フレイル予防のため、食事や運動で気をつけたいことは?

2018/12/28

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

高齢化社会を迎えた日本では、いかにして老年期を健康的に過ごすかが大きな課題ですが、心と体の健康状態を示す「フレイル」という言葉をご存知でしょうか。この記事では、老年期のライフプランを考えるうえで知っておきたいフレイルについて解説します。

フレイル予防で食事と運動が重要な理由は?

建物が年数とともに雨漏りやひび割れを起こして少しずつ変わっていくように、人の体も急激に衰えるわけではありません。高齢者が介護を必要となる前段階として、体はすでに何らかの不調や支障をきたしており、そういった時点にある心と体の状態を「フレイル」と呼びます。フレイルは海外の老年医学の医療現場で使われてきた言葉で、日本語では「虚弱」と直訳されますが、日本老年医学会では次のように定義しています。

フレイルの定義
高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念。
(日本老年医学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」より)

つまり、加齢によって高齢期に突入し、必ずしも介助や支援が必要だとはいえないが、怪我や病気にかかりやすくなっている状態です。フレイルは、健康な状態と要介護の状態の中間に位置します。特に75歳以上では、フレイルを経て要介護状態へ移行する場合が多いと考えられています。以下の5項目のうち、3つ以上当てはまったらフレイルの可能性が高いでしょう。

フレイルの簡単チェック

  • 1年間で4.5kg以上の体重減少(病気や減量ではなく、普通に過ごしていながら)
  • 筋力の低下(買い物中にやや重い物を持ち運ぶのがつらいなど)
  • 日常生活の活動性低下(家で過ごすことが増えた、外出がおっくうなど)
  • 以前より疲れやすくなった
  • 歩くのが遅くなった

健康な状態からフレイルへと移行する場合もあります。さまざまな要因が影響し合い「フレイルティ・サイクル」という悪循環を作り出すことが多いのです。

フレイルティ・サイクルの一例

  1. 食欲が低下し、肉類をあまり食べなくなる
  2. 栄養状態が低下してサルコペニアを発症
  3. 筋力・体力が下がる
  4. 歩くのが遅くなる
  5. 活動レベルが下がる
  6. 基礎代謝がダウンし、エネルギー消費量も減る
  7. エネルギーを欲しないので、食欲が低下する
  8. 1~7を繰り返す

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量、筋力、身体機能の低下のことです。特に、サルコペニアによる下半身の筋肉量低下は、フレイルティ・サイクルを加速させるリスクがあります。サルコペニアとフレイルの予防は、食事療法と運動療法はセットで行いましょう。筋肉量を上げるためのトレーニングをしても、十分な栄養を摂取していなければ疲労を蓄積して怪我を招くおそれがあるためです。

フレイル予防に良い食事は?

フレイルは、予防すれば健康な状態に戻せる段階です。前の項目で「食事療法と運動療法はセット」と紹介しました。まずは食事で栄養状態を良好にすることから始めましょう。そのためには、骨や筋肉を丈夫にする栄養素を含む食品をバランスよく食べることが大切です。特に、エネルギーとたんぱく質が重要です。1日の理想的な摂取量は意識して達成するようにしましょう。ただし持病があり、食事療法を行っている人はかかりつけの医療機関に相談してください。

1日の食事量目安(70歳以上)「日本人の食事摂取基準(2015年版)より」

エネルギー(kcal)とたんぱく質(g)の理想量
  • 男性 2200kcal 60g
  • 女性 1750kcal 50g

毎日摂りたい栄養素

炭水化物
1日のエネルギー摂取量の50%を炭水化物(白米やパンなどの主食)で摂るのが理想的
たんぱく質
肉や魚、卵、乳製品、大豆製品など
カルシウム
牛乳、小魚、海藻、大豆や大豆製品、緑黄色野菜など
ビタミンD
魚、きのこ類、卵など。食事のほか日光浴をすることでも生成される
ビタミンE
魚介類、ナッツ類など
ビタミンC
緑黄色野菜、フルーツなど

運動でフレイルを予防しよう!

フレイルの原因のひとつは運動不足ですので、運動によって筋力など身体機能の向上を図ることができます。運動は苦手という人もチャレンジしやすいトレーニングを紹介します。

片足立ち(左右1分ずつを1日3回)

  1. テーブルやイスなどに手を置く(またはつかまる)
  2. 左右どちらかの足を上げる。足の裏が床につかない程度でOK
  3. ②の状態で1分間姿勢を保つ

スクワット(5~6回を1日3回)

  1. 足を肩幅より少し広めに開く(無理のない範囲で)
  2. イスに腰かけるイメージで、ゆっくりと膝を曲げる
  3. ひざは90度以上にならないように、曲げすぎない
  4. ゆっくりと膝を伸ばしていく

ペットボトルでダンベル体操

  1. 空の500mlペットボトルに水を入れる
  2. 肩の力を抜き、腕は体の横、肘は伸ばした状態にする
  3. 左右どちらかの手で①のペットボトルを持つ
  4. 肘を伸ばしたまま、ペットボトルを持った手を30度ほど真横に動かし、3秒静止
  5. ④の状態から30度ほど真後ろに動かし、3秒静止
  6. 力を抜いて元の位置に手を戻す
  7. もう片方も同様に繰り返す

また、フレイル予防には指や顔の体操も有効です。下半身など大きな筋肉を使う運動だけでなく、指や顔の体操にも取り組みましょう。

ぐーちょきぱー体操

ジャンケンで使う3つの指サインを力を込めて行います。

  1. 「ぐー」では握った指全てにぐっと力を入れ、そのまま3秒キープ
  2. 「ちょき」では人差し指と中指を伸ばし、ほかの指はぐっと力を入れたままにする
  3. 「ぱー」では伸ばした指と指の間をあけずぴったりとくっつけて力を入れる。その後、ゆっくりと力を抜く
  4. 慣れてきたら、輪ゴムを指に絡めて行い、筋肉をより刺激していく

あいうべ体操(1日に10セット×3回)

口の周りの筋肉や舌をしっかりと動かします。鼻呼吸を意識します。

  1. 「あー」と口を大きく開く
  2. 「いー」と口を大きく横に広げる。口角は上へ!
  3. 「うー」と唇をすぼめて前に突き出す
  4. 「べー」と舌を突き出し、下の方へ伸ばす

おわりに:運動と食事を組み合わせてフレイルを予防しましょう

フレイルは、予防次第でその後の健康状態を向上させることができる段階です。食事療法と運動療法を組み合わせ、ご自身に合う方法で予防や改善を行ってみてください。

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