記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/20 記事改定日: 2018/10/30
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日常的にスプレーやお手拭きなどで「アルコール除菌」をすることがあるかと思いますが、インフルエンザにはこのアルコールでの消毒は有効なのでしょうか?インフルエンザの正しい予防法について解説します。
インフルエンザは、飛沫(ひまつ)感染と呼ばれる経路で感染します。感染している人がくしゃみや咳をしたり、声を出したりするとウイルスが吐き出されます。この空気中に飛び出したウイルスを他人が吸い込んで感染することを飛沫感染といいます。
また、インフルエンザに感染している人に触れる接触感染というルートもあります。接触感染は、鼻水や唾液などがついている家具などに触れた手で、口や鼻、眼に触れるといった間接的なものでも感染の可能性があります。ウイルスは、体内に入ると数日の間はしずかに増えて、突然症状をあらわすのです。
ウイルスは、その構造で2種類に分けられます。具体的には、表面にエンベロープという膜があるものと、ないものがあるのですが、このエンベロープを持つタイプのウイルスはアルコールに弱いという特徴があります。インフルエンザウイルスはエンベロープを持つウイルスのため、アルコールを用いた予防が有効といえます。
インフルエンザウイルスは70%以上の濃度のアルコールで消毒することができます。このほかにも、ハイターなどの塩素性消毒液、ヨードホールなどのヨウ素系消毒液も効果的です。
このように、インフルエンザウイルスは市販されている一般的な消毒液で消毒することが可能です。様々なタイプの消毒液が市販されていますが、エタノールやイソプロパノールのようなアルコールを主体とするものを選び、手指消毒には肌になじみのいいジェルタイプのもの、物やドアノブ、スイッチなどを消毒するにはスプレータイプのものがお勧めです。
アルコールスプレーは飛沫が空気中に飛び散りますが、基本的には接触面にしか除菌効果を発揮しません。つまり、空気中に散布したとしても空気中に漂うインフルエンザウイルスを除菌することはできないのです。
また、アルコールスプレーは刺激性が強く、無意味に空気中に散布すると目やのどの痛みを引き起こすことがあります。使用するときは、ものやドアノブ、デッキスイッチなどに吹きかけ、乾燥するのを待つか、ある程度乾燥してからふき取るようにしましょう。
空気中に漂うインフルエンザウイルスは適度な加湿や換気を行うことで除去することができます。近年では、吊り下げるだけでインフルエンザウイルスを除菌できると謳う商品もありますが、厚生労働省からそのような商品には有効性はないとの注意喚起も出ています。ウイルスの活性を弱め、室内から除去するためには加湿・換気をこまめに行いましょう。
インフルエンザウイルスを予防するために、まず基本となるのは手洗いとうがいです。インフルエンザウイルスの感染要因の多くは、手に付着したウイルスが鼻や口、そして目の粘膜から体内に入ってしまうことです。そのため、手に付着したウイルスを洗い流すことと、弱らせることが大切です。手洗いやうがいをこまめに行うことや、アルコールを含んだ手指消毒剤の使用、身の回りの拭き掃除などが予防に繋がるでしょう。
また、マスクは正しく使用することで感染の予防に繋がります。残念ながら、ウイルスそのものは直径0.1マイクロメートルと極めて小さいため、症状のない人はマスクをしただけではウイルスの侵入を防ぐことは難しいといわれています。また、ウイルスは鼻や口だけではなく、眼からも侵入します。
しかし、インフルエンザの症状がある人がマスクをすることで、くしゃみや唾液が飛び散ることを防ぎ、感染の拡大を防ぐことに繋がります。もし自分が感染してしまっても周りに広げないのは大切なことです。
うがいや手洗いは、インフルエンザウイルスが体内に入り込む前の予防方法です。一方で、体内に入ったウイルスの働きをおさえようとする方法が予防接種です。インフルエンザウイルスは体内に入って数日は静かに増えて、突然症状があらわれます。この突然症状が現れることを「発病」といい、インフルエンザワクチンの目的は発病を防ぐことです。
現在用いられているインフルエンザワクチンは、接種したからといって100%発病を防げるとは限りませんが、たとえ発病しても肺炎や脳炎などの重篤な合併症を防ぐという大きな役割があります。予防接種はすぐに効果が発揮されるわけではなく、その効果も数ヶ月です。そのため、流行時期に効果が発揮できるように、流行する少し前に接種する必要があります。かかりつけの医師や、接種を予定する医療機関で時期を相談しておくと良いでしょう。
インフルエンザは非常に強い感染力を持っており、家庭や学校、職場などで感染が広がれば、日常生活にも支障がでます。また、基礎疾患がある人や高齢者では、命に関わる合併症を併発することもあります。自分や家族の感染を防ぐことはもちろん、周囲に感染を拡大させないための予防方法が大切です。手洗いやうがいなど、ふだんの生活で気軽に取り組めることから始め、流行期には予防接種を受けるようにしましょう。
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