冬の血圧上昇のリスクと予防対策のポイント

2022/1/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

冬は血圧が上昇しやすく、高血圧になりやすいです。冬の血圧上昇は、ヒートショックなどの危険な状態を引き起こす可能性があるため、1年のなかでとくに注意が必要といわれています。今回は、冬に血圧が上昇しやすい原因と、冬の血圧上昇のリスク、血圧上昇や高血圧の予防対策について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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冬に血圧が上昇しやすい原因

冬に血圧が上昇しやすいおもな原因として、以下の3つが挙げられます。

寒暖差や温度差による刺激

低い気温や冷たい空気、冷たい水など、急激な寒暖差や温度差に皮膚がさらされると、交感神経が刺激されます。交感神経とは自律神経のひとつです。交感神経が優位になると血管が収縮して血圧が上昇し、副交感神経が優位になると血管が拡張して血圧が低下します。交感神経と副交感神経は、このように相互にバランスをとりながら血圧を調節しています。

低い気温、冷たい空気、冷たい水などの寒暖差や温度差で急激に交感神経が刺激されると、交感神経が著しく優位な状態になり、急激な血管収縮による血圧上昇が起こることがあります。たとえば、冷たい水に手首までつけるだけでも、血圧が上昇することがわかっています。

塩分や脂肪分の過剰摂取と運動不足

寒い冬は家にこもりがちになり、脂肪分、糖分、塩分の多い食事を摂る機会も増えます。摂取カロリー量も増えやすく運動不足にもなりやすいので、体重も増加しやすいです。暴飲暴食や運動不足による体重の増加、肥満、塩分の過剰摂取は、血圧上昇の原因になります。

モーニングサージが起こりやすい

夜に血圧が下がり、その反動で朝に血圧が上昇する現象を「モーニングサージ」と言います。冬の朝は、暖かい場所から寒い場所に移動するときにモーニングサージが起こりやすいです。朝一番のトイレやお風呂のとき、新聞を取りに行くとき、ゴミ出しのときなどは注意する必要があります。また、モーニングサージは晩酌が習慣化している人に起こりやすいともいわれているので、晩酌をしている人も注意が必要です。

冬の血圧上昇を防ぐため注意が必要な場所や状況

冬の血圧上昇リスクが高くなりやすいのは、「寒暖差の大きい場所や冷たいものに触れやすい場所」です。冬の急激な血圧上昇は、ヒートショックのような命に関わる状態を引き起こす原因にもなります。以下で紹介する場所や状況では注意しましょう。また、多量のアルコールを摂取した後に冷たい空気にさらされた状態で歩くと、アルコールと気温の相乗効果で血圧上昇リスクも高まります。飲酒後の移動にも十分に注意してください。

  • 暖かい部屋から、寒い廊下や玄関などに移動するとき
  • 温かい室内から、寒い屋外に出たとき
  • 暖房のない風呂場や脱衣所、トイレに移動したとき
  • 寒い脱衣所や浴室で、いきなり熱いお風呂に入ったり、熱いお湯を浴びたりしたとき
  • 夜間や早朝に、トイレなどに移動するとき
  • 暖房が入ってない部屋で起床するとき など

冬の血圧上昇の予防対策

急激な血圧上昇を予防するには、「温度差、寒暖差への対策」と「高血圧の予防、改善対策」をとることをおすすめします。

温度差、寒暖差への対策

冬特有の血圧上昇を予防するには、まずは急激な温度変化を避けることが大切です。以下の対策で、冬に起こりやすい「急激な寒暖差」にさらされる機会を減らしましょう。

  • 居間や寝室だけでなく、トイレや脱衣所、浴室も暖める
  • 入浴時はお湯の温度を40℃以下に設定し、熱いお湯の使用を避ける
  • 急に動くと血圧が上昇しやすいので、起床時はゆっくりを起き上がり、急な移動を避ける
  • 屋外に出るときは防寒対策する

高血圧の予防、改善対策

高血圧や血圧が高めの人は、急激な寒暖差による血圧上昇も起こりやすく、ヒートショックのリスクも高まります。高血圧の予防や改善のためには、食生活や生活習慣、運動習慣の見直しが必要です。

食生活でまずできることは「減塩」です。調味料を工夫するなどして、減塩に励みましょう。また、油っぽいものや甘いものの食べすぎ、暴飲暴食なども高血圧の原因です。摂取カロリー量を管理し、適正体重を守ることを心がけましょう。タバコと睡眠不足も高血圧のリスクを高めますので、喫煙習慣がある人は禁煙し、睡眠時間を6時間以上確保し、睡眠の質を高める対策をとるようにしてください。

高血圧の予防、改善対策のポイント
  • 1日あたり塩分摂取量の目安は、男性が7.5g、女性が6.5g未満
  • お酒を飲むとカロリー摂取量や塩分摂取量も多くなるので、お酒を飲む日や時間を少なくする
  • 食事のカロリー量と体重をきちんと計測、管理する
  • 1日30分程度の有酸素運動、軽い筋力トレーニングを中心に、こまめに運動する
  • 寒暖差を避けるため、屋外での運動は暖かい時間帯に行う
  • 上着やネックウォーマーなどで防寒対策をする

関連記事:高血圧の人は「冬の寒さ」に注意 ― 危険なトラブルを防ぐためにできる対策とは

高血圧は深刻な病気の原因にも。早めの対策が大切

冬の血圧上昇によるトラブルを防ぐには、高血圧を予防、改善する対策も大切です。血圧が高めの状態や高血圧の状態を放置すると、以下のような危険な病気のリスクが高まります。高血圧は、ほかの生活習慣病のリスクにも関係してきますので、必要に応じて医師と相談しながら早めに対策をとりましょう。

うっ血性心不全
心臓からうまく血液を送りだせず、血液循環が停滞することが原因で起こる心臓の病気
心筋梗塞、狭心症
高い圧力がかかり続けることで血管の壁がダメージを受け、動脈硬化が進むことで起こる心臓の病気。心臓の血管が詰まり、血流が滞ることで発症する
脳卒中(脳出血、脳梗塞など)
心筋梗塞や狭心症と同様、動脈硬化が原因の病気。動脈硬化から血栓が発生し、脳の血管を詰まらせることで発症
高血圧性腎障害
高血圧で腎臓の血管に負荷がかかり、動脈効果が起こる病気。腎機能が著しく低下するため、進行すると人工透析が必要になる
眼底網膜病変
網膜の毛細血管や、眼底に異常や病変が現れる病気。見え方の変化で発覚する場合が多く、眼底網膜病変の有無で脳出血や脳梗塞のリスクを判断できる場合もある

おわりに:冬は血圧上昇は寒暖差対策と継続的な高血圧対策で予防を目指そう

冬は屋内と屋外の気温差が大きくなり、運動不足や暴飲暴食に陥りやすく、血圧が上昇しやすいです。冬の血圧上昇は、ヒートショックなど深刻なトラブルの原因になりますし、高血圧や血圧が高めの状態を放置することも深刻な病気の原因になります。寒暖差対策を万全にし、減塩やカロリー制限、禁煙、睡眠改善、運動の習慣化などの生活習慣の見直しを行いましょう。ただし、高血圧の予防対策は冬だけでなく長期間継続することが大切です。無理なく続けられるペースで取り組むようにしてください。

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