記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/9 記事改定日: 2018/8/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
空腹時血糖値は、糖尿病の診断基準のひとつであり、糖尿病予備軍であるかどうかの判断基準にもなるものです。空腹時血糖値が高い場合に考えられる原因や、空腹時血糖値を下げる方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
空腹時血糖値とは、少量の水を除いて飲食を10時間以上していない状態で計測された血糖値のことです。空腹時血糖値には基準値が設けられており、糖尿病にかかっているかどうかの診断に用いられ、糖尿病予備軍の指針にもなります。
空腹時血糖値の正常値は99mg/dlまでではあり、100-109mg/dlにあたる人はかつて「正常高値」とされ、正常範囲内の中でも通常より高めの状態を指していました。現在は、100-109mg/dlにあたる人は軽度異常とみなされます。なお、空腹時血糖値が126mg/dL以上であれば「糖尿病型」と呼ばれる血糖値にあたりますが、空腹時血糖値の値だけですぐに糖尿病であると診断されるわけではありません。
なお、血糖値には、測り方によって「随時血糖値」「OGTT (経口糖負荷試験)2時間値(1時間値)」など種類があり、最も血糖値が低くなるタイミングで計測されるのが空腹時血糖値です。
健康な人であればインスリンというホルモンの働きによって糖代謝が正常に行われるため、血糖値は食後次第に下がり、一定に保たれます。しかし、何らかの要因でインスリンが不足したり機能しなくなったりすると、血糖値は上昇してしまうのです。インスリンの働きを悪くする原因には、以下のようなことが考えられます。
インスリンの働きに悪影響を及ぼす物質が脂肪から分泌されます。
食事の摂り方や栄養バランスが良くない、大食いや早食い、甘い物の摂り過ぎ、炭水化物の摂り過ぎにより、インスリンが不足が起こる場合があります。
お酒に含まれる糖質は血糖値を上げる要因のひとつです。
喫煙によって長時間インスリンの働きが悪くなるため、血糖値が上がります。
運動をしないとブドウ糖を消費できないだけでなく、肥満にもつながります。
ストレスを溜め込んでいることで分泌されるホルモンが血糖値を上げるように作用します。
糖尿病になりやすい体質は遺伝する可能性があり、生活習慣の乱れなども重なって血糖値が上がりやすくなるといわれています。
糖尿病発症の確率を少しでも抑えるためには、生活習慣の改善をはかることが大切です。実際に空腹時血糖値が高い場合には、専門医の指導の下で食事療法や運動療法が行われます。
ごはん・パン・めん類などの炭水化物や、魚類・大豆製品・卵・肉類などの良質なたんぱく質、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、野菜、きのこ、こんにゃく、海藻、果物など、様々な食材をバランスよく含む食事を摂るようにしましょう。
朝食、昼食、夕食を規則正しく食べ、ゆっくりよくかみ、食べ過ぎないように心がけることも大切です。また、夜遅くや寝る前は食べないようにし、お酒の飲み過ぎも避けるようにしてください。
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動や、足・腰・背中などの大きい筋肉を中心とした全身の筋力トレーニングを行いましょう。週3回~毎日、20~60分程度で、ややきついと感じるくらいが適当とされています。
健康診断を定期的に受けており、血糖値が常に正常だからと安心する人も多いでしょう。しかし、近年このような健康診断などで血糖値が正常でも実は糖尿病を発症している「隠れ糖尿病」患者が増えています。
一般的な健康診断や病院での採血検査は朝食を食べない状態で午前中に行い、空腹時の値を見ることが多いです。この検査で得られる血糖値は「空腹時血糖」です。
しかし、糖尿病の発症初期では空腹時の血糖値は正常に維持されているものの、食後の血糖が中々下がらないのが特徴です。空腹時の血糖値も高い場合は、ある程度進行した糖尿病であると考えられます。つまり、健康診断などの採血検査では初期の糖尿病が見逃されることがあるのです。
健康診断で血糖値が正常な人でも糖尿病のリスクはありますので、規則正しい食生活や運動習慣を身につけ、親や兄弟などに糖尿病患者がいる場合には定期的に食後の血糖値や、過去一か月の血糖値の状態を反映するHba1c値などの検査を受けるようにしましょう。
空腹時血糖値には生活習慣が関わっています。糖尿病の発症をできるだけ避けるためにも、規則正しい時間に栄養バランスの整った食事を摂ったり、日々の生活に適度な運動を取り入れたりするなど、生活習慣の改善を心がけましょう。
ただし、空腹時血糖値が正常でも、隠れ糖尿病を患っている可能性があるので、空腹時血糖値の数値に限らず、生活習慣を見直し、糖尿病の発症リスクを減らすように努めてください。
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