性欲減退の原因となる「男性更年期障害(LOH症候群)」とは?

2018/8/31

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

これまで、性欲減退は加齢による諸症状の一つと捉えられ、治療の対象ではないという認識が一般的でした。しかし、近年、性欲減退を始めとする諸症状が「男性更年期障害(LOH症候群)」と呼ばれ、治療によって改善することができると考えられるようになってきました。
男性更年期障害とはどんな状態のことなのでしょうか?また、治療や改善にはどんなことをするのが効果的なのでしょうか?

性欲減退の原因となる「男性更年期障害(LOH症候群)」とは

LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とは、中高年男性に起こる更年期障害のことで、全身の疲労感・意欲の減退、勃起障害などが主な症状です。これまでは加齢によるものだと考えられていましたが、最近の研究によってテストステロンの低下が直接の原因であることがわかりました。

男性ホルモンであるテストステロンは、一般的には第二次性徴を促す物質として知られています。しかしその働きは思春期だけではなく、成人後も筋肉や骨の形成・造血機能や脂質の代謝など、男性らしい体つきを作るのに大切な働きを担っています。また、テストステロンは攻撃性や意欲など、アクティビティを高める作用があることもわかっています。

このテストステロンの分泌は20歳でピークを迎え、徐々に低下していきます。そのため、年齢を重ねていくほど症状が現れる確率が高くなります。

さらに、テストステロンには、勃起を促したり性欲を高めたりと性機能全般を司る働きがあります。ですから、テストステロンが低下すると性機能の低下に伴うさまざまな症状が現れます

  • 性欲の低下
  • 勃起障害

これらは加齢による体力の低下や、それに関連する疲れのせいと考えてしまいがちですが、男性更年期障害である可能性もあります。男性更年期障害が原因であれば、適切な治療を受けてテストステロンを増やすことで、症状の改善を期待できます。

男性更年期障害は体や心にも影響する?

男性更年期障害の症状は、性機能だけではなく内科的症状、精神的症状として現れることもあります。

内科的症状
  • 筋肉量・骨密度の低下
  • 内臓脂肪の増加
  • 疲れやすくなる
  • 関節痛・筋肉痛
  • ホットフラッシュ
  • 睡眠障害
精神的症状
  • 抑うつ感・無気力感
  • イライラ
  • 神経質になる
  • 不安感

テストステロンは、男性らしい体つきを作るために筋肉量を増やしたり骨を強くしたりする働きがあります。そのため、減少すると筋肉量も骨密度も減ってしまい、疲れやすくなることが多いです。また、テストステロンによって抑制されていた内臓脂肪が増えて、お腹がぽっこりと出た肥満体型になりやすくなります

肥満が深刻化すると高血圧や高血糖・高脂血症となり、動脈硬化や心筋梗塞・脳卒中などの重篤な疾患を引き起こす可能性もありますので、「以前よりも太った」「疲れやすくなった」などの症状がある場合は医師に相談しましょう。

また、精神症状では一般的にうつ病の症状と捉えられている症状が出ることが特徴です。ホルモンバランスの乱れから自律神経に影響してしまい、精神状態が不安定になることが原因です。身体的な症状である睡眠障害から睡眠不足となり、気分の落ち込みや疲労感・意欲低下などにつながるおそれもあります。

これらの症状が出ると精神科にかかりがちですが、男性更年期障害に起因する精神症状はうつ病の治療では治りません。うつ病の治療しか受けなかった場合、治療にならないばかりか症状が悪化してしまう場合もあります。男性更年期障害と思われる場合、ホルモン剤を使用するなどしてテストステロンを増やす治療を受けられるよう、専門医に相談しましょう。

男性更年期障害になってしまう原因は?

まず、大前提としてテストステロンの分泌は20歳をピークとして減少することが挙げられます。しかし、年齢を重ねても若々しく男らしい人もたくさんいます。つまり、男性更年期障害を発症する人とそうでない人では、テストステロンの分泌を低下させるその他の要因があると考えられます。

  • 過度なストレス
  • 仕事のプレッシャー
  • 不規則な生活習慣

過度なストレスは、ストレスホルモンを産生します。ストレスホルモンであるコルチゾールは、テストステロンの分泌を低下させてしまいます。ストレスの原因はさまざまですが、40代ごろになると職場で責任のある役職につく人も増え、プレッシャーを受けることもそれだけ多くなります。また、職場だけでなく家庭内の人間関係や、介護の問題などが出てくるのもこの世代です。

ですから、管理職を始めとしてデスクワークの多い人や、普段からストレスをためやすい人は特に注意が必要です。精神症状や身体症状を加齢のせいと見過ごさず、おかしいと思ったら医師に相談しましょう。

どうすれば男性更年期障害を克服して性欲を取り戻せる?

テストステロンの分泌を増やすには、脳の視床下部の機能を回復することと、テストステロンの循環を良くする・分解を防ぐことの両面からのアプローチが考えられます。視床下部の機能を回復するには精神的なアプローチが、循環を良くする・分解を防ぐためには肉体的なアプローチが有効と考えられています。

精神的アプローチ
ストレスを溜めない
自分の好きなことをする
魅力的な異性と接触する
肉体的アプローチ
有酸素運動と筋力トレーニング
減量
食生活の改善
十分な睡眠

精神的なアプローチでは、ストレスを溜めないことが最も重要な方法です。現代人の生活では、ある程度のストレスがかかることは避けられないため、ストレスを受けないようにするのではなく、受けたストレスを上手に発散する方法を見つけることが大切です。趣味に打ち込む、軽い散歩やお風呂などでリラックスする、夢中になれる映画やドラマを見る、など自分なりの解消法を探してみましょう。

また、上記とも関連しますが、自分の好きなことをするというのもいい方法です。趣味はもちろんのこと、我を忘れて夢中になれることを見つけることはストレスの解消にもなり、活き活きと活動的になることができます。魅力的な異性と接触することも、性機能を司るホルモンであるテストステロンの分泌には重要なポイントです。

肉体的なアプローチでは、有酸素運動と筋力トレーニングのバランスが大切です。どちらもやりすぎると体内の活性酸素が増えてテストステロンがうまく循環しなくなってしまいます。しかし、適度な運動を続け、筋力トレーニングをすれば筋肉量を維持するためのテストステロンを分泌させることができます。運動はくれぐれも無理をせず、ほどほどに行いましょう。

また、脂肪を減らす減量も有効な方法です。脂肪にはアロマターゼという、テストステロンをエストロゲンに変換してしまう酵素が多く含まれています。エストロゲンは女性ホルモンですから、エストロゲンが増えてしまうとホルモンバランスが崩れてしまいます。そのため、有酸素運動や糖質制限などで脂肪を落とすことはテストステロンの濃度を減らさないために大切なのです。

おわりに:男性更年期障害は治療できる!

これまで、性欲低下を始めとする性機能の低下や、疲れやすさ、抑うつ症状は主に加齢が原因だと考えられてきました。しかし、直接の原因はテストステロンの低下であることがわかってきています。

そこで、ホルモン剤を使用したり、生活習慣を改善したりすることでテストステロンを増やし、症状を改善することが可能になったのです。ぜひ、加齢と諦めず専門医に相談してみましょう。

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