秋も熱中症、脱水のリスクがある!?どんな対策が必要なの?

2020/9/19

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

猛暑酷暑が続く真夏に熱中症や脱水のリスクが高まることはわかると思いますが、涼しくなる秋も熱中症や脱水に注意が必要であり、秋特有の注意点があることをご存知でしょうか。
今回は、秋の熱中症や脱水の要因や症状の特徴と予防方法について解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

秋にも熱中症予防対策が必要になる理由とは?

一般的に脱水・熱中症と聞くと7~8月の真夏のイメージが強いでしょうが、9月以降も発症のリスクがあります。これは、近年の気候変動による気温上昇の影響で、秋になっても暑さが続くことが原因になりますが、秋特有の気候が原因になることもあります。

秋の熱中症の原因
  • 水分補給がおろそかになりやすい
  • 1日を通しての気温差や日毎の気候に違いが出やすく、体がその変化についていけなくなりやすい
  • 季節の変わり目のため自律神経の不調が起こりやすい
  • 秋から冬に流行しやすい感染症による体調不良が起こりやすい
  • 感染症による下痢や嘔吐で脱水になりやすい

環境省の夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドラインにおいては「28℃以上では、すべての生活活動」「25℃〜28℃では、中等度以上の生活活動」「21℃〜25℃では、強い生活活動」で熱中症のリスクが高くなるとされていますが、水分や電解質を適切に補給できていなければ21℃〜25℃程度の気温であっても熱中症になる可能性があります

秋になって涼しくなると、汗をかいたことやのどの渇きを自覚しにくくなり、こまめな水分補給への意識が薄れやすく、脱水になりやすいです。また、熱中症は、暑さに慣れている状態のときより、急に暑くなった日に起こりやすいといわれています。

例年よりも感染症対策には力を入れていると思いますが、現在は環境の変化によるストレスで体調不良を訴える人も増えてきています。涼しい季節は、脱水がすっくりと進んでいきやすいので熱中症や脱水の症状にも気づきにくいです。
このように、秋の熱中症や脱水には「暑さ以外のリスク要因」も潜んでいます。夏と同様に「こまめな水分補給」を心がけましょう。

早めの水分補給のために、熱中症・脱水のサインをチェックしておこう!

熱中症や脱水を予防するには、なってしまうまえの「軽い状態」のうちに水分を補給することが大切です。
熱中症や脱水になると、以下のような症状が現れます。

熱中症、脱水症の症状
  • 37℃以上の発熱
  • 脈拍の増加(1分間に120回以上になることも)
  • 皮膚にハリがなく、少ししわしわしてくる
  • 爪を押したとき、白色からピンク色に戻るまでに3秒以上かかる
  • 3%以上の体重減少が見られる
  • 意識レベルが低下して、呼びかけへの反応が弱い
  • 全身、部分的にけいれんが見られる

上記の症状に気づいたときは、早めに水分と電解質を補給しましょう。できれば、すばやく体に吸収される経口補水液やスポーツドリンクなどのイオン飲料を補給することをおすすめします。

また、以下の項目に当てはまる人は、熱中症・脱水リスクがとくに高いといわれています。自分自身が気をつけることはもちろんですが、周囲の人も体調の変化や水分補給のタイミングに気をつけてあげるようにしてください。

熱中症、脱水になりやすい人の特徴
  • 子供(顔が地表面から近く、身体機能の発達が未成熟なため)
  • 高齢者(身体機能が低下し、温度や喉の渇きを感じにくいため
  • 慢性的な肥満、運動不足、睡眠不足がある人
  • 風邪や二日酔いなど、体調不良がある人

ただし、水分補給で他の状態が回復したとしても、発熱が4日以上続くときは感染症の可能性があります。他の感染症症状(咳やくしゃみなど)がないかを確認したうえで、どのような対応をとったほうが良いか病院に確認しましょう。

秋の熱中症や脱水は少しずつ進行していくことが多いために、一般的に「かくれ脱水」と呼ばれているような「はっきりしない症状」しか出ないことがあります。いつもと違う変化がないか、意識して観察するようにしてください。

▼ 関連記事:かくれ脱水のチェックリストで脱水・熱中症を予防しよう!

水分補給をするときに気をつけることは?

