記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/10 記事改定日: 2018/10/23
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
特に女性が悩むことの多い症状のひとつに、「便秘」があります。では、便秘は何が原因で引き起こされるのでしょうか?
高齢者や男性の便秘の原因も併せて、項目別にわけて詳しくご紹介します。便秘を根本から解消するために役立ててください。
便秘の原因はさまざまですが、その一つに食事の問題があります。よくある原因は食物繊維や水分の不足です。ごぼうや芋類、ほうれん草などの葉野菜に多く含まれる食物繊維は便を柔らかくし、排出させやすくする効果がありますが、逆に食物繊維が不足していると便は小さく乾いて硬くなり、腸内で詰まりやすくなります。また、便が腸をスムーズに移動するために水分は欠かせませんが、水分が不足していると腸の内容物が移動できず、便秘を引き起こすようになります。
なお、近年は食の欧米化により肉類中心の食事になりつつありますが、肉類の摂取も便秘の原因です。肉類はたんぱく質なので多くは腸で吸収されるため、便の量が減ります。すると腸の蠕動運動が弱まり、便秘になりやすくなります。また、肉類は悪玉菌を発生させるため、腸内環境を悪化させるとも指摘されています。
ダイエット中は食事の量を減らしますが、すると必要な栄養素が不足し、便秘になることがあります。まず具体例としては、脂肪分の不足が挙げられます。適度な油分は、便の腸内通過を滑らかにし、蠕動運動を促進してくれるものなので、過度に不足すると便が腸に留まりやすくなり、便秘になる恐れがあります。
また、先述の食物繊維不足も、ダイエット中の便秘の原因の一つです。「食物繊維は野菜に含まれている」と思っている方は多いですが、野菜の種類によって食物繊維の含有量には大きな差があります。例えば、レタスやきゅうり、トマトなどにはあまり含まれていませんが、ごぼうや芋類などには豊富に含まれています。
そして食物繊維には、便のかさを増やし蠕動運動を促進する「不溶性食物繊維」と、保水力で便を柔らかくしてくれる「水溶性食物繊維」があり、この2種類をバランスよく摂取することが便秘解消のためには重要です。不溶性食物繊維は豆類やきのこ類、水溶性食物繊維は海藻類や穀物、納豆、ドライフルーツなどに多く含まれています。
脳内にストレスが溜まると身体全体に変化が生じますが、胃腸は特にストレスに敏感で、ストレス反応のひとつとして便秘があります。普段の生活習慣、特に食習慣が乱されると、排便のリズムが崩れることもあります。
また、運動不足も便秘の原因になります。体を動かすと腸が刺激され動きも活発になり、便が排出されやすくなります。日頃から定期的な運動(ウォーキングや水泳)を心がけましょう。
そのほか、便意の我慢が習慣化していると、便意を感じにくくなったり、便が腸内で硬くなったりして、便秘を引き起こす恐れがあります。できるだけ便を我慢せず、したくなったらなるべくすぐにトイレに行くようにしてください。
便秘は特に高齢者に多く見られます。
その原因としては以下のことが挙げられます。
便秘にお悩みの方は女性に多いですが、男性でも便秘になることがあります。
男性の便秘は、食事の偏りやお酒の飲み過ぎ、ストレスが原因であることが多いです。一人暮らしの男性は毎日コンビニ弁当で済ませたりする傾向がありますが、こういった加工食品の過剰摂取や野菜不足の生活は、悪玉菌を増殖させ、便秘の主要因となります。
また、お酒の飲み過ぎは胃腸に負担をかけるため、腸内環境が崩れて便秘になりやすくなるともいわれています。お酒を飲みに行く機会が多い人は、飲み過ぎには特に注意してください。
女性は男性よりも便秘に悩んでいる人が多くいます。
女性は男性よりも腹筋が弱いため便の排出力が低いことや、骨盤が広がっているために大腸が垂れ下がって蠕動運動が不安定になりやすいことが原因として挙げられます。
また、女性は食物繊維や水分が不足しがちになる傾向にあることも便秘を引き起こすきっかけとなります。
さらに、女性には性周期があり、女性ホルモンの働きによって腸の蠕動運動が低下しやすい時期もあります。
子供は、離乳食の開始前後やトイレトレーニング開始時、学童期のはじめ頃に便秘になりやすいとされています。
離乳食開始後の便秘は、母乳やミルク以外の半固形物や固形物を口にすることで便が固まりやすくなり、その排出力が備わっていないことが原因です。水分を多く摂らせる、離乳食の量を減らすなどの対策を行うことで、自然と排出力が備わって便秘も解消することが多いです。
また、トイレトレーニングを開始すると便座に座って排便するという行為に慣れていないため、上手に行うことができず便意を我慢することが便秘のきっかけになると考えられています。
さらに、学童期のはじめ頃は羞恥心などの感情が芽生えることで、学校にいる間は便意を我慢しやすかったり、精神的なストレスによって自律神経が乱れることなどが原因で便秘になりやすいと考えられています。この頃には、毎日決まった時間に排便できるよう徐々に訓練していく必要があります。
ほとんどの便秘は日常生活の問題で引き起こされますが、病気が便秘の原因である場合があります。便秘を引き起こす病気には下記のものがあります。
また、これらの病気のほかにも、薬の服用によって便秘になるケースもあります。鎮痛薬や鉄分サプリ、抗うつ薬、利尿薬、糖尿病治療薬、パーキンソン病治療薬、血圧の薬などがこれに該当します。
便秘と下痢を交互に繰り返している場合は、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。IBSの原因は過度なストレスや感染症、脳の信号の問題など諸説ありますが、一般的な症状には下痢や便秘、腹部の痛みや張り、残便感や便に白っぽい粘液がつくなどがあります。これらの症状が過去3ヵ月間に3回以上みられたり、あるいは症状が6ヵ月以上続いている場合はIBSの疑いがあるので、病院を受診しましょう。
便秘は生活習慣の改善で解消する場合がほとんどですが、中にはそういったセルフケアでも治らない便秘もあります。便秘が長引いている場合は何らかの病気の可能性もありますので、恥ずかしがらずに早めに病院を受診してください。
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