不安障害の薬の副作用とは?漢方を治療に使うのはどんな目的があるの?

2018/7/19 記事改定日: 2020/10/16
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

不安障害の治療薬についてよく使われている代表的な3種類の薬の効果と副作用を紹介します。漢方薬を治療に用いる病院もありますが、どんな症状のときに漢方を使用するのでしょう。西洋医学の薬との違いとあわせて紹介していきますので、不安障害の治療の考え方に役立ててください。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

不安障害の治療で使われる代表的な薬は?

不安障害の薬物療法とは、薬を使って不安障害による「不安感」や「恐怖心」を和らげる治療法で、不安障害の治療において主流の方法です。

不安障害に対して使われる代表的な治療薬としては、以下の3種類が挙げられます。

  • SSRI(エスエスアールアイ)
  • 抗不安薬
  • β(ベータ)遮断薬

次項からは、不安障害の治療に使われるこれら3種類の薬の効果・副作用について、それぞれ詳しく解説していきます。

不安障害に対するSSRIの効果と副作用

SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」のことで、不安障害の一因となる脳内物質「セロトニン」の不足を改善する作用のある抗うつ剤です。

効果

不安を和らげる効果のあるセロトニンを増やしてくれるため、不安障害による気分の落ち込みの改善に効果的とされ、不安障害を発症したときの第一選択薬として使用されます。

種類
「パキシル®」「ジェイゾロフト®」「レクサプロ®」「ルボックス®」など

副作用

従来の抗うつ剤に比べると、副作用が出にくいという特徴があります。ただし、飲み始めに下痢や胃痛など消化器官への副作用が出る可能性があること、また飲み忘れや急な服用の中断で強い離脱症状が現れる可能性はあるので、注意が必要です。

不安障害に対する抗不安薬の効果と副作用

不安障害の治療に用いられる抗不安薬は「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれるもので、脳内で分泌される「GABA」という脳神経伝達物質に作用して症状を改善させます。

効果

GABAには脳の中枢神経の働き・高ぶりを抑え、リラックスさせる効果があります。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、GABAの働きを促進させることで脳の活動を緩やかに、スローダウンさせることで、不安・緊張の感情を和らげてくれます

副作用

副作用としては、脳の働きを弱めてリラックスさせるため、強い眠気が挙げられます。
また比較的依存性が強いとされていて、服用する薬の種類・期間・量、そして急な服薬の中止が原因で、退薬症状や依存症に陥る可能性もあることは理解しておきましょう。

不安障害に対するβ遮断薬の効果と副作用

β遮断薬は、主に不安障害による動悸・息切れ・発汗・震えなどの身体症状を抑制する作用のある薬で、身体症状が強く出たときの頓服薬として使用されることがあります。
不安障害によって現れる上記のような症状は、自律神経の一種である交感神経が必要以上に活発に働くことによって起こると考えられています。

効果

β遮断薬は、交感神経を刺激する脳内神経伝達物質「アドレナリン」の結合先である「β受容体」を遮断することで、身体症状の原因である過度な交感神経の働きを抑えます。
服用によって一時的に身体症状が抑えられるほか、常備することによる安心感から、症状そのものに対する不安感を拭えるという心理的効果も期待できます

副作用

低血圧、めまいなど自律神経系の副作用の症状が起こることがあります。

不安障害で使う漢方薬と西洋医学の薬との違いは?

不安障害には、漢方薬による治療効果も期待されています。ただし、SSRI・抗不安薬・β遮断薬などの西洋医学で使われる薬に比べて、漢方薬の効き目は患者の体質による個人差が大きくなるといわれています。

このため、基本的には西洋医学的な見地での薬を使った治療がメインであり、漢方薬は医師の考えや患者本人の希望によって使用するケースもある、という程度です。

以下に、不安障害の治療に良く使われる漢方薬を効果が期待できる症状ごとにご紹介しますので、参考にしてください。

主に不安障害による、精神的な症状が出ているとき

体力はあるが、イライラや不安感が強い
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
体力が落ちていて、イライラや不安感が強い
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
体力が落ちていて、緊張が強い
桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
神経が高ぶり、イライラしている
抑肝散(よくかんさん)>
とにかく不安が強い
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

主に不安障害による、身体的な症状が出ているとき

のどや胸に違和感がある、詰まった感じがある
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安が強く、血の巡りも悪い
加味逍遥散(かみしょうようさん)
不安が強く疲れていて、食欲不振がある
加味帰脾湯(かみきひとう)

薬以外に不安障害の症状を軽減できる方法はある?

不安障害の症状を軽減するには、薬物療法だけでなく、認知行動療法などのカウンセリングを主体とした精神療法も効果が期待できます。認知行動療法は自身の不安の感じ方と現実との「歪み」を修正していくことが目的であり、効果の個人差は大きいものの不安障害の改善に一定の効果があることが分かっています。

また、不安障害を抱える人たちの自助グループに参加したり、苦手なことや不安を感じることに段階的に挑戦することも、不安障害による困りごとの解決の助けになるでしょう。

おわりに:不安障害の薬・漢方薬にはそれぞれ効果も副作用もあるため医師に相談を!

不安障害の治療は薬物療法がメインになり、特にSSRI・抗不安薬・β遮断薬の3種類の薬が使用されます。それぞれに効果と副作用の両方がありますが、服用にあたっては医師の診断と処方が必要不可欠です。

一部の病院では治療薬として漢方薬も使用されていますが、効果には個人差が大きく、まだまだ使用頻度は多くありません。この記事を参考に治療薬への理解を深めて、自分や大切な人の不安障害治療に役立ててください。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

不安障害(14) SSRI(14) β遮断薬(12) 漢方薬(76) 柴胡加竜骨牡蠣湯(3) 抗不安薬(27) 半夏厚朴湯(2) 加味逍遥散(7) 抑肝散(4) パキシル(5) 不安障害治療(3) 不安障害治療薬(1)