血栓は運動で溶かせる!? ウォーキングでも効果アリ?

2019/1/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

血管のなかで血液が固まり、血管をつまらせてしまう血栓。できてしまった血栓を、私たちがもともと持っている機能を活かして溶かし、治療する方法として運動が挙げられます。今回は、運動によって血栓が溶けるメカニズムと効果的な運動方法について解説していきます。

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血栓は運動でも溶かせるって本当?

私たちの体内では、できてしまった血栓を速やかに溶かし、血管の詰まりを解消する作用のある「t-PA」という物質が分泌されています。

近年、適度な運動を行うことでt-PAが働きやすい環境を作り、血栓を溶かしやすく・できにくくする体づくりができることがわかってきました。薬の服用ではなく、「運動で血栓が溶かせる」といわれているのは、このためです。

30分のウォーキングで血栓が溶ける!?

t-PAを活性化させ、血栓を溶かしやすい体を作るには、激しい運動よりも1日30分程度の散歩やウォーキングなど、緩やかな有酸素運動が有効的だと考えられています。ある実験によると、普段ほとんど運動をしない人が、自分が無理なくできる程度の軽い運動を3週間続けて行ったところ、血栓を溶かす力が1.5~4.2倍にアップしたそうです。

一方で、限界まで負荷をかけて自分を追い込み、15分間ハイスピードでエアロバイクを漕いだ人の血栓を溶かす力は、一時的に運動前の21倍にまで高くなったといいます。しかし、このような高い負荷を伴う激しい運動で血栓を溶かす力が上がるのは、体内にもともとあったt-PAを放出できる間の、ほんの一時的なものです。

t-PAが活性化しやすい体を作り、長期的に見て血栓を溶かす力を強くしたいなら、ウォーキングなどのゆったりした有酸素運動を継続的に行うのが良いでしょう。

週2~3回の運動には、血栓症の予防効果が

血栓を溶かせる体を作るには、軽い発汗や心拍上昇を伴う運動を1日30分以上、継続的に行うと効果的であるとされます。
ただ、普段あまり運動をしない人にとっては、健康のために1日30分の運動を毎日続けること自体が、心理的に負担になってしまう可能性もあります。

しかし、オックスフォード大学のミランダ・アームストロング氏の研究によると、週に2~3回・1日30分の運動でも、継続すれば血栓症の予防効果を得られると報告されています。

週2~3回の適度な運動を続けている女性は、ほとんど運動をしない女性に比べて、心筋梗塞や脳卒中など、血栓で起こる疾患の発症リスクが低いことが分かっているのです。

運動するのが面倒だという人は、まずは週2~3回30分ずつの散歩から始めて、楽しめるようになってきたら、運動の回数や時間を増やすことを考えてみましょう。

おわりに:1日30分程度の適度な運動を続ければ、血栓を溶かせる体になれる

人間の体内では、できてしまった血栓を溶かすためのt-PAという物質が分泌されています。近年、t-PAは1日30分程度、少し心拍数が上がって汗ばむ程度の運動を継続的に行うことで活性化でき、体が血栓を溶かす力を上げられることがわかってきました。血栓や、血栓によって発症する心筋梗塞や脳梗塞を予防・改善したいなら、まずは1カ月間、散歩やウォーキングなどのゆるやかな有酸素運動を続けてみましょう。

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