季節に限らず、熱中症や脱水の予防には「適切な水分補給と体調管理」が大切です。水分補給がおろそかになりやすい秋は、以下のことにとくに注意しましょう。

こまめな水分補給

運動や労働をせず、1日を普通に過ごしていても体内の水分は失われていきます。失った水分は補給しなければいけませんが、水分を一度に吸収できる量は限られていますので、「飲みだめ」はできません。水分は、一度にたくさんの量を摂るのではなく、「少しずつの量」を「こまめに」補給するようにしましょう。

水分補給の量とペースの目安
1回の水分量…コップ1杯程度
1日の水分摂取回数…食事とは別に1日8回
水分補給のペース…1時間に1回(喉が渇いていなくても摂る)

睡眠中や仕事中に「トイレの回数が増えるから」という理由で水分摂取を控えている人は、とくに注意してください。トイレで夜に目が覚めてしまう人は、寝る1時間前にコップ1杯の水分を摂り、寝る直前にトイレに行くなどの工夫をしましょう。

水分が失われやすい行動をとる前後に水分を補給する

上記で紹介した水分補給の目安は、普通に過ごしているときの目安です。
以下のように「水分が失われやすい」行動をとる前後は、上記とは別に水分を補給するようにしましょう。

  • 運動するとき
  • 肉体労働をするとき
  • 高温多湿な環境で過ごすとき
  • 入浴するとき
  • お酒を飲むとき
  • 汗をかいたとき
  • 下痢や嘔吐の症状があるとき

下痢や嘔吐があるときは、ノロウイルスやインフルエンザ、食中毒など、何らかの感染症の可能性もあります。すでに脱水の症状が出ていて自分で水分が摂れないとき、便や嘔吐物に血が混じっているとき、4〜5日以上下痢や嘔吐が続くときは、どのような対処をすればいいか病院に相談しましょう。

水分補給にカフェイン、アルコール飲料を使わない

カフェイン飲料アルコール飲料の摂取では効率よく水分を補給できず、脱水症状を誘発することがあります。
水分補給には、真水や麦茶などのノンカフェインのお茶を飲むようにしましょう。

持病などで食事制限がされておらず、健康な状態であれば経口補水液やスポーツドリンクで水分補給をしても問題ないとされていますが、飲みすぎると塩分や糖分の摂取量が多くなる可能性があるので注意しましょう。

規則正しい生活をし、心身を整える

睡眠不足や疲労の蓄積、ストレス、食欲不振による栄養不足は、熱中症や脱水のリスクを高めます。
食事は1日3回、できるだけきまった時間に適量を摂り、少なくとも1日6時間以上の睡眠時間を確保し、睡眠の質を高める環境を整えましょう。

▼ 関連記事:熱中症になりやすい体質や環境の条件とは?効率のよい室温管理の方法って?

運転中や就寝中は熱中症や脱水になりやすい!?

熱中症を引き起こす要因は、以下の3つです。

環境
気温、湿度、風の有無、日差しの強弱 など
本人の体質・体調
年齢や持病の有無、肥満、栄養状態 など
行動
慣れない運動や長時間の屋外作業、水分を摂らない など

炎天下での屋外作業や運動などは熱中症や脱水になりやすいことが想像しやすいですが、無風状態で熱がこもりやすかったり湿度が高い状態であれば、室内でも熱中症になる可能性はあります。

就寝中は水分をとれませんし、運転中の車内は熱がこもりやすく水分補給がおろそかになりやすいです。繰り返しになりますが、高齢者や子供は熱中症や脱水のリスクが高いです。寝室の温度・湿度管理を徹底し、体調不良があるときにお出かけしない・させないようにするなど周囲の人がとくに気をつけてあげるようにしてください。

おわりに: 1日8回以上の水分補給を習慣化して、秋の熱中症・かくれ脱水を予防しよう

気温が下がる日、時間帯が増え、涼しく過ごしやすくなる秋は、水分補給や室温管理がおろそかになりやすいです。近年は残暑が厳しく、9月以降も気温が高くなる日が出てきます。
秋の熱中症や脱水は気づかないうちに進行しやすいので、子供や高齢者はとくに注意が必要です。水分補給や室温管理、体調管理に関しては、周囲の人が本人以上に気をつかってあげるようにしてください。

また、秋が深まると感染症が流行しやすくなります。気になる症状があるとき、どのような対応をとればいいかわからないときは自己判断せず、かかりつけ医や地域の相談窓口などに相談するようにしましょう。

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