記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
心筋マーカーとは、血液検査の一種です。この記事では心筋マーカーとは血中のどのような成分について検査するものなのか、心筋マーカーによって何がわかるのかについて解説します。
心筋マーカーとは心筋梗塞などの虚血性心疾患の診断に使われる血液検査のことです。心筋梗塞が起こった際に、病変の程度や範囲の診断ができます。
これらの心疾患では心筋細胞膜が壊されてしまうため、血中に「心筋逸脱酵素」と呼ばれる酵素が流出し、血中濃度が高まります。さらに心筋細胞の壊死が起こると筋原線維が分解され、血中に流出する逸脱酵素の種類が増えます。そこで、これらの酵素の血中濃度を調べることで、虚血性心疾患の有無を調べることができます。
心臓に栄養や酸素を送っている冠動脈の血液が何らかの原因で流れにくくなったり、流れる量が少なくなった場合、心臓の筋肉に十分な栄養や酸素が行き渡らなくなり、虚血状態となり心筋細胞が壊死してしまった状態です。
心筋梗塞の診断を行うには心電図も有効ですが、心筋梗塞の範囲や部位によっては心電図にわずかな変化しかあらわれず、異常を発見できない場合があります。また、心電図にあらわれる異常は発生から長く残るものもあるため、再発の場合は現在進行中の病変なのか、過去に起こった病変なのかの判断がつかないことがあります。
こういった特徴から、診断には心電図よりも心筋マーカーの方が有用とされています。ただし、心筋マーカーは心筋梗塞が発症してからの経過時間によって、それぞれの酵素のピーク時間が異なります。そのため、心筋梗塞の病期によって検査を使い分ける必要があります。
心筋マーカーは、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患、心筋症、心不全など心臓の筋肉に何らかのダメージが加わっていることが考えられる際に行われます。
具体的には次のような症状が見られる際に検査が検討されます。
また、心電図検査などで異常が見られた際にも心筋に異常がないか評価するために心筋マーカーが行われることがあります。
心筋梗塞によって血中に流れ出す心筋逸脱酵素には、CPK・CPK-MB、ミオグロビン、H-FABP、トロポニンT、ミオシン軽鎖Iがあります。心筋の細胞膜が壊れた状態では「CPK・CPK-MB、ミオグロビン、H-FABP、トロポニンT」が逸脱しますが、その後心筋細胞が壊死すると、「トロポニンT、ミオシン軽鎖I」が逸脱します。
各酵素の詳細は、以下のようになっています。
これらの酵素の血中濃度のピークは、心筋梗塞が発症した後の経過時間によって変化します。
その他、再梗塞の診断にはH-FAMP、ミオグロビン、CPK-MBを使用します。心筋マーカーでは心筋梗塞の範囲を推測することもでき、梗塞量や重症度の判定にはトロポニンTやミオシン軽鎖Iを使用します。壊死の範囲が広ければ値が高くなり、治療で効果が見られれば値は低下します。
心筋マーカーとは、心筋梗塞など虚血性心疾患が発症したときに病変の程度や範囲を診断するために使われる血液検査です。心筋マーカーはこれらの逸脱酵素の濃度を測定します。酵素の濃度は経過時間によって変わりますので、時間や症状によって心筋マーカーを使い分ける必要があります。
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