記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/9/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
リモートワークやテレワークの導入で、肥満や体調不良などの健康問題が増えているといわれています。今回は、リモートワークで健康問題が起こる原因と対処法について解説します。
リモートワークという業務形態は、今後さらに拡がっていくことが予想されます。業務効率化にも役立つ対策なので、ぜひ参考にしてください。
新型コロナウイルス流行の影響によるリモートワーク、テレワークの普及は働き方改革を促進し、企業側には業務効率化と経費削減、労働者側にはワークライフバランスの充実といった、新たな価値を創出しました。
その一方で、リモートワークやテレワークが日常化することで、健康問題や体調不良を抱える人が増え始めているといわれています。
リモートワークによる健康問題や体調不良のおもな原因は、運動不足、栄養バランスの悪化、生活習慣の乱れ、同僚や同居家族とのコミュニケーション問題が関係していると考えられています。これらは、以下のような体調不良や病気のリスク上昇などの健康問題を引き起こします。
リモートワークの日常化で通勤の必要がなくなったことで、歩く時間が大幅に減少した人が増えたといわれています。また、おうち時間をトレーニングやエクササイズに充てる人が増えた反面、出不精になり、動画鑑賞やゲームなど「体を動かさない趣味」に没頭する人も増えています。これらが原因で運動不足になり、肥満に悩む人も増えているようです。
また、好きなものを好きなタイミングで食べられるようになったことで、間食が増えた、高カロリーの食品を食べる機会が増えた、栄養が偏った食事になったなどの食生活の乱れも、リモートワークによる肥満の増加の原因と考えられます。
そのほか、孤独感や慣れない業務のストレスから飲酒量が増えた、生活リズムをうまく整えられず生活が不規則になったことなども、肥満の原因になり得ます。
リモートワーク、テレワークへの移行が急激に進んだため、自宅の業務環境の整備が間に合わなかったケースもあったようです。この影響で、無理な姿勢、悪い姿勢で業務を長時間続けたことが、肩こりや腰痛の原因のひとつになったと考えられます。
また、気分転換で外出できない、座りっぱなしの時間が増加した、運動量が減少した、ストレスが増加したことなども肩こりや腰痛の原因になり得ます。
ストレスや生活習慣の乱れなどによる自律神経の不調、運動不足による基礎代謝の低下は、冷えの原因になります。リモートワークになってから冷えの症状がひどくなったという人は、ストレスチェックや運動習慣の見直しをしたほうがいいかもしれません。
また、寒い時期や季節の変わり目は、足元がとくに冷えやすいです。自宅のエアコンの風向きや部屋の躯体が原因で部屋が暖まりにくくなっていたり、底冷えしやすくなっていたりすると、冷えの症状が悪化する可能性があります。
生活習慣病とは、生活習慣が発症の原因となる病気の総称です。おもな生活習慣病には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)、動脈硬化などがあり、がん、脳血管疾患、心疾患のような命に関わる病気も生活習慣病の一種です。
生活習慣病のリスク要因には、肥満、食生活の乱れ、運動不足、タバコの煙、過度の飲酒、睡眠の問題、ストレスなどがありますが、どれもリモートワークへの移行で発生し得るものです。
リモートワークへの移行により、業務内容や勤怠管理方法が大きく変わった人もいます。業務環境の急激な変化は、心身に大きな負担をかけることがあり、心の不調やうつなどの原因になることがあります。
また、孤独を感じやすい人や対面でのコミュニケーションができないことをストレスに感じる人にとっては、リモートワークは大きな負担になり得ます。この状況が続けば、負担はどんどん蓄積して、心の不調を引き起こしやすくなります。
「リモートワークのほうが集中して作業ができるし、ストレスも感じない」という人は、長時間休憩無しで集中して作業を続けてしまう「過集中」が起こりやすいです。
