ストレス性胃炎の症状の特徴は?病院に行ったほうがいい状態の目安って?

2020/10/17

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

胃痛やみぞおちの痛みは、ストレスが原因で起こる代表的な症状です。ただ、ストレスによる胃のトラブルは、はっきりした症状が出ないこともありますし、どの診療科を受診すればいいか悩むことも多いのではないでしょうか。
今回は「ストレス性胃炎」の原因や症状、治療法や受診する診療科などについてまとめて解説していきます。

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胃がストレスに弱いのはなぜ?

ストレスで胃に炎症や痛みが起こるのは、ストレスによる迷走神経、内臓神経、自律神経への刺激が、胃の運動や胃酸分泌に影響を及ぼすためと考えられています。

迷走神経
  • 第10脳神経であり、感覚神経、運動神経、副交感神経が混合した神経
  • 頸部から耳、胸、腹部まで広く分布している神経で、胃酸の分泌や胃の運動にもかかわっている。
内臓神経
  • 腹部の内臓を支配している神経
  • 交感神経に属する神経
  • 胃腸の収縮運動、腸管の血管の収縮、内臓の感覚を司っている
自律神経
  • 交感神経、副交感神経からなる神経
  • 交感神経は緊張状態、副交感神経はリラックス状態でそれぞれ優位になる
  • 交感神経と副交感神経がうまく切り替わることで体内環境を整え、生命活動を維持している
  • 副交感神経が優位になると、胃の運動や胃酸分泌が促進される
  • 交感神経が優位になると、胃の運動や胃酸分泌が抑制される

ストレスや疲労、睡眠不足などが重なると、迷走神経が刺激され胃酸やタンパク質分解酵素であるペプシンの分泌量が増し、胃が緊張した状態になります。また、ストレスは交感神経を優位にするので、内臓神経も興奮状態になります。すると胃の血流が低下して胃壁を修復する力が弱くなり、胃壁を守る胃粘膜の分泌量も少なくなります。

交感神経が優位になると胃酸の分泌や胃の運動は抑制されますが、過度のストレスや長期間のストレスによる交感神経の興奮は常に続くものではありません。自律神経のバランスをとろうとした副交感神経が、交感神経の興奮が弱まった瞬間に一時的に過剰に優位になることになり、胃酸の分泌を強く促します。

この状態が長く続いたり、何度も繰り返されたりすることで、防御力や修復力が低下した胃壁が胃酸の刺激に耐えられなくなると、胃壁は炎症や損傷を起こり、胃の痛みを引き起こすことになるのです。

また、実際には胃粘膜に炎症が起こっていないのに胃痛などの症状が起こる「機能性ディスペプシア」は、ストレスが胃腸の機能に異常を引き起こすことが原因と考えられています。

関連記事:原因がはっきりしない胃の病気、「機能性ディスペプシア」とは

ストレス性胃炎のセルフチェック

ストレスによる胃炎には、急性のもの(神経性胃炎)と慢性のものがあります。どちらもおもな症状は胃の痛み(みぞおちの痛み)ですが、痛みとは違った症状が現れることもあります。
以下に、ストレス性胃炎の代表的な症状をリストアップしましたので、当てはまるものがある場合は早めに医師に相談しましょう。

  • 胃の痛み
  • みぞおちの痛みや不快感
  • 胸やけ
  • 腹部膨満感
  • 食欲不振
  • 疲労感
  • 下痢や便秘
  • 吐き気や嘔吐
  • 下血(黒色便)や吐血
  • 肩こり
  • 頭痛
  • めまい
  • 不眠

こんな症状が出たらすぐに病院を受診!何科を受診すればいい?

目で見てわかる下血や吐血がみられるときは、かなり多くの量を出血している可能性があり、他の深刻な病気が原因の場合も考えられます。すぐに病院を受診しましょう。
また、以下の症状がみられるときも、できるだけ早く病院を受診するようにしてください。

  • 起きていられない、じっとしていられない、仕事や日常生活の動作ができないほどの激痛がある
  • 1カ月以上症状の改善がみられない
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない
  • 吐き気、嘔吐がある

胃の症状に気づいたときは、まず消化器内科や内科を受診し、胃腸の病気がないか調べてもらうことをおすすめします。かかりつけがあればその病院を受診してもかまいませんし、通院しやすい病院を選んでもいいでしょう。ストレス性の胃炎であれば心療内科を紹介されることもありますし、必要に応じて他の診療科を紹介されることもあります。

ストレス性胃炎の治療方法

ストレス性胃炎は、薬物療法と生活習慣の改善を併用して治療が進められます。

ストレス性胃腸炎の薬物療法

身体症状を改善するための消化管運動機能改善薬や胃酸分泌抑制薬などが処方されます。また、根本原因であるストレスや心身の緊張を緩和するために抗不安薬、漢方薬などが処方されることもあります。

ストレス性胃炎のための生活習慣改善

医師や医療機関によって指導内容は変わりますが、基本的には胃に負担をかけないような食習慣を指導をされ、必要に応じてストレス対策を指導されることもあります。

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ストレス性胃炎は心療内科と精神科、どちらを受診すればいい?

ストレス性胃炎は、ストレスが原因で身体的症状が現れる「ストレス関連疾患」に分類でされます。
同じように「ストレスに関わる病気」を診る診療科に精神科がありますが、心療内科と精神科には以下のような違いがあります。

心療内科
心身症と呼ばれる、精神的な負荷によって引き起こされた「体の症状」を治療する診療科。治療時に根本原因である精神的な負荷や社会的要因に対してもアプローチしていく
精神科
不安、抑うつ、イライラ、幻覚、幻聴、不眠、妄想などの「精神的な症状」を治療する診療科。うつ病、躁うつ病、不安障害、統合失調症などを中心に治療する

体の症状が強く出ているときは心療内科、精神的な症状が強く出ているときは精神科を受診することが基本的な考え方になるので、ストレス性胃炎の症状が出ているときは、心療内科を受診すると考えてよいでしょう。

ただ、最近は両方の診療科を併設している医療機関もありますし、幅広い対応をしている医療機関も増えてきています。

自己判断は難しいと思いますし、悩むことで受診が遅れることもよくありません。上記で説明したように、まずは内科や消化器内科、かかりつけ医院に相談しましょう。また、すでに胃腸の病気がないとわかっている場合は、気になる医療機関に電話やメールで直接相談することをおすすめします。

おわりに:ストレス性胃炎も重症化することがある。胃の症状に気づいたときは、まずは病院に相談を

胃の活動には迷走神経や内臓神経、自律神経が深くかかわっているため、ストレスの影響を受けやすいです。ストレス性胃炎は、根本原因であるストレスが解消されれば回復することも多いので市販薬で対処できることもあります。しかし、長く続く胃の不調やストレス症状があるとき、下血や吐血、激しい痛みがあるときは、重症化しているか他の病気が原因の可能性もありますので、早めに医師に相談しましょう。

ストレス性胃炎をはじめとするストレス性疾患は、はっきりした症状が出ないこともあるため治療が遅くなりやすいです。また、心療内科や精神科に行くことに抵抗を感じることで受診が遅れることもあります。一人で悩みを抱え込む状態が続けば、それだけ回復も遅くなってしまいます。気になる症状があるときは、まずは通院しやすい病院・診療科でかまいませんので、早めに相談するようにしてください。

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