ヒートショックの症状が起こるのはどうして?どうすれば防げるの?

2018/12/20

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

冬になるとたびたび耳にすることが多い「ヒートショック」。特に高齢者は用心したほうがいいといわれるこの症状は、どのようなきっかけで出てくるのでしょうか。また、予防するにはどうすればいいのでしょうか。この記事で解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

ヒートショックの症状があらわれる原因は?

人間の体にはホメオシタシスとよばれる機能があります。日本語では恒常性(こうじょうせい)維持機能といわれ、環境が変わっても体の状態をある程度一定に保とうとする働きのことです。どんなに暑い地域でも、寒い地域でも、人間の体温がある程度一定に保たれているのはホメオシタシスの働きによります。

冬季の入浴事故で心配されるヒートショックは、人間の体が一定の体温を保とうとする仕組みがもとで起こります。急激な温度差に体が対応しようと血圧が大きく変動し、体に悪影響を及ぼすのです。

室内などの温かい場所から、冷え切った浴室や脱衣所などの寒い場所に移動すると、急な体温変化に体が対応しようとします。体は筋肉を震わせて熱を作るほか、血管を収縮させて細くすることで血液量を減らすため血圧が上がります。この状態で温かいお湯に入ると、今度は血管が広がって血液が急激に流れるため、今度は血圧が下がります。そして、入浴を終えて脱衣所に出たとき、脱衣所が寒いと一度温まった体は再び寒さに順応しようとします。

このように、一度の入浴で何度も大きな血圧変動を繰り返していると、心臓や脳血管への負担が非常に大きくなり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞や脳出血といった命にかかわる疾患を引き起こしやすくなります。また、急激な血圧の低下は、めまいやふらつき、意識消失などが起こすことで転倒や溺死を招くことがあります。

ヒートショック症状が起こりやすい人や場所は?

ヒートショックを起こす原因の中には飲酒や薬の服用などもあり、必ずしも浴室やお手洗いの室内環境が原因とは限りません。ただ、ヒートショック関連の事故は冬に多い傾向があるため、室内の寒暖差がリスク要因と考えられています。

また、一般的には以下のような条件に当てはまる人は注意が必要とされています。

  • 65歳以上である
  • 不整脈高血圧、糖尿病の持病がある
  • 過去に脳や心臓の病気をしたことがある
  • 熱い風呂を好む
  • 飲酒後に入浴する
  • 浴室や脱衣所、トイレが寒い  など

高齢になるほど高血圧や糖尿病、動脈硬化などを慢性的に患っていることがあるため、注意が必要です。

ヒートショックの症状を未然に防ぐには?

冬場のヒートショックを予防するためには、次のようなポイントに気をつけましょう。

脱衣所や浴室は暖める
浴室や脱衣所に暖房設備がある場合は活用しましょう。設備がない場合は、小さなヒーターを置いて脱衣所を暖めたり、シャワーを使ってお湯を張って浴室を暖めたりするようにしましょう。
お湯の温度は41℃以下と熱すぎない温度にする
寒いからと、浴槽の温度を高くしすぎないようにしましょう。
浴槽から急には立ち上がらない
急に立ち上がると急激に血流が変化し、めまいやふらつきを起こしやすくなります。動作はゆっくりとを心がけましょう。
飲酒後や、睡眠剤や精神安定剤などを服薬した後の入浴は控える
お酒を飲んだり、薬を服用した後は、本人は大丈夫と思っていてもとっさの対応がしづらくなります。あらかじめ入浴を済ませたり、飲酒・服薬後の入浴は控えたりしましょう。
家族にひと声かけて入浴する
入浴前に家族に声をかけ、異変があったときに対応してもらえるようにしましょう。

おわりに:お風呂や脱衣所のヒートショック対策を忘れずに!

寒い部屋や脱衣所から急に暖かい湯船に入ると、体内の血流が急激に変化します。特に高齢者では、転倒や脳血管障害、心臓疾患などを招いて死亡するケースも少なくありません。特に冬はヒートショック関連の事故が起こりやすいといわれています。脱衣所を暖めるといった予防を積極的に行っていきましょう。

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