記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/8/29
記事監修医師
前田 裕斗 先生
不妊治療をいざ行おうと思っても、原因不明と診断された場合、「治療は行えるの?」と不安になってしまうこともあるでしょう。
では、原因不明の不妊症でも子供を授かるにはどうしたらいいのでしょうか?また、その治療方法や性交の確率はどうなっているのでしょうか?原因不明の不妊症について、解説します。
不妊治療を受ける場合、まず初めに検査を受けます。検査でわかる不妊の原因は、大きく分けて以下の5つです。
検査でわかる不妊原因のうち、排卵因子・卵管因子、そして男性不妊因子の3つは不妊症と診断された人の中でも見つかる頻度の高い因子であり、不妊の3大原因とされています。
ところが、不妊症と診断された人のうち、これらの検査で原因のわからない人は約30%ほどいます。原因不明とは、本当に原因がないわけではなく、現在の検査方法では見つけることのできない原因が潜んでいるのだと考えられます。
つまり、何らかの原因で卵子と精子が出会えていない、または受精しても着床していない、着床しても妊娠を維持することができない、などの状態です。精子あるいは卵子そのものの受精させる・する力が少なくなっている、などの原因も考えられます。
精子あるいは卵子そのものの受精させる・する力は、加齢によって減っていくことが示唆されています。それは、原因不明の不妊症は夫婦の年齢が高くなれば高くなるほど多くなることからもわかります。
女性の場合、卵子の受精する力は概ね37歳〜44歳の間のどこかで消失すると考えられており、失われたその力を戻すことは、現在の医療技術では不可能です。そのため、不妊治療の開始は早くから行うことが妊娠への近道なのです。
原因不明の不妊症を治療する場合、まず手軽で費用面でも体の面でも負担の少ないタイミング法から徐々にステップアップしていくことになります。種類やステップアップという治療法について、詳しく見ていきます。
不妊治療の種類は、大きく分けて3つの段階に分けられます。
タイミング法は、卵子の排卵するタイミングに合わせて性行為をする治療法です。卵胞の大きさや血中のホルモン値を測定して排卵の時期を正確に予測するので、受精の確率を上げることができます。タイミングを合わせて性行為を行う以外は自然妊娠と同様に精子の注入・受精が行われるため、最も自然に近い治療法です。
人工授精は、卵子の排卵するタイミングを予測するところまではタイミング法と同じです。排卵の2日前〜当日に夫婦で来院し、男性は採精をします。採精した精子を洗浄・調整し、専用の管を使って女性の子宮内に戻します。その後の受精は自然に任せるため、タイミング法の次は人工授精に進むのが一般的です。
体外受精は、前述の2つとは大きく異なります。体外受精とは、排卵から受精、着床直前までの状態を培養液の中で慎重に管理しながら行う治療法です。
女性は月経周期に合わせ、排卵誘発剤を使ってたくさんの卵胞を育て、男性は採卵日に合わせて採精を行います。そして、採取した卵子と精子を培養液の中で受精させ、ある程度の大きさまで育ててから子宮に戻します。
日本の不妊治療では、できるだけ自然に近い治療法で行うことが推奨されるため、まずタイミング法から行われるのが一般的です。特に原因不明不妊の場合、自然に妊娠できる可能性もあるため、タイミング法から順に試していきます。
タイミング法で半年=6周期ほど経過しても妊娠しない場合、人工授精に切り替えます。人工授精でやはり6周期ほど経過しても妊娠しなければ、体外受精に切り替えます。こうして、徐々に費用や体の面での負担の小さいものから大きいものへと順に治療を行っていくのがステップアップと呼ばれる治療法です。
しかし、女性の年齢が既に高く、40代を超える場合はこの限りではありません。一般的にタイミング法や人工授精では妊娠が難しいと考えられるため、初めから体外受精を選択することも少なくありません。
体外受精の成功率は、年齢によって変わります。2015年の日本産婦人科学会のデータでは、以下のような結果が報告されています。
このことからも、初めの章でお話した「精子あるいは卵子そのものの受精させる・する力は、加齢によって減っていく」ということがわかります。このことから「開始する年齢が若ければ若いほど、妊娠率は高くなる」と言うこともできるでしょう。
原因不明の不妊症だからといって、治療できないということはありません。明らかな不妊原因はわからなくとも、タイミング法から順番にステップアップしていけば、子供を授かる可能性は十分にあります。
しかし、夫婦の年齢が高齢の場合は精子や卵子の受精させる・する力が減少していますので、例外的に体外受精から始めることもあります。いずれの場合も、自分に合った治療法を医師とよく話し合い、納得して治療を受けましょう。
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