不整脈の手術にはどんなものがある?方法によってリスクも違うの?

2018/5/23 記事改定日: 2019/1/11
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三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

不整脈の手術をする際には、その手術方法や合併症などが気になりますよね。どの方法が自分の症状に最適なのか?また具体的にどんな内容の手術を行うのかについて解説していきます。
治療の意思決定などに役立ててください。

不整脈の手術にはどんなものがある?

不整脈(心房細動)の治療の一つとして、薬物療法(内服薬・注射剤)が行われることがありますが、薬の使用だけでは心房細動の発生を防ぐことが困難なため、カテーテルアブレーション・ペースメーカー・外科手術などの手術が行われることがあります。

またそのほかにも、心房細動が慢性化している場合や、弁膜症・狭心症・心筋梗塞などの疾患との合併がある場合には、メイズ手術が行われることがあります。

不整脈の手術、カテーテルアブレーションとは

カテーテルアブレーションとは、不整脈を起こしている心臓内の局所に、カテーテルを挿入して焼灼をする手術です。

手術の流れ

  1. 足の付け根や首の静脈からカテーテル(1.3~2.6mmの細長い管)を挿入し、心臓内まで入れていきます。カテーテルの先端についている電極を、体外にある専用機器と繋ぐことにより、心臓内の電気現象を記録・刺激できるようになります。
  2. 複数のカテーテルを心臓内に入れることで、不整脈の電気の流れ方や、特殊な電気刺激の流れを分析していきます。
  3. 続いて、治療部位へ「アブレーション専用カテーテル」を心臓内に入れ、高周波電流を流して心臓組織を温めていきます。これは温度を上昇させることにより、不整脈の原因となっている電気の流れや発生を消失させるために行います。
  4. 手術終了後は、体内からカテーテルを抜き取り、挿入部位をしばらく抑えて止血します。挿入部分からの出血を防ぐため、4~8時間は病室で安静にしていましょう。

麻酔と手術時間

静脈麻酔、鎮静薬、局所麻酔などの使用は手術時間の長さや内容などにより異なります。
手術を受ける人の状態によって変わってきますが、手術は1時間~数時間以上かかるのが一般的です。

カテーテルアブレーションにリスクはないの?

カテーテルアブレーションの合併症には、以下のものがあります。

脳梗塞

0.3~0.5%の確率で脳梗塞が発生することがあります。ただし、心房細動以外の不整脈で起こる確率はとても低くなります。

心穿孔

心穿孔とは、心臓に出来た小さな損傷から血液が漏れ出し、血圧が低下する症状のことです。1%前後の確率で発生することがあります。ただし、心房細動以外の不整脈で起こることはあまりありません。

その他の副作用

カテーテルを挿入する際に、血管の損傷や出血が起こることや、心臓周りにある神経や臓器に障害が起こる場合があります。これらの合併症が起こる確率は、患者さんの症状や手術内容により変わるので、事前に主治医に確認を取りましょう。

ペースメーカーを埋め込む手術

ペースメーカーとは、脈拍を正常に保つために使用される、心臓に電気刺激を送り拍動させる医療機器です。一般的にペースメーカーが植えこまれる場所は、左右どちらかの前胸部の場合が多いですが、腹部や他の部位に植えこまれるケースもあります。また、ペースメーカーの内部にはリチウム電池と電気回路が内蔵されており、心臓内に留置された導線(リード)と繋がっています。リチウム電池は外部から充電することができないので、5~10年後に交換する必要があります。

基本的には、脈が遅くなるタイプの不整脈(徐脈性不整脈)がある場合に使用されます。

手術の流れ

  1. 右前胸部皮下を約4~5cm切開し、ペースメーカーを入れる場所(ペースメーカーポケット)を作ります。
  2. X線(レントゲン)透視しながら、心臓内に1~2本の導線を留置します(この時、新たな皮膚切開しませんん)。
  3. 導線と本体を接続後、ペースメーカー本体をポケットの中に収納します。

※心臓手術と同時にペースメーカーの植え込みを行う場合や、静脈から導線を挿入できない場合などには、心臓外部に心筋電極と呼ばれる導線を直接縫いつける方法を取ることがあります。

麻酔と手術時間

一般的には局所麻酔で行うことが多いですが、全身麻酔をすることもあります。
手術は1~2時間くらいで終わることが多いです。

ペースメーカー埋め込みのリスクは?

まれにですが、ペースメーカーの植え込みの際に合併症が引き起こされることがあります。

とくに「ペースメーカー感染」と呼ばれる合併症は、悪化した場合感染が全身に及ぶので注意が必要です。感染した場合は、本体と導線を体内から抜去しなければならないのですが、長期間血管内に留置していた導線は癒着が強いため、抜去が難しくなります。

ペースメーカを植え込んだ部分に疼痛・発赤・変色・浸出液などの症状が現れた時は、早急に主治医に相談しましょう。

合併症

術中・術後早期
術後出血、皮下出血、感染、気胸、血胸、リード移動、血管損傷、心室・心房穿孔
術後遠隔期
感染、皮膚圧迫壊死、リード断線、リード皮膜損傷

メイズ手術はどんなときに行うの?

メイズ手術はカテーテルアブレーションの原理と同様、心房細動の発生を防ぐために電気的な隔離線を、高周波エネルギーを使用して作成します。

術後の経過

メイズ手術は、術後10年が経過しても心房細動が消失している人の割合が全体の約85%とされています。また、発作性心房細動では約95%、慢性の心房細動では90%の割合で消失するとされています。

他の心臓疾患の手術を行う際にも、同時にメイズ手術を行うことで、術後の心臓機能維持にも役立ちます。

合併症

メイズ手術の合併症では、新たに心房細動以外の不整脈が発生することがあります。これは、心房細動の症状が長く続いている人の場合、心房の電気を作る力が低下してしまっているためだとされています。起こる可能性のある不整脈として、徐脈、頻脈があげられます。

手術後に再発することはある?

不整脈の手術を行っても、一定数は術後に再発してしまうことがあります。
とくにカテーテルアブレーションは再発率が高く、一回の治療のみでは約4割が心房細動を再発するとされています。
このため、複数回にわたる治療が必要になるケースも多く、治療自体は身体への負担を抑えることができますが、長期にわたる治療が必要になることも少なくありません。

一方、ペースメーカー植え込み術の場合、再発は比較的少ないとされていますが、心臓に埋め込んだ電極が外れたり、ペースメーカー自体の電池が消耗されて正常に作動しなくなることがあります。また、徐脈は改善したものの動悸を感じやすくなるとの声もあります。

また、メイズ手術は身体への負担が大きな手術ですが、再発率は非常に低く、心房細動は約9割で完全に消失するとされています。
不整脈の手術は、それぞれの方法によって体への負担や再発率が異なりますので、術前にどのようなリスクがあるのかしっかり説明を受けるようにしましょう。

おわりに:手術はその人の症状に合わせたものを行います

不整脈の治療では、薬物療法だけでは不十分の場合が多いので、カテーテルアブレーション・ペースメーカー・外科手術・メイズ手術などの手術が行われます。

どの手術が行われるかは、その人の症状や持っている疾患などにより異なりますが、手術を行うことで術後の不整脈が改善する可能性があります。また、手術を行う前には、合併症の有無についても確認を取りましょう。

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