記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
慢性胃炎の状態が長く続くと、萎縮性胃炎と呼ばれる状態になります。萎縮性胃炎になると胃潰瘍や胃がんになるリスクが高くなるといわれています。この記事では、慢性胃炎や萎縮性胃炎について解説したあと、どうすれば萎縮性胃炎が治るのかを解説していきます。
慢性胃炎は、長期的に続いている胃の粘膜の炎症です。今までその原因は、普通の胃炎のときと同じように暴飲暴食やアルコール、カフェイン、喫煙、ストレスによる胃の負担が原因だと考えられてきましたが、最近はピロリ菌の長期感染が重要な要因であることがわかっています。このように、ピロリ菌が原因で起こる慢性胃炎を「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」と呼びます。
胃の内部は胃酸によって強い酸性に傾いており、多くの菌はその中で生き残ることができません。しかしピロリ菌は、その強い酸性の胃液の中でも生き残ることができます。感染すると胃の粘膜に住みつき、胃炎の原因となる有害な物質を作り出します。しかも長い年月を経ると胃炎の範囲は広がり、やがては胃がんのような深刻な胃の病気にもつながります。
慢性胃炎は長く続くと、「萎縮性胃炎」へと発展していきます。慢性的な胃炎で胃の粘膜が壊れたり、収縮したりを繰り返えすと、胃酸を分泌する組織が減少して粘膜がやせて萎縮してしまうのです。胃壁が薄くなり、粘膜の下の血管が透けて見える「血管透見像」や、胃の粘膜が腸の粘膜のように変化する「腸上皮化生」という症状が現れてきます。
こうなると、胃液が十分に分泌されなくなり、食べ物の消化が追い付かなくなるため、慢性的な胃もたれや食欲不振に悩まされてしまうのです。ここまで荒れてしまうともはやピロリ菌も生息することができず、今までピロリ菌の反応が陽性だったものも陰性になります。胃がんの発生リスクが非常に高いという、極めて危険な状態です。
萎縮性胃炎の疑いがある場合、まずは検査を受けてしっかりと診断をすることが大切です。行われる検査としては、主に胃カメラによる検査、そしてピロリ菌の有無を調べる検査や、胃粘膜の萎縮の程度について調べる検査などがあります。
ピロリ菌の感染が原因であれば、まずはその除菌を行う必要が出てきます。抗生物質や胃酸を抑える薬を1週間内服し、期間を空けてから再検査して菌の有無を確かめます。そうすれば胃の粘膜の炎症が改善され、胃潰瘍や胃がんが発生する可能性も低下させることができるでしょう。
しかし、たとえピロリ菌を除菌できたとしても、一度炎症や萎縮をおこしている胃が回復するのには時間がかかります。そのため、定期的に胃カメラなどの検査を受け、胃がんなどが発生していないかチェックを行うことがとても大切です。
萎縮性胃炎は、慢性的な胃炎によって胃酸を分泌する組織が減少し、粘膜がやせて萎縮してしまう病気です。現在では、この病気の原因はピロリ菌の感染にあると考えられています。もしも萎縮性胃炎の疑いがある場合、まずは検査を受けて胃カメラで胃が荒れた状態であることや、ピロリ菌の有無を確かめます。そして除菌薬によってピロリ菌を除菌することから治療が始まるでしょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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