記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
脳に損傷を受けたことが原因で、以前と比べて脳機能が低下または変化してしまう高次脳機能障害。身近な人が発症した場合には、どう対応すべきなのでしょうか。今回は、いざというときのために知っておきたい、高次脳機能障害の方への接し方について、わかりやすく解説していきます。
事故やケガ、脳梗塞やくも膜下出血などの病気が原因で脳が損傷を受け、脳機能の低下や受傷以前に見られなかった言動をするようになる状態を、高次脳機能障害と言います。
症状は大きく記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害の4つに分けられますが、どれが現れるかは損傷した脳の部位によって大きく変わってきます。
高次脳機能障害が原因で現れる症状の具体例として、以下が挙げられます。
高次脳機能障害になると、以前の患者本人を知る人にとっては理解できない言動が、たびたび見られるようになります。以下に、高次脳機能障害の人に多い行動パターンの変化と、それに対して周囲の人が抱きがちな疑問・印象の例をまとめます。また、高次脳機能障害の人とこのようなトラブルが起こる背景や、適切な対処法についてもご紹介しますので、参考にしてください。
こんなときは
聴覚が過敏になり、注意力散漫と感情コントロール障害が起きていると考えられます。本人の注意が散らないよう、静かな部屋で作業をさせるなどしましょう。
こんなときは
本人が想定していた内容と違う返答に対応できなくなったことをきっかけに、感情と行動をコントロールすることができなくなったと考えられます。まず本人の意見を聞いてから、「話していい?」と発言のタイミングを予告したうえで話すようにしましょう。
こんなときは
遂行機能障害で行動の基準をうまく設定できず、不安で繰り返し質問しています。口頭で伝えるだけでなく、大きな紙に予定を書き込むなどしてあげてください。
こんなときは
遂行機能障害からうまく行動できず、これがストレスとなってちょっとした言葉尻から感情がコントロールできなくなり、怒りを爆発させていると考えられます。まずはストレスの原因を探り、その解決方法から本人と模索しましょう。
こんなときは
言語能力が低下したために、会話に内容の処理が追い付いていません。言葉だけでなく、文字や絵、図などで可視化して指示を伝えてあげましょう。
こんなときは
言語能力低下と遂行機能障害で、何をどのようにメモすべきか判断できない、また話しながら書くという行動が難しい状態と考えられます。作業内容を覚えるよりも、まずメモを書き確認する習慣を身につけるようサポートしてあげましょう。
こんなときは
行動と感情のコントロールが効かず、周囲の状況を推測したり他者の視点に立つことができないため、自分の基準に固執して行動していると考えられます。周囲の人が高次脳機能障害による症状であることを考慮して接するのと同時に、本人の感情がコントロールできなくなりそうな環境から離れられるよう配慮してあげてください。
こんなときは
遂行機能障害のため、臨機応変な対応が難しい状況であると考えられます。こうした事態は、適度に休憩して疲れを溜めないことである程度予防できるので、こまめな休憩を促すとともに急な予定変更を避けてください。
高次脳機能障害は、損傷によって脳の構造が変わってしまった状態です。このため発症後は、以前の患者を知る周囲の人が戸惑い、理解に苦しむような言動をとるようになることもよくあります。そんなときはこの記事を参考に、周囲が相手が高次脳機能障害であることを理解して割り切り、相手に伝わる・意思疎通のとれるコミュニケーションの方法を模索してあげてください。
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