記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
最近、「フレイル」という言葉に注目が集まっていることをご存知でしょうか?フレイルとは加齢に伴い身体機能や認知機能が低下して、身体的、精神的、社会的な障害を起こしやすくなった状態のことです。
今回はフレイルと腎臓病・透析治療の関係などを詳しくご紹介いたします。
フレイルとは、加齢に伴って身体機能や認知機能などが低下してしまい、日常生活に障害が起きたり、病気にかかりやすくなったりする状態のことです。また、健康状態と機能障害の間の「移行状態」のことであり、要介護の手前状態ともいえます。加齢と共に誰もがなる可能性はありますが、特に腎臓病患者さんはフレイルになりやすいので注意が必要です。
高齢者が腎臓病を起こすと、フレイルになりやすいと分かっています。実際、日本の高齢者を対象とした疫学調査によれば、「慢性腎臓病(CKD)を起こした場合、非CKD高齢者よりも2年以内に要介護になるリスクが1.44倍高い」と分かっています。特にCKDステージG3bからフレイルになりやすく、フレイル患者さんは末期腎不全になりやすいとされています。
腎臓病治療では、腎臓に負担を減らするために、たんぱく質などの制限を行うことがあります。しかし、それによって筋肉量が減ってしまい、フレイルになりやすいというのが一因として考えられます。また、腎臓病に伴う身体活動量の減少なども、フレイルの要因として挙げることができます。
さらに腎性骨異栄養症などの骨機能の低下も原因の一つです。
腎臓病が進行した結果、末期腎不全を起こした場合は、血液透析治療などが必要になります。このような血液透析患者さんのフレイル率は高く、「3人に1人程度の割合」でフレイルであることが確認されています。
また、国外のデータにはなりますが、「透析患者が40歳を超えると、半数以上がフレイルになっている」という報告もあります。少し詳しい数字を紹介すると、「40歳未満は44.1%」ですが、「40~50歳は61.1%」、「50~60歳は66.4%」、「60~70歳は74.2%」となっており、透析患者さんの場合も加齢と共にフレイルの確率が高くなるということが分かります。
末期腎不全の治療法の一つに、腎移植があります。腎移植患者さんの場合は、移植前後でフレイルの割合に変化がみられます。実際、移植前のフレイル率は19.8%ですが、移植1カ月後には33.0%にまで増加し、移植3カ月後には17.2%まで減少しています。なお、移植前にフレイルになっている場合は、「移植後の腎臓の機能回復は遅い」とされています。
フレイルのことをより詳しく理解したい方は、ロコモ(ロコモティブシンドローム)やサルコペニアなどについても知っておくと良いと思います。まずはこれらの意味をご紹介します。
このようにロコモやサルコペニアは「身体面に注目した言葉」となっています。つまり、関係性で言えば、「身体的フレイルの1つにロコモがあり、ロコモの中にサルコペニアがある」となっています。それでは、「こういった状態と透析患者さんの関係」について見てみましょう。
腎臓病を起こし、食事制限や透析治療などが必要になると、それに伴って筋肉量の減少が生じます。つまり、サルコペニアが引き起こされた状態です。このように透析患者さんにサルコペニアが起こると、嚥下機能も衰えてしまい、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
仮に誤嚥性肺炎を起こしてしまうと、治療のために安静・絶食などが必要になります。このことは更なる身体活動量の減少を意味するため、よりサルコペニアを進行させることにも繋がります。言い換えれば、身体的フレイルを進行させることにもなってしまうのです。
フレイルは要介護の手前状態ではあるものの、適切な治療や支援などによって生活機能を維持・向上できる状態とも言えます。そのため、日頃の健康管理に気をつけることが重要です。もしフレイルが心配であれば、一度、かかりつけ医などに健康相談をしてみるのもオススメです。
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