過集中の状態が何度も起こると、知らないうちに心身の疲労が限界までたまってしまい、電池が切れたように突然活動ができなくなってしまうことがあります。
また、心の不調は、生活習慣の乱れや運動不足、座りっぱなしの状況が原因になることもあります。リモートワークへの移行で食事や睡眠、生活のリズムが大きく変わった人、運動量が減った人、座っている時間が増えたことなども、うつなどの心の不調の原因になることがあります。
リモートワークが原因で起こる健康問題と体調不良を改善するには、業務時間中の対策と業務時間外の対策が必要です。
リモートワークの業務時間中にできる対策としては、スケジュール・タスクの管理、コミュニケーションの工夫、食事・間食の見直し、運動の工夫が挙げられます。
リモートワークによる健康問題や体調不良は、うまくスケジュール管理ができていないことが原因になることもあります。
きちんと昼休み(食事休憩)をとることはもちろんですが、60分〜90分おきに立って体を動かす、体操やストレッチをする、小休止するなどして、心身をリフレッシュすることが大切です。休憩時間がもったいないように感じるかもしれませんが、一般的には、心身が疲れたまま作業を続けるより、適度にリフレッシュしたほうが作業効率は上がりやすいです。
「リモートワークになってから業務をうまく進められなくなって苦痛に感じている」という人は、業務開始前に1日のタスクを整理して、リスト化しましょう。リスト化することでタスクの優先順位をつけやすくなり、業務を効率化しやすくなります。
ひとり暮らしの人は、リモートワークへの移行で社会との関わりが少なくなると、とくに孤独感を感じやすいといわれています。チャットツールをうまく活用して、こまめに意見交換を行いましょう。雑談用のチャンネルを作っておくと、アイスブレイクや心のリフレッシュにつながりやすいのでおすすめです。ただし、メリハリをつけるためにも、運用のルールをきちんと設定してください。
チャットツールを使ったテキストでのコミュニケーションが苦手な人は、ビデオミーティングをうまく活用しましょう。また、ビデオミーティングを使ったオンライン飲み会や昼食会などのイベントも、円滑なコミュニケーションに役立つことがあります。
ただし、チャットツール、ビデオミーティング、オンライン飲み会などにはそれぞれメリットとデメリットがあり、好き嫌いや得意不得意などの個人差も出てきます。良かれと思ってとった対策が、かえって心身の負担の原因になってしまうことがあるので注意しましょう。
人事部や上司など、マネージメントに携わる人は、社内のコミュニケーションがうまくいっているかきちんと確認するようにしてください。
リモートワークに移行して自炊の回数が増えたという人もいますが、一方で、宅配サービスの利用が増えたという声もあります。
宅配サービスが悪いわけではありませんが、宅配サービスばかり利用していると、摂取カロリー量、塩分量、脂質量などが多くなりやすく、自分の好みのメニューに偏りやすいです。
このような傾向は、誰も見ていないひとり暮らしのリモートワークでは、宅配サービス、外食、テイクアウト、自炊のすべてで起こる可能性があります。野菜多めのメニューにするなど、健康に気をつかったメニューを意識して選ぶようにしてください。デザートや間食の量も増えやすいので、甘いものが好きな人はとくに気をつけましょう。
運動不足は、健康問題や体調不良の原因のひとつです。リモートワークは、オフィスに出勤したときよりもPC作業などの座りっぱなしの業務が増える傾向があります。上記でもお伝えしましたが、定期的に立ち上がる、体操するなどして、体を動かすようにしましょう。休憩中に散歩をすることは気分転換にもなるのでおすすめです。
リモートワークにおすすめの運動もありますので、うまくスケジュールに組み込んでください。また、マネージメントの立場にいる人は、定期的に運動できるように、社内ルールなどを整えてあげましょう。
業務時間外にできる対策としては、食事・飲酒の管理、睡眠の工夫、運動・趣味の工夫、病院の受診などが挙げられます。
