記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
大腸憩室炎は、腸にできた憩室に便が溜まったために炎症を起こす病気です。
この記事では、大腸憩室炎の原因や発症のメカニズム、予防法について解説しています。
普段ストレスを感じている、便秘がちという方は参考にしてください。
大腸の中の圧が強まると、大腸の壁の弱い部分が外側に袋状に飛び出すことがあります。この飛び出した袋状の部分が憩室です。憩室自体が害になることはありませんが、憩室は便が溜まりやすく、細菌が繁殖して炎症を起こしやすくなるという特徴があります。大腸にできた憩室に炎症を起こすことを大腸憩室炎と言います。
大腸憩室炎を発症すると、腹痛や下痢といった症状がみられます。症状が軽いうちは、ときどきお腹が痛くなる状態を繰り返しますが、症状が悪化してくると腹痛が続くようになります。症状がひどくなると発熱し、さらに悪化すると大腸に穴があいて腹膜炎や結腸周囲炎を起こすことがあります。
大腸憩室炎は、大腸憩室がきっかけで発症する病気です。大腸憩室は便秘が原因で発症することが多いと考えられています。
憩室には、腸壁そのものが外にはみ出してしまってできる真性憩室と、壁の粘膜がとびだしてできる仮性憩室があります。
大腸にできる憩室はほとんどが仮性憩室で、これは腸壁の弱い部分に強い圧がかかったことでできたものです。腸壁には筋肉の層があって強度を保っていますが、血管が通っている部分は筋肉の層が弱くなっています。
便秘があると腸が膨らみ、排便時に力むことで腸管内圧が高くなります。圧力が高い状態が続くと、次第に腸壁の弱い部分が外に飛び出していきます。その結果、憩室ができてしまうのです。
大腸憩室炎の治療は、症状の程度によって異なります。
軽症の場合は、抗生物質を服用して腸管に負担をかけない食事を心がけることで治すことが可能です。しかし、高熱がある・強い腹痛がある・血液検査などで炎症反応の高度な上昇がある場合には、腸管の安静を図るために絶食が必要となり、入院して抗生物質や水分の点滴が必要になります。
また、大腸の一部に炎症が生じることで、腸管が麻痺し、腸閉塞のような症状が生じる場合には、鼻から胃・小腸などに管を入れて腸管内の減圧を図る治療が必要となることも少なくありません。
大腸憩室炎のほとんどは、このような保存的な治療によって治すことができます。しかし、重症例では、憩室が破れたり腹膜炎を引き起こすことがあります。このような場合には緊急で手術を行って憩室を切除する治療が行われます。
精神的なストレスがあると大腸の収縮を強めてしまうため、憩室ができやすくなります。そして、ストレスを感じると腸の内圧が高まるため、腸の粘膜が飛び出しやすくなります。つまり、ストレスが大腸に憩室ができやすい環境を作ってしまい、結果的に大腸憩室炎を引き起こしてしまうことがあるということです。
また、ストレスは下痢を頻繁に起こします。下痢は大腸憩室炎の原因であり、過敏性腸症候群を持っている人が50~60代になると、大腸憩室炎を起こしやすくなるといわれています。
さらに、ストレスは交感神経や副交感神経の働きに影響を与えるため、憩室のできやすさに大きく関係しています。
つまり、精神的なストレスを減らすことが、大腸憩室炎予防のうえで重要ということです。
大腸憩室炎を予防するためには、大腸内の圧が高くならないようにする必要があります。そのためには、便秘の予防がとても大切です。
食物繊維をたっぷり摂取できる、バランスのとれた食事内容にすると便秘を予防できます。食事を摂る時間も同じにするほうがよいでしょう。そのほか、脂肪分が多すぎるもの、冷た過ぎるものや熱過ぎるものは控えてください。また、アルコールやカフェイン、香辛料をたっぷり使った料理は、腸に強い刺激を与えるので避けましょう。そして、喫煙も止めたほうがよいものです。
また、腸の動きをスムーズにするためには適度な運動も効果的です。
大腸憩室炎は、腸に憩室ができることがきっかけで発症します。憩室はストレスや便秘などがきっかけで発症することが多いといわれています。食生活や生活習慣の見直しとともに、自分なりのストレス解消法を見つけて、予防することが大切です。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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