記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
がんはさまざまな臓器に転移する可能性がありますが、肝臓に転移した場合、どんな治療をしていくことになるのでしょうか。肝がんの種類と併せ、解説していきます。
肝臓で生じる肝がんには、がん細胞がどこで生まれているかによって2種類あります。ひとつは、肝臓の細胞が悪性腫瘍(がん)化して生じる原発性肝がんです。一方、他の臓器で生じたがん細胞が肝臓に移動してきて起こるものがあり、この他の臓器のがん細胞が移動してくる肝臓がんを転移性肝がんと呼びます。
転移性肝がんは、原発性のものよりも多くみられます。他の臓器でできたがん細胞が血液やリンパ液に乗って肝臓にたどり着き、肝がんとなるのです。
転移性肝がんは、どこの臓器のがんが由来になってもおかしくはありません。一般的には胃や大腸、膵臓といった消化器で起こったがんや、乳がん、肺がん、頭や首、口の中など頭頸部のがん、子宮や卵巣といった婦人科のがん、腎がんなどによる転移が多くあるといわれています。
肝臓の中心部にある太い静脈を門脈(もんみゃく)といいます。門脈は、腸や脾臓(ひぞう)を循環した栄養が豊富な血液を、肝臓に取り込んでいる血管です。つまり、消化器系で生じたがん細胞も門脈を通って肝臓にたどり着くことが可能です。特に大腸がんは肝臓に転移しやすく、大腸がんと診断されたときにすでに肝臓に転移している人もいます。
転移性肝がんの治療は、肝がんの病巣が手術によって切除可能な範囲であるといったときに手術が選択されます。ただし、転移前の原発巣のがんがどこであるか、肝臓以外の臓器への転移があるか、全身状態は落ち着いているか、など複数の視点で手術の可能性が検討されます。がんの大きさや数だけではなく、切除した後に正常な組織を残すことができるかが大切になります。
手術の適応について納得ができないようであれば、他の医療機関でセカンドオピニオンを受けてみても良いでしょう。
また、治療開始時は手術が難しい状態でも、薬物療法(化学療法)を用いてがんが小さく変化するのを待ち、外科的な治療の可能性を探っていくこともあります。肝臓は再生能力が高い臓器のため、一度の手術だけですべてのがんが取り切れないときにも、薬物療法を継続しながら再手術を行うという方法がとられることもあるでしょう。外科的な手術だけ、薬物療法だけといった治療ではなく、患者さんの症状に併せて複数の治療を組み合わせていきます。
肝がんでは、肝臓の細胞が原因となるものだけではなく、他の臓器で起こったがんが移動して起こる転移性肝がんも少なくはありません。特に肝臓に近い消化器系が原発巣のがんは、肝転移が生じやすくなっています。転移性肝がんの治療は、原因となった臓器のがん治療を土台として手術と化学療法を組み合わせて、症状の経過をみながら進められます。患者さんの状態にあわせて複数の視点で検討されていきますので、わからないことがあれば納得いくまで説明してもらい、前向きに治療を続けていきましょう。
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