記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓突然死は、健康状態とは関係なく、誰にでも起こりうる突然死です。日本では7.5分に1人が心臓突然死で亡くなっていると言われており、それまでは医師にしか使用が認められなかったAED(心停止の際に電気ショックを行なう医療機器)も、2004年に一般人でも使えるようになり、街のあらゆるところで見かけることが多くなりました。この記事では心臓突然死はどのようにして起こるのか、突然心停止した人に対してのAEDの必要性などを解説していきます。
心臓突然死とは、健康だと考えられていた人が突然死に至り、医学的には「症状が出現してから24時間以内の予期しない内因死」とされています。
原因の大半が心室細動と呼ばれる不整脈で、年間6~8万人が亡くなっています。そのほか、急性心筋梗塞、狭心症、心筋症、心不全、弁膜症などが原因としてあげられ、狭心症を含む虚血性心疾患(心臓に十分血液が行き渡っていない状態)は、食生活の欧米化にともない、増加傾向にあります。
心臓は、大きく分けて「心房」と「心室」という2つの部屋に分けられ、それぞれ異なった役割を担っています。心房は血液が入ってくる場所で、心室は全身や肺への血液を送りだす働きをしており、十分な量の血液が心室から送り出されるためには、心房から心室への規則的な電気活動が重要です。
私たちの活動を維持するために必要な酸素や栄養は血液によって運ばれ、血液はポンプの役割をする心臓により、体のすみずみまで行き渡っています。正常な人の心臓では、1分間に60~80回の収縮を規則正しいリズムで繰り返していますが、この拍動が不規則になった状態を不整脈といいます。
不整脈の中でも、心室頻拍と心室細動は致死性の高い不整脈です。
脈が早くなる不整脈の一種で、1分間に120以上もの早いペースの規則的な興奮をする状態を指します。急性心筋梗塞などの心臓病により発症するタイプのもの(器質性心室頻拍)と、心臓病がなく発症するもの(特発性心室頻拍)に分類されます。
この状態が続くと、脳をはじめとした全身の臓器に血液が運ばれなくなり、やがて意識消失や命に関わる重篤な状態を招きます。
1分間に300回以上、不規則に心室が震えた状態です。この状態になると全身に血液供給を行なえなくなり、心停止を引き起こします。数分で呼吸は止まり、脳や腎臓、肝臓などの重要な臓器に障害をきたします。
心室細動は、心臓が原因で突然死する病気の中でもっとも多いと言われており、心室細動を起こす病気として知られているのが心筋梗塞です。心筋梗塞を発症して数日以内に、1割の方に心室細動が生じると考えられています
心臓突然死した人の多くは、心臓に何かしらの異常があったり、親族に突然死した人がいたりする遺伝性要素を持っていることがわかっています。また、心機能が正常でも、心室細動のきっかけとなる特殊な不整脈を持っている患者さんがいることもあるので、定期的に心電図検査を受けましょう。
こうした危険な心臓突然死は、日ごろのちょっとした行ないや生活習慣を見直すことで未然に防ぐことができます。
血圧が急上昇すると、心臓突然死を引き起こしやすいと言えます。寒い時期では短時間の外出でも、帽子やマフラー、手袋などの防寒具をしっかりと着用しましょう。
冬場の入浴では、暖かい居間から寒い風呂場へ移動するため、急激な温度差により血圧が大きく変動し、血圧の乱れや脈拍の変化が起こりやすいです。これをヒートショックと呼び、心臓突然死の原因となる心筋梗塞も起こりやすいので、入浴の際には脱衣所を温め、ゆっくりと半身浴を行ないましょう。
中高年になると、高脂血症や高血圧症、糖尿病といった生活習慣病が増えて、動脈硬化を起こしやすく、血栓ができやすくなります。心臓にも目に見えない動脈硬化があるので、血液が固まりやすくなるのを防ぐためには水分補給が大切です。
特に睡眠中は血液がどろどろしやすいので、朝は血が固まりやすくなっています。寝る前や起床時にコップ1杯の水を飲むと、心筋梗塞がかなり防げます。
心筋梗塞の一因として、カルシウムとマグネシウムの不足が挙げられます。体内のカルシウムが不足すると、骨から血液中にカルシウムが溶け出します。すると血液中のカルシウムが増えて動脈硬化を引き起こしやすくなり、心臓の収縮リズムが狂ってきます。また、マグネシウムは血液中のカルシウム濃度を調節する働きがあるため、マグネシウムが不足すると心筋梗塞が起こる原因となります。
カルシウムとマグネシウムををバランスよく摂り、心臓のリズムを整えることが大切です。カルシウムとマグネシウムは海藻や小魚、貝、ナッツ、大豆製品などに多く含まれています。理想的な摂取比率は、カルシウム2に対してマグネシウム1です。ただし、サプリメントなどの摂りすぎには注意しましょう。
心停止した人の脈を正常に戻すには、電気ショックで強制的に心臓の異常なリズムをリセットするしか方法はありません。救急車を呼ぶのも大切ですが、出動要請から現場到着まで平均6分かかると言われています。特に脳は、血流が途絶えて数分経つと脳細胞が死んでしまうので、一刻も早く心臓の機能を正常に戻して脳細胞のダメージを最小限に抑える必要があります。
このため、救急車が到着するまでに自動式体外式除細動器(AED)を使用して、いち早く心臓の機能を回復させることが大切です。AEDは音声ガイドに従って操作すると自動で心電図の解析を行ない、電気ショックの必要性を判断しくれるので、使い方が難しい、といったこともありません。学校や空港、さまざまな公共施設に設置してありますので、万が一に備えてAEDの設置場所を確認しておくとよいでしょう。
生活習慣病や病気が原因で心臓突然死を起こすことはもちろん、さっきまで元気だった人が、急に倒れて亡くなってしまうことも珍しくありません。他人事と思わず、日ごろから心臓突然死を引き起こさないような生活を心がけ、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
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