薬の飲み過ぎが原因で起こる頭痛、薬物乱用頭痛とは

2023/4/12

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

定期的に頭痛に悩まされるため、頭痛薬を常用しているという人は少なくないと思います。しかし、頭痛が薬の飲みすぎで起こる可能性があることをご存知でしょうか。今回は、薬の飲みすぎで起こる頭痛「薬物乱用頭痛」について解説します。

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薬の飲み過ぎで起こる「薬物乱用頭痛」とは

薬物乱用頭痛とは、頭痛薬や解熱鎮痛剤の主成分である以下のような薬を常用することで起こる頭痛症状のことです。

  • アセトアミノフェン
  • 非ステロイド系消炎鎮痛剤
  • トリプタン
  • 複合鎮痛薬
  • エルゴタミン製剤 など

上記のような成分は、頭痛が起きたときの症状緩和に役立ちますが、日ごろから頭痛に悩まされる人が痛みを予防するために日常的に服用し続けると、薬物乱用頭痛の原因となる可能性があります。頭痛薬は本来、頭痛症状が起こってから痛みを緩和する目的で服用するものです。しかし、頻繁に頭痛発作に見舞われる人の中には、大切な仕事やプライベートの予定の前に頭痛発作を予防する目的で服用するのがくせになってしまう人もいるでしょう。

痛みが起きていないのに頭痛薬を服用する習慣が身についてしまうと、薬への耐性がついて薬の持続時間が短くなり、薬への依存度が高まって服用量が増えていきます。すると、次第に頭痛薬が頭痛を誘発してしまうようになり、薬物乱用頭痛を発症することがあります。

薬の飲み過ぎで頭痛が起こる原因は?

頭痛薬の乱用に陥る原因としては、以下のような理由・きっかけが挙げられます。

  • つらい頭痛を何度も経験していて、頭痛への不安や恐怖に駆られるようになる
  • 頭痛の発作がときどき起こるが、仕事を休むわけにはいかず薬を飲んでいる
  • 仕事や日常生活をこなすために頭痛薬を飲んでいると、どうしても服用日数が1カ月に10日を超えてしまう
  • 頭痛のたびに病院にかかるのが難しいため、基本的に市販の頭痛薬を使っている

上記のような理由から、本人の自己判断で市販の頭痛薬を常用するようになると、脳や中枢神経で痛みを感知するセンサーが敏感になり、少しの刺激で頭痛を発しやすくなります。さらに、頭痛薬を常用する前には感じなかった痛みの質や出方の頭痛も現れるようになり、頭痛の起こり方・種類が複雑化してくるといわれています。頭痛薬を飲む量・頻度が増えてくると、結果として起こる頭痛の回数や痛みのパターンが増え、症状が悪化して薬物乱用頭痛になってしまうのです。

頭痛の原因が薬の飲み過ぎかどうかの目安は?

薬物乱用頭痛を起こすほど、多量・頻回に頭痛薬を飲んでいるかの判断は、以下の基準に当てはまるかどうかが目安となります。

  • 以前から頭痛持ちで、頭痛が現れる頻度は1カ月に15日以上である
  • 1種類、または複数の頭痛薬を3カ月以上、定期的に常用している
  • 1カ月に10日以上、エルゴタミンが主成分の頭痛薬を摂取している
  • 3カ月以上にわたり、1カ月に10日以上トリプタンが主成分の頭痛薬を摂取している
  • 3カ月以上にわたり、1カ月に15日以上、特定の一種類の鎮痛薬を摂取している
  • 3カ月以上にわたり、1カ月に10日以上オピオイドが主成分の頭痛薬を摂取している
  • 3カ月以上にわたり、1カ月に10日以上、特定の一種類の複合鎮痛薬を摂取している
  • 脳や神経など、他に頻回の頭痛を引き起こす様な症状・診断がない

確定の診断は医師から受ける必要がありますが、上記項目に複数当てはまる場合は、薬物乱用頭痛を発症している可能性があります。

薬の飲み過ぎが頭痛の原因だった場合、どうやって治療を進める?

薬物乱用頭痛であると診断されたら、医師から病名・症状の説明を聞いたあと、治療への意識付けを行います。その後、医師の指示に従って原因となっている薬の服用を中止します。また、頭痛発作が起きたときに備えて、医師から原因となったものとは別の成分の頭痛薬や、もともとの頭痛症状を予防するための予防的な薬の処方を受けます。

薬物乱用頭痛の治療中に、処方される痛み止めや予防薬には以下のようなものがあります。

薬物乱用頭痛の治療に使用される頭痛薬の例

トリプタン系の頭痛薬が原因である場合
5種類あるトリプタンのうち、原因となった種類以外のトリプタンを使った頭痛薬
複数の成分が配合された頭痛薬が原因の場合
原因薬に含まれていない、単一の有効成分が使われている頭痛薬

薬物乱用頭痛の治療に使用される予防的な頭痛薬の例

もともと片頭痛があった人には
抗てんかん薬、カルシウム拮抗薬  など
もともと緊張型頭痛があった人には
抗うつ薬  など

なお、治療により頭痛薬の使用頻度が1カ月に10日以下になれば、薬物乱用頭痛の治療は完了とされます。ただし、もともとの頭痛を放っておくと薬物乱用頭痛を再発するリスクもあるため、その後も頭痛をコントロールできるよう治療を継続するのが一般的です。

おわりに:薬物乱用頭痛は誰にでも起こり得る症状。頭痛薬を頻繁に服用している方は気をつけよう

薬物乱用頭痛は誰にでも起こる可能性がある頭痛です。日常的に頭痛に悩まされる人の場合、1カ月に10日以上、市販の頭痛薬や鎮痛剤などを服用しているときに診断されます。薬物乱用頭痛を治療するには、原因となる薬の使用を中止する必要があります。気になる人は、もともとの頭痛もあると思いますので、専門の医師のもとで適切な治療を受けましょう。

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