業務中の対策の延長になりますが、野菜多めのメニューにする、脂質の多い食品や砂糖をたくさん使った食品を控えるなどして、健康に気をつかったメニューを選ぶようにしてください。ついつい食べすぎてしまうという人は、カロリー表示のあるメニュー表を作ってみましょう。
また、「自宅飲み」はタガが外れやすく、飲酒量が増えやすいです。休肝日を作る、「1日缶ビール1本まで」というように飲酒量を設定するなどして、飲みすぎを防ぎましょう。
通勤時間がなくなったことで睡眠時間が確保しやすくなったという声がある反面、夜ふかしが増えて睡眠時間が減った、睡眠のリズムが崩れたといった声もあります。
睡眠の問題にはさまざまな原因がありますが、寝る前にPCやスマートフォンを使用することは睡眠障害の原因になり得ます。たとえば、夜遅くVODでドラマや映画を見たら止まらなくなった、寝る前にやり残した仕事を片付けたことなどが、睡眠時間の減少や睡眠のリズムの乱れにつながっている場合があります。
睡眠の問題は複数の原因が絡みあって起こっていることも多く、ひとつの対策だけで解決することが難しい場合もありますが、思い当たる原因をひとつずつ洗い出し、できることから改善していきましょう。
また、何事もメリハリが大切です。家庭の時間やプライベートな時間には仕事を持ち込まない、ドラマや映画、ゲームを楽しむ時間をきちんと決めるなどして、睡眠をとりやすい生活リズムになるように工夫してください。
リモートワークは運動不足になりやすいので、運動は積極的に行いましょう。フィットネスジムなどの運動施設に通いにくくなった人もいるでしょうが、最近はオンラインフィットネスのサービスも充実していますし、室内で簡単にできる有酸素運動もあります。1日20分〜60分、週に3日〜4日程度を目安に有酸素運動をする習慣を作りましょう。
また、趣味に没頭したり、趣味の習い事やサークルでコミュニケーションを楽しんだりすることは、心の健康にも役立ちます。コロナ禍の影響で趣味の習い事ができなくなった人もいると思いますが、新しい生活様式の影響で始めやすくなった趣味もあります。ピークタイムを避ける、オンラインサービスやオンラインサロンを利用するなどして、自分にあう趣味を楽しみましょう。
感染が怖い、会社の近くの病院に通っていたが自宅の近くにどんな病院があるかわからない、ちょっとした症状で病院を受診すると迷惑がかかりそうなどの理由から、病院に行きづらいと感じている人もいるようです。
感染の状況を考慮する気持ちは大切ですが、自分自身の健康状態に不安がある、すでに何らかの症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。最近は、電話診療やオンライン診療の対応が可能な病院も増えています。直接病院に行くことに抵抗がある場合は、まずは電話診療やオンライン診療で相談することもひとつの手段です。
心の不調は、はっきりとした症状が出ないことも多く、知らないうちに進行して治療が長期に及ぶケースも少なくありません。ちょっとした気持ちの変化や行動の変化は、うつなどの心の不調のサインの可能性もあります。ご自身はもちろん、周囲の人も変化に気をつけるようにしてください。
また、生活習慣病も自覚症状がなく進行していきます。コロナ禍の影響で健診や人間ドックを受けられず、前回の検査から時間が経ってしまったという人は、早めに検査を受けるようにしましょう。
かかりつけ医やかかりつけ薬剤師などを作っておくと、病気や治療、健康管理についての相談をしやすくなるのでおすすめです。
リモートワークによる健康問題や体調不良の多くは、運動不足や食生活の乱れ、コミュニケーションの問題、ストレスなどが原因です。食事内容や運動習慣を見直し、夜ふかししないようにするなどして、生活習慣を整えましょう。職場の上司に、リモートワークでも働きやすい環境作りやルール設定を相談することで解決する場合もあります。
コロナ禍の影響で病院を受診しにくいと感じている人が増えているようですが、どのような不調も早期治療が大切です。気になる症状や変化があるときは、早めに病院を受診しましょう。オンライン診療、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師の利用もおすすめです。
この記事の続きはこちら