風邪は治ったはずなのに…。咳が続いて気管のあたりが痛いのはなぜ?

2018/12/25

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

老若男女問わず、かかりやすい病気といえば風邪ですよね。熱がひいて鼻水も止まったのに、咳だけは治らなくて苦しいまま…なんてことはありませんか? こういった状態が数週間続いたら「咳喘息」を発症している可能性があります。

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風邪の後、ずっと続く咳の原因は?

咳喘息とは、咳が慢性的に続く気管支の病気です。気道が狭くなってしまった状態で、あらゆる刺激に対して敏感になり、炎症や発作が起きやすくなっています。

風邪と併発することが多く、熱や鼻水など風邪の症状が治まったあとも咳が2~3週間以上続くようなら咳喘息の可能性があります。また、咳喘息は治ったと思っても再発を繰り返しやすいという特徴を持ちます。

気道は、呼吸をするときに空気が出入りする通り道です。症状を引き起こす原因はさまざまで、風邪、室内外の温度差、たばこの煙(受動喫煙)、運動、飲酒、ストレス、ホコリやダニなどのハウスダストなどが考えられます。

比較的、女性が多く発症するとされていますが、アレルギー反応によって気管が炎症を起こすこともあり、アレルギーを持つ人によくみられる病気でもあります。

咳喘息と喘息の違いは?

咳喘息と喘息とでは違いがありますが、咳喘息を放っておくと喘息に進行することがあります。一般的な喘息では、呼吸にヒューヒュー、ゼイゼイといった喘鳴が混じったり、呼吸困難、発熱、痰がみられますが、咳喘息ではみられません。

下記に挙げるような条件下で咳などの症状が出る場合、咳喘息の疑いがあります。

  • 夜中から明け方にかけて激しい咳が出る
  • 寒暖の差があるときに咳が出やすい
  • 喫煙または受動喫煙の煙に反応して咳が出る
  • 喉がイガイガする感じがある
  • 会話していると喉が渇きやすい
  • 激しい咳が出て、胸の痛み、嘔吐、失神がみられる

咳からくる気管の痛みの原因を知るには、どんな検査をするの?

咳喘息の診断は、ほかの病気と見分けることが必要です。風邪もそうですが、結核や肺がんも長引く咳が症状としてあらわれる病気です。

まずは問診で医師が患者の病歴を確認し、症状から総合的に診断していきます。検査では、胸部のレントゲン(X線)検査と肺活量を調べます。また「気管支拡張剤」を服用し、咳が治まるか経過をみます。気管支拡張剤が効けば咳喘息の可能性が高く、効かなければほかの病気を検討します。

咳喘息でよくみられる症状を紹介します。該当するものが2つ以上あったら、咳喘息の疑いがあります。

咳喘息診断のポイント

  • 咳が2~3週間以上続く。特に8週間以上続いている
  • 呼吸にヒューヒュー、ゼイゼイといった喘鳴が混じっていない
  • 喘鳴や呼吸困難を伴う喘息にかかっていない
  • 8週間以内に風邪にかかっていない
  • 胸部X線検査で異常が見つからない
  • 気道が刺激に対して過敏である
  • 気管支拡張剤が有効である
  • 何らかのアレルギー物質に反応して、咳が出る

咳喘息の痛みはどうすれば治る?

激しい咳が長引いている場合、気管支喘息と同じ治療方法がとられることがあります。「吸入ステロイド」「抗ロイコトリエン薬」「抗ヒスタミン剤」などの薬剤で気道の炎症を抑えます。

咳がひどく睡眠を妨げるなど日常生活に支障をきたす場合、「経口ステロイド」を短期間投与します。吸入ステロイドは、粉末状にしたステロイド剤を気道に直接作用させる薬です。すぐれた抗炎症作用を持ち、全身的な副作用のおそれが少ないのが特徴です。ステロイドの全身投与であらわれる副作用はほとんど出ませんので安心してください。風邪薬や抗生物質、咳止めを使用しても、咳喘息にはほぼ効果がありません

治療では吸入ステロイドの使用が一般的といえますが、治療期間は少なくとも3カ月とされています。咳が治まっても、炎症がしっかりと沈静化するまでには時間がかかります。

しかし、咳喘息は病歴や症状によって薬の種類や治療期間は変わります。少数ではありますが重症の場合は年単位での治療が必要となります。また咳喘息は再発が珍しくない病気のため、風邪や刺激によって症状が再びあらわれることもあります。医師としっかりコミュニケーションをとりながら治療を行いましょう。

おわりに:長引く咳は放置しない! 病歴や症状を正確に伝えましょう

なかなか治らない咳の原因は、咳喘息かもしれません。そのほか結核や肺がんの症状としても長引く咳が出ることがあります。まずは病院を受診することをおすすめしますが、正しく病気を診断するためにも、ご自身の病歴や症状がいつ始まったかなどをしっかりと医師に伝えてくださいね。

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