低血糖の人が空腹時の運動を控えたほうがいいのはどうして?

2018/10/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病患者さんなど低血糖の方は、空腹時の運動は控えるようにといわれています。では、なぜそうしなくてはならないのでしょうか?その理由や、低血糖の人が運動時に気をつけるべきことなどを解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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低血糖の人は空腹時の運動を控えたほうがいいのはなぜ?

低血糖の人は、空腹時の運動を控えることが望ましいとされています。そもそも糖質は、主に身体の筋肉や肝臓にグリコーゲンというエネルギー源となって蓄積されているもので、運動時のこのグリコーゲンがエネルギー源となり、消費されていきます。強度の強い運動や持久力を有する運動を実施した場合、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンが枯渇してしまうことによって低血糖を引き起こしてしまうとされています。

また、糖尿病の治療で薬剤を使用している方は、薬剤が効いている時間帯に激しい運動をすることによって血糖値が下がり、低血糖を引き起こしてしまうこともあります。
さらに、遷延性低血糖といい運動が終了してから10数時間後の深夜に突然低血糖を起こすこともあります。

運動中や運動後に低血糖にならないために気をつけるべきことは?

運動時に低血糖にならないためには空腹時の運動を避けることが予防につながります。食後30分くらいたって血糖が上昇し始める頃に運動を開始することがおすすめです。インスリン治療をしている場合には、運動を始める1時間以上前に腹部にインスリン注射をしておくことが良いでしょう。腕や太ももでは、運動によってインスリンの吸収が早まってしまうため、腹部がおすすめです。

また、運動をはじめる直前に血糖値が低いときにはビスケットやクッキーなどの補食を食べてから運動するようにし、運動における血糖コントロールが安定していない時は運動前後で血糖値を測る習慣をつけておくと良いでしょう。
さらに、長時間の運動、特に激しい運動をするときには、あらかじめ十分なたんぱく質をとっておきましょう。

運動中に低血糖症状が起きたらどうすればいい?

低血糖となると、70mg/dL以下で、交感神経症状である冷や汗、不安感、手や指の震え、頻脈、顔面蒼白といった症状が出現します。
さらに血糖値が下がってしまい50mg/dL程度になると、中枢神経症状である頭痛、集中力の低下、生あくび、目の霞みといった症状がでてきます。
さらに血糖値が下がって50mg/dL以下となると異常行動、けいれん、昏睡などが見られ、命にも危険を及ぼす可能性があります。

運動時に低血糖が起こってしまったら、ブドウ糖10gもしくはブドウ糖を含む飲料水を100~200mLほど摂取しましょう。ブドウ糖が無ければ砂糖20gの摂取でも良いですが、αグルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン、セイブル)を服用している人の場合は砂糖では効果がないため必ずブドウ糖を摂取するようにしましょう。糖分を摂取して安静にしていても低血糖症状が全然改善してこないという場合にはもう一度同量のブドウ糖を摂って様子をみるようにしましょう。

運動時に低血糖が起きてもすぐに対応できるように、砂糖やブドウ糖、ブドウ糖を含むフルーツジュースやスポーツ飲料を常に用意しておくことがおすすめです。

おわりに:空腹時の運動を避けて、ブドウ糖を用意しておきましょう

もともと低血糖の人は、空腹時に運動をしてしまうと筋肉内に貯蔵されていたエネルギー源であるグリコーゲンが枯渇してしまうため、低血糖を引き起こしてしまう恐れがあります。また、運動時に低血糖を起こさなくても10数時間後に低血糖を起こす遷延性低血糖というのもあります。
予防のために運動前後での血糖値を把握したり、ブドウ糖やブドウ糖を含むジュースやスポーツ飲料を常に携帯したりなどの対策に努めましょう。

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