記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
中耳炎は、特に子供にかかることが多い中耳の感染症です。今回の記事では、中耳炎の原因について解説します。
中耳炎のきっかけになることを覚えておき、予防に役立ててください。
中耳感染症(以下、中耳炎)とは、中耳が感染することで炎症を起こし(赤くなって腫れる)、鼓膜の裏に膿が溜まることをいいます。6~15ヶ月の幼児が一番なりやすいとされ、約4人に1人は10歳になるまでに最低でも一度は中耳炎になるといわれています。
ほとんどの中耳炎は、風邪などの感染症がきっかけで中耳に粘液が溜まることで発症します。
これは耳管(中耳から鼻の後ろまである細い管)が腫れたり詰まったりすることで粘液が正常に流れ出なくなり、中耳に感染が広がりやすくなってしまうことが原因です。
咽頭扁桃(喉の奥にある柔らかい組織)の肥大も耳管が塞がる原因となります。
咽頭扁桃が継続的に、あるいは頻繁に耳感染を引き起こすようであれば、切除が検討されるケースもあります。
幼児が中耳炎にかかりやすい理由は、以下のとおりです。
大人は時間が長く、喉や鼻との傾きが強いため、子供に比べて咽頭炎や鼻炎からの炎症が波及しにくくなっています。
このため、子供の頃に中耳炎を繰り返していた人も成長と共に再発がなくなる人がほとんどです。
しかし、大人でも、非常に炎症が強い咽頭炎や鼻炎、副鼻腔炎などがある場合は時間を通して炎症が波及し、中耳炎を発症することがあります。また、飛行機への搭乗やダイビングなどによる気圧の変化が発症の引き金となることも少なくありません。
さらに、大人では過度なストレスが溜まって免疫力が低下し、中耳炎発症の原因になることもあります。
中耳炎は日常生活上の習慣や行動が発症原因になることがあります。
とくに、鼻水を強くすすったり、強くかんだりすると時間を通して鼻水が中耳内に流れ込んで炎症を引き起こすことがあります。風邪を引いた時など鼻水が出ている時には、こまめに優しく鼻水をふき取るように心がけ、耳に負担をかけないようにしましょう。
また、咽頭炎や鼻炎を発症した場合は、適切な治療を早めに行って中耳炎への進行を予防することも大切です。特にストレスや疲れが溜まっている時は、十分な休息・睡眠を確保して免疫力の低下を阻止することも必要です。
多くの場合、中耳炎は進行が早く、そして数日で無くなります。これは急性中耳炎と呼ばれ、症状としては以下のものが挙げられます。
鼓膜が破れ穴が開き膿が耳から流れ出ると、溜まった体液による鼓膜への圧迫がなくなるため、耳の痛みが解消することもあります。
中耳炎は繰り返し再発することが多い病気です。
原因はさまざまですが、子供の場合は耳の構造が未熟なため、中耳炎を発症しやすいため、風邪を引いた後などに喉や鼻の炎症が耳に波及して発症することが多いです。特に、保育園や幼稚園などで集団生活を行っている場合は、中耳炎の原因となる病原体に感染するリスクが高くなりますので、再発を繰り返しやすくなります。
また、大人では耳の構造が成熟しているため子供より発症リスクは低下しますが、中耳炎の治療が不十分で慢性的な炎症が生じている場合や、抗生物質が効きにくい「耐性菌」がある場合に中耳炎を繰り返すことがあります。
中耳炎のおもな原因は感染症です。予防するためには、感染症を防ぐことが重要です。
家族で手洗い、うがいを忘れないようにし、気になる症状がみられたときは早めに医師に相談してください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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