逆流性食道炎の原因はいったい何?治療はどうやって進めていくの?

2017/9/20 記事改定日: 2018/9/21
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

胃がムカムカしたり、胃がパンパンになって喉もとまできているような感覚や痛みを経験したことはありませんか。これらは胸やけともいわれる症状ですが、逆流性食道炎という食道の病気から起こっているかもしれません。
この記事では逆流性食道炎の原因と治療について詳しくまとめています。

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逆流性食道炎とは!?何が原因で発症する?

逆流性食道炎とは、びらんや潰瘍などの粘膜障害がみられるタイプの胃食道逆流症のことです。対して、びらんや潰瘍がみられない胃食道逆流症のことを非びらん性胃食道逆流症と呼びます。下部食道括約筋などが弱まり胃から食道への逆流防止システムが働かなくなったり、胃酸が強くなりすぎることによって食道の粘膜を傷つけてしまうことが逆流性食道炎を含む胃食道逆流症が起こる原因と考えられています。

胸やけや呑酸などの自覚症状は食欲や睡眠習慣、仕事のパフォーマンスに影響することもあり、慢性化すると日常生活に支障をきたす可能性があります。

原因

食事
逆流性食道炎の発症には、生活習慣が深く関わっていると考えられています。特に食習慣の影響は大きく、暴飲暴食や早食い、揚げ物などの油っぽいものをたくさん食べる習慣がある人は胃酸の逆流が起こりやすく、逆流性食道炎になりやすいといわれています。その他、飲酒や喫煙なども胃酸の逆流に大きく関与するという研究結果もあるので注意が必要です。
肥満・姿勢
肥満の人や高齢で腰が曲がった姿勢の人は腹部への圧迫が強くなるので胃酸が逆流しやすくなるといわれています。

ただし、逆流性食道炎の症状は、狭心症治療薬や高血圧治療薬の副作用として現れる場合があります。また、食道裂孔ヘルニア、ピロリ菌の感染などが原因になっている場合もあり、状態によっては専門の治療が必要になることもあるので、まずは病院で検査してみることをおすすめします。

逆流性食道炎の症状の特徴とは!?自覚症状がないって本当?

逆流性食道炎の主症状は、胸やけや胸の痛み、呑酸(げっぷ)であり、その他にも嘔吐、しゃっくり、吐き気、喉の痛み、嚥下障害などです。ただし、逆流性食道炎で食道内にびらんや潰瘍などの炎症が起こっていても自覚症状がみられないこともあります。

また、胸やけや呑酸などの症状は非常に不快であり、食事が楽しめなくなったり、夜目を覚ましてしまったり、元気が出ないなどのQOL(quality of life:生活の質)の低下に直結する可能性もあるのです。もちろん、逆流性食道炎の人の全てにQOLの低下が起こるわけではありませんが、自覚症状が重い人に関しては精神的な問題が起こっている症例も報告されています。

逆流性食道炎の治療法は?病院ではどうやって対処するの?

逆流性食道炎の治療は、生活習慣の改善と薬物療法が中心となります。

生活習慣の改善

脂肪分が少ないあっさりした食事を食べるようにして、早食いや暴飲暴食を控えることが重要です。また、肥満の人はお腹への圧迫を少なくするために減量をしたほうがいいでしょう。食道や胃などの蠕動運動を正常化するために、規則正しい生活を送ることも、症状の軽減や再発の防止につながります。

薬物療法

薬物療法では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)で胃酸の分泌を抑制し、アルギン酸塩で胃粘膜を保護して症状の改善を目指します。

逆流性食道炎は一旦症状が治まっても再発することが多いため、長期的に治療を続けていくことが大切です。自己判断で薬を中止することはせず、医師の指示通りに気長に治療を続けましょう。

ただし、薬で症状や炎症の改善がみられない場合や重度の食道裂孔ヘルニアが原因の場合、バレット食道(食道腺がん=バレット腺がんに進展することが多い)がみられる場合は、状態に応じた手術が必要になることもあります。

逆流性食道炎の手術治療

逆流性食道炎は一般的にプロトンポンプ阻害薬などの胃薬を服用しながら治療を進めていきます。しかし、薬物療法を続けても症状の改善がなく、日常生活に支障を来たすような症状がある場合は手術による治療が行われることもあります。

手術療法は主に食道裂孔ヘルニアによる逆流性食道炎の患者に行われますが、食道裂孔から脱出した胃を元の位置に戻し、広がった裂孔を縫い縮めます。
胃で食道を巻き付けて逆流防止弁を形成するのが一般的で、食道の全周に巻き付けるニッセン手術と、食道の3分の2を巻き付けるトゥーペ手術があります。

近年では腹腔鏡で手術を行う施設も増えており、体に負担がない手術療法を受けることもできるようになりました。

これらの手術療法は、薬物療法よりも確実な治療効果があります。しかし一方で、逆流性食道炎の手術は高度な技術を必要とし、手術による出血や感染症のリスクも生じます。手術療法を考える場合には、悩んでいる症状と手術によるリスクのバランスを考えて慎重に決定する必要があるのです。

おわりに:胃や喉の不快感が続くようなら、医師の診察を受けよう

たかが胸やけと軽く考えていると、食道癌などの重大な病気に進行してしまう危険があります。胃や喉の痛みや不快感が続くのであれば、胃腸科や内科医師の診察を受けましょう。食生活の改善や運動なども大切です。元気に食事を楽しむためにも、逆流性食道炎に注意しましょう。

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