記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
「なんとなく食欲がわかない…」といったことは、おそらく誰もが経験したことがあるでしょう。原因にはさまざまな場合があり、放置しない方が良いこともあります。今回は、食欲不振の原因や対策などをご紹介します。
食欲不振になると、「食事をとる気がしない」「お腹が空かない」「食べたくても食べられない」といった症状がみられます。また、食欲不振は胃腸が弱いといわれる日本人に現れやすいことも特徴のひとつです。食べ過ぎることが主な原因とされていますが、数日以上も悩まされるようであれば、思わぬ病気が隠れている可能性もあります。
日常生活の中で食欲不振となる主な原因は、以下のようなものが考えられます。
ストレスによって交感神経が過度に刺激され、消化吸収を促す副交感神経のはたらきが抑えられることによって食欲が低下することがあります。
運動不足が慢性化し、エネルギーが消費されにくくなることが食欲不振を招く一因といわれています。また一般的に年を重ねると家族や親しい友人と死別する機会が増えることにより、食欲不振がみられることもあります。
過度のアルコール摂取は肝臓に負担がかかり、解毒作用の低下がみられ、倦怠感や吐き気などを引き起こすことがあります。また胃など他の臓器のはたらきも低下し、食欲不振などに陥る場合もあります。
睡眠不足や昼夜逆転の生活などにより、自律神経が上手くはたらかなくなることが知られています。食欲は自律神経である副交感神経が活発になることで促されるため、生活習慣が乱れることは食欲不振を招くことにつながります。
抗がん剤や抗生物質、鎮痛剤など、さまざまな種類の薬の副作用によって食欲不振になる場合があります。
胃腸や膵臓などに潰瘍などがみられる場合、食欲不振となることがあります。また消化器以外の臓器に悪性腫瘍がある場合や精神的な病気などがみられるときにも、食欲不振を引き起こすことがあります。
食欲不振を引き起こす病気には、主に以下のようなものがあります。
風邪のウイルスを体から排除するはたらきによって、免疫機能が活発になることで発熱や倦怠感、頭痛や鼻づまりなどの症状が現れることがあります。また同時に消化機能が低下することにより、食欲がわかなくなる場合もあります。
胃痛や胃もたれ、吐き気などの症状が慢性的に起こり、消化機能や胃の蠕動運動が低下して食欲不振になることがあります。場合によっては、胃潰瘍になることもあります。原因の8割はピロリ菌感染によるものと考えられていますが、慢性的なストレスや薬の副作用により引き起こされることもあります。
胃や十二指腸の粘膜がひどく傷つき、痛みや吐血、食欲不振などを起こすといわれています。若年層は十二指腸潰瘍、中年以降は胃潰瘍を発症するケースが多いと考えられ、原因は慢性胃炎と同様に、ピロリ菌やストレス、薬の影響などがあります。
甲状腺から分泌されるホルモンによって、体の生命活動を維持しています。この甲状腺ホルモンの分泌が低下することで、疲労感やまぶたの腫れ、また多汗や食欲不振など、体のあらゆる器官に症状がみられます。
脳に必要なエネルギーが枯渇し、食欲や睡眠欲などの低下、気分の落ち込みなどがみられ、自分の力では回復することが困難な状態のことをいいます。体がだるい、食欲不振など、心身両面に症状がみられると考えられています。
ほとんどの場合、初期では自覚症状がみられず、食欲不振や吐き気などが現れたころには病気自体が進行している場合が多いといわれています。さらに症状が進むことで胃粘膜が傷つき、黒褐色の吐血などもみられることがあります。
塩分過多の食生活やピロリ菌が主な原因とされています。60歳以上になるとがん発症率が増加するため、体重減少があり、食欲不振がみられる場合には注意が必要です。
規則正しい生活を心掛け、できるだけ毎日同じ時間帯に食事をとるようにする、無理のない範囲で体を動かすなどして運動不足を解消しましょう。また過度なストレスを抱えている場合には、趣味などを通して気分転換をすることもひとつの方法です。
食欲がないときは、自分が食べやすいと感じるものや、消化のよいといわれるうどんや赤身の多い肉、ヨーグルトなどを取り入れると良いでしょう。
食べ過ぎなどで食欲がわかないなどの場合、市販の胃腸薬を服用することも良いかもしれません。ただし、購入の際には薬剤師へ相談をし、症状に応じた薬を選んでもらいましょう。また市販薬でも症状が改善されない場合には、医療機関を受診することをおすすめします。内科や消化器科などに足を運んでみましょう。
ストレスにより食欲不振になることもあれば、思わぬ病気によって引き起こされている場合も考えられます。症状が長引く場合は、医療機関を受診しましょう。
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