記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
過重労働やストレスによって心身の体調を崩し、うつ病を発症したり、自ら命を絶ってしまう労働者は少なくありません。そこで今回は、企業に義務化されているメンタルヘルスのチェック制度や、実施義務のある企業、実施の意義などについてお伝えしていきます。
平成27年12月から現在に至るまで、一定数の労働者を雇用している企業に対し義務化されているのが、「ストレスチェック」の実施です。
定期的に労働者のストレス状態の検査を行い、本人がその結果を自覚するとともに、労働者全体の検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることで、労働者のメンタル不調を未然に防止することを目的としています。
ストレスチェックなどのメンタルヘルスケアは、すべての労働者が健やかにいきいきと働くために、またその家族の幸せを確保するために、欠かせない取り組みです。
そして企業にとっても、メンタルヘルスチェックはやる意義のあるものです。その理由の1つが、「職場の生産性低下の防止」です。メンタルヘルス不調に陥った労働者は、仕事への意欲や決断力が低下することで、半日で終わるはずの仕事に1日費やしたり、また遅刻や欠勤が増えたりします。最悪の場合は自殺や離職につながり、企業は必要な人材を失うことになります。こうした事態を防ぐために、メンタルチェックは欠かせないのです。
理由の2つめが、「生産性や活力の向上」です。職場環境を改善することは、メンタルヘルス不調に陥った人はもちろん、そのほかの労働者にとっても労働生活の質の向上となり、モチベーションの維持や生産性の向上にもつながります。
そして3つめの理由が、「リスクマネジメント」です。メンタルヘルス不調になった労働者は、集中力や注意力が低下するために、思わぬ事故を引き起こす可能性があります。特に運転にかかわる仕事をしている場合は、本人だけでなく周囲の人も巻き込む大事故につながる恐れがあります。
また、メンタルヘルス不調の労働者に適切な対応をしないと、心身の状態が悪化し、労災請求などに発展する可能性もあります。こうしたリスクを事前に回避するためにも、メンタルヘルスチェックを定期的に行うことが重要なのです。
【 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』 の情報をもとに編集して作成 】
現在、ストレスチェックの実施が義務化されているのは、労働者が常時50名以上(勤務時間や日数に関わらず、継続して雇用・使用している労働者の数。アルバイトやパートの労働者も含む)の全事業場(法人・個人)です。
労働者が50名未満の事業場についてのストレスチェックの実施は「努力義務」となっています。なお、ストレスチェックの実施や高ストレス者への面接指導は産業医が行うことが望ましいですが、労働者が50名未満の事業場では産業医の選任義務がないため、産業医が不在というケースも少なくありません。その場合は、外部の専門の委託業者などを利用して実施することになります。
ストレスチェックなどのメンタルヘルスケアの実施は、事業場の規模によって「義務」か「努力義務」かに分けられています。ただ、ストレスチェックの実施は労働者の健康を守るために欠かせないものであり、ひいては企業の人材の損失を防ぐことにもつながっていきます。産業医のいない小規模の事業所でも、外部に委託すれば実施は可能なので、ぜひ実施を検討されてはいかがでしょうか。
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