難になります
四肢の麻痺、または意識障害
多くの神経細胞が集まる小脳、また生命活動の維持を担う橋(きょう)という部分に脳出血が発生すると、命にかかわるような重篤な状態に陥りやすくなります
このため治療によって回復できたとしても、四肢の麻痺や意識障害など、その後の日常生活に大きく影響する重大な後遺症がのこる可能性も高くなるといわれます。

また脳出血の後遺症として、脳の血管が詰まることで起こる脳梗塞と同様の高次脳機能障害、運動障害、言語障害、感覚障害がのこる場合もあります。

脳出血の予後を少しでもよくするには?

いま残っている機能を開発・強化し、脳や体の機能を少しでも回復するためのリハビリに積極的に取り組むことが、脳出血の予後を良くするための重要なポイントになります。

残念ながら、脳出血で損傷した脳細胞が発症前の状態にまで回復することはありません。しかし、人間の脳は壊れた細胞・回路を迂回して、別ルートで同様の動作・思考ができるように進化する可能性を持っています。

予後を少しでも良くするために、脳出血の発症後はその人の後遺症にあわせた肉体的・精神的リハビリをきちんと受けましょう。

おわりに:脳出血の予後を少しでも良くするには、リハビリの実施が重要

脳出血を発症すると、その約半数には要介助、または寝たきりになるほどの後遺症が残ると言われています。適切な治療を受けても、脳出血で破壊された脳細胞が元に戻ることはないため、脳出血は予後の悪い病気といわれています。

脳出血の予後を少しでも良くするには、いかにその人の後遺症にあった肉体的・精神的リハビリを行えるかが重要になります。つらいこともあるかもしれませんが、できる範囲から少しずつ体を動かしていきましょう。

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