記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
中性脂肪の数値を下げるために、コレステロール値を下げる薬が処方されることがあります。このときに処方される薬はどのような成分のものなのでしょうか。また、副作用はないのでしょうか。この記事で解説していきます。
血液検査の結果は、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の数値で表されます。LDLコレステロールと中性脂肪は、基準値より高い状態が異常とされます。しかし、HDLコレステロールについては、基準値より低いことが異常とされます。コレステロールは多すぎても少なすぎても異常とされ、何らかの異常がある状態を脂質異常症といいます。
中性脂肪は、体にとって悪さをするものではなく、本来は体を動かす際にエネルギーの元として使われています。肉の脂(あぶら)身など、食べ物から取り込む脂肪は、ほとんどが中性脂肪になります。そのため、中性脂肪の異常が指摘されたときには、食生活の見直しや適度な運動を行うことで数値の改善を期待できます。食事では、肉だけではなく、糖分の多いお菓子やジュース、アルコールの飲み過ぎはカロリーのとりすぎに繋がるため、控えることが必要でしょう。
しかし、食事療法や運動療法だけでは中性脂肪の改善がみられないことがあります。その際には、中性脂肪を減らす薬を用いた薬物療法を行うこともあります。中性脂肪を減らすための主な薬には次のような種類があります。
肝臓では中性脂肪の合成を減らします。また、脂肪を分解するための酵素(リパーゼ)の働きを高める薬です。
肝臓での中性脂肪の合成を抑制し、中性脂肪値を下げます。
血小板に作用して、血栓ができるのを予防するほか、中性脂肪を下げる作用があります。EPAは、サバやサンマ、イワシといった青魚に含まれる脂肪酸のひとつです。
我が国で認可されて処方や販売されている薬は、一定の基準にしたがって安全性が証明されている薬です。しかし、どのような薬も副作用について注意する必要があります。中性脂肪の薬には、それぞれ次のような副作用に注意が必要です。
頻度は1%程度とされますが、横紋筋融解の副作用が報告されています。薬剤を服用する際には、定期的に血液検査を受け、筋肉の以上の有無を確認することが必要です。また、自覚症状として、力が入らない、筋肉痛、尿の変色(ミオグロビン尿)などがみられたときも受診しましょう。
顔がほてるといった症状がみられることがあります。
極めてまれに、出血しやすくなることがあります。
中性脂肪を減らす薬は食事や運動療法を行いながら服用していくものです。薬に頼りすぎるのではなく、食生活の改善や適度な運動を行っていきましょう。
食事の摂取カロリーが多い人は減らすことが大切です。外食が多く、揚げ物や肉など油っぽい食事が多いという人は、野菜や青魚、大豆製品を食べるように心がけましょう。口がさみしいからと、お菓子やケーキ、ジュースといった糖分の多いものを食べすぎていないかも見直してみましょう。また、アルコールはできるだけ控え、禁煙をしましょう。
デスクワークが多く、スポーツなどの習慣がない人は意識して体を動かすことが大切です。理想としては、ウォーキングや水泳などの有酸素運動を1日30分程度継続することが望ましいとされます。なかなか習慣化できない人は、エレベーターを使わずに過ごしたり、車ではなく自転車や徒歩で移動したりするなど、できそうなことから始めてみましょう。
薬の効果を最大限に生かすためには、その薬に定められた回数や量を守って継続することが大切です。薬の効果が得られたように感じた、あるいは、効果が感じられないように感じたからといって、勝手に薬の量を変えたり、飲むことを止めたりしないようにしましょう。薬の効果がわからなくなるばかりか、思いもよらない体調不良や副作用を招くこともあります。
自己判断せずに、医師や薬剤師に相談してみましょう。また、飲み忘れた場合も2倍量や3倍量を一度に飲むことは危険です。たとえ飲み忘れたとしても、次のタイミングでは1回量を飲むようにしましょう。
中性脂肪は、体を動かすためのエネルギーとして使われたり、体温を一定に保つためには必要なものです。しかし、中性脂肪が増えすぎると、心臓や脳など命に関わる疾患や、糖尿病のような慢性疾患のリスクを高めます。
過剰な中性脂肪は、中性脂肪を減らす作用のある薬を飲むことで改善する余地がありますが、あくまでも食生活の見直しや運動を一緒に行っていくことが前提となります。薬には副作用もありますから、自己判断はせず、医師や薬剤師に相談しながら服用をしましょう。
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