悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍って、何が違うの!?

2017/11/14 記事改定日: 2018/11/29
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

日本人の死因の第1位を占める「悪性腫瘍(がん)」。誰もが知っている病名ですが、そもそも悪性腫瘍とはどういうものなのでしょうか?良性腫瘍との違いや治療法などと併せて解説していきます。

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悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍の違い

体の組織や細胞が過剰に増殖することでできる塊のことを腫瘍といいます。この腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、一般的にがんと呼ばれているのは悪性腫瘍の方です。

腫瘍は良性であっても悪性であっても、細胞でできているものである以上は自然と増殖していきます。しかし、良性腫瘍は発生した場所のみで比較的緩やかに増殖していくのに対し、悪性腫瘍は急速に増殖がすすみ、発生場所とは別の所に転移することもしばしばある点が大きな違いです。

また、良性腫瘍はある程度時間が経つと成長が止まりますが、悪性腫瘍の細胞の増殖は無制限にすすみます。
体に取り込んだ栄養の多くは悪性の腫瘍細胞によって使われるようになるため、患者の体はだんだん消耗していき、やがて栄養失調に陥り、体重が減少してすっかり弱った状態になります。

このような状態になることはがん悪液質と呼ばれており、悪性腫瘍の末期にみられる症状の一つです。腫瘍が良性であるうちは悪液質になることはありませんが、良性の腫瘍が悪性になるとこのような状態に陥る可能性があります。

悪性腫瘍の種類

悪性腫瘍を大きく分類すると、造血器のがん、上皮組織にできるがん、肉腫の3つのタイプにまとめることができます。

まず造血器のがんとは、血液を構成している白血球や赤血球、血小板をつくるもととなる造血幹細胞と、これが分化する過程の中でできる細胞が悪性化して腫瘍となったものを指します。代表的な疾病には、白血病、骨髄腫、悪性リンパ腫があります。

上皮組織にできるがんとは、体の各器官の表面や、体腔の内側を覆っている上皮組織内の細胞が悪性化し、成長して腫瘍となったもので、胃がんや肺がん、大腸がん、食道がん、咽頭がんなど、通常がんと呼ばれている疾病の大半がここに分類されます。

肉腫は、上皮組織以外の場所にできる悪性腫瘍全般を指しており、非上皮性腫瘍とも呼ばれます。非上皮性組織には骨や脂肪、筋肉、血管、リンパ管などがあります。肉腫もがんと同様に、腫瘍ができた組織に応じて病名がつき、骨にできた場合は骨肉腫、脂肪細胞が由来であれば脂肪肉腫と呼ばれます。

良性と悪性はどうやって判断するの?

腫瘍が良性か悪性かを区別するには、腫瘍の組織を採取して染色などを行い、顕微鏡で観察する「病理検査」が必要になります。

腫瘍がレントゲンやCT、MRIなどの画像検査や内視鏡検査などによって発見されます。しかし、これらの検査はあくまでも「腫瘍が存在する」ことは分かったとしても、良性か悪性かを見分けることはできません。

このため、腫瘍が発見された場合には、皮膚から針を腫瘍に刺して組織を採取したり、内視鏡を用いて採取し、病理検査を行う必要があるのです。また、腫瘍が大きく、何らかの症状がある場合にはまず手術によって腫瘍を切除し、術後に病理検査が行われることもあります。

悪性腫瘍の治療法

体内に悪性腫瘍ができた場合に行われる治療は、外科手術、薬物療法、放射線療法の3つが代表的です。

外科手術

治療法のなかでも有効性が高いといわれているのが外科手術で、実際にがん患者の多数が治療の過程で手術を経験しています。

腫瘍が良性であれば、変性部位を切除すれば良いのですが、際限なく成長し、転移もする特徴をもつ悪性腫瘍の場合は、腫瘍ができている部分だけでなく、その周辺の組織も一緒に切除されることがあります。
また必要に応じて、他の部位の組織や細胞を移植したり、人工の骨や関節を入れるなど、切除した部位を再建するための手術も行われることがあります。

薬物療法

薬物療法とは、抗がん剤を投与することによって悪性腫瘍の広がりを抑制する治療法です。抗がん剤として投与される薬剤にはたくさんの種類がありますが、今日では単独で投与されることはほとんどなく、がんの種類に応じて複数の薬剤が併用されます。

放射線療法

放射線療法は、腫瘍が生じている部分に放射線を照射し、発生する高熱によって細胞を死滅させる治療法です。患者にかかる負担は少なく、臓器の形や機能を維持したまま完治を目指すことができる治療法です。

治療が必要な良性腫瘍の条件とは?

良性腫瘍は、悪性腫瘍のように周辺の組織を浸潤しながら急激に大きくなったり、他部位に転移することはありません。このため、腫瘍の大きさが小さく、特に症状がない場合は治療をせずに定期的な検査で経過観察をするのが一般的です。

一方、良性腫瘍であっても腫瘍のサイズが大きく、何らかの不快な症状がある場合や将来的に悪性化する可能性がある場合は、原則として手術による切除が必要になります。

おわりに:腫瘍の種類は悪性良性だけじゃない。悪性腫瘍のなかでも種類は治療法はさまざま

以上、悪性腫瘍(がん)の基礎知識のまとめでした。一言で「悪性腫瘍」といっても、種類も治療法もさまざまなものがあります。
いずれにしても、適切な検査を受け、その結果にあわせた治療を受ける必要がありますので、気になるふくらみやしこり、健診で腫瘍やポリープの疑いがあるといわれたときは、すぐに病院で検査してもらいましょう。

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