記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
糖尿病予備軍をご存知でしょうか。名前からどのようなものかイメージはできると思いますが、詳しい定義はご存知ないかもしれませんね。
今回は、そんな糖尿病予備軍の解説をしていきます。糖尿病へ発展させないための予防対策も紹介しているので参考にしてください。
糖尿病予備軍とは、血液検査上は糖尿病の診断基準に当てはまらないものの、血糖値や HbA1cが正常値よりもやや高い状態のことをいいます。
診断基準に則ると、糖尿病と診断されることはありません。しかし、体内ではインスリンの分泌低下や作用低下が徐々に進行しており、放置すると将来的に糖尿病を発症する可能性が高いと考えられます。
また、正常よりも多くの糖分が血液に流れているため、長い時間をかけて血管内側の壁を傷つけ、動脈硬化などを引き起こすことが考えられます。その結果、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な合併症を生じる危険性が出てきます。
糖尿病予備軍の段階では、目立った自覚症状はありませんが、健康診断などで「血糖値が高め」と指摘されたことがある人は、食生活や運動習慣などの生活習慣を見直してみましょう。
糖尿病を診断するにはいくつか方法がありますが、診断の確定には通常2回またはそれ以上の検査が必要になります。ただし、医師が血糖値が非常に高いと判断した場合、または1つの陽性検査に加えて高血糖症状がある場合は、2回目の検査を受けずに糖尿病と診断されることがあります。
具体的な検査方法は以下の通りです。
HbA1c検査は血液中のHbA1c値(ヘモグロビン・エーワンシー値)を調べる検査です。
ヘモグロビン・エーワンシー値とは、赤血球中のヘモグロビンのうちどれくらいの割合が糖と結合しているかを示す検査値です。
診断のために過去2~3ヶ月の平均血糖値を測定しますが、検査のために事前の食事を制限したり、当日何かを飲むなどの必要はありません。
HbA1c値が5.7%未満であれば通常、5.7%~6.4%であれば糖尿病予備軍、6.5%以上であれば糖尿病であると診断されてます。
このテストでは空腹時の血糖値をチェックします。判断試験前に少なくとも8時間以上は水以外の飲食を避ける必要があるので、テストは朝食の前や朝一番に行われることが多いです。
糖尿病は空腹時血糖が126mg / dl以上とされています。
ちなみに、通常から予備軍までの血糖値は以下のとおりです。
まず、検査当日の朝まで10時間以上絶食した空腹のまま採血して血糖値を測ります。
次に、ブドウ糖液(ブドウ糖75gを水に溶かしたもの、またはデンプン分解産物相当量)を飲みます。
ブドウ糖の摂取から30分、1時間、2時間後に採血して血糖値を測ります。
75gOGTTで2時間値200mg/dL以上が測定された場合、「糖尿病型」と診断されます。
(※自覚症状などから明らかな高血糖が考えられる場合に75gOGTTを行うと、さらに高血糖を引き起こすリスクがあるため、この検査は行いません)
上記の3つの検査のうち、いずれかの血糖値に異常があれば「糖尿病型」と診断されます。
糖尿病予備軍を示す結果をわかりやすく示すと、以下のとおりです。
糖尿病予備軍には明確な症状はないので、自分が糖尿病予備軍であるかどうか気づかないことも少なくありません。実際に、糖尿病の検査を受けているときに糖尿病予備軍であることを知るというケースがほとんどです。
糖尿病予備群と診断されても「まだ糖尿病になったわけじゃないから、今は食生活の改善や運動は必要ない」と思っている人がいるかもしれません。
しかし、体内ではすでに〈血糖値を下げる働きがあるインスリンが出にくくなったり、効きづらくなったりする〉などの変化が起き始めていることが多いといわれています。
また、血糖値が高い状態が続くことで全身の血管がダメージを受けやすくなり、それによって血管の老化である動脈硬化になるリスクが高くなります。そうすると結果的に心臓や脳血管の病気になりやすくなる危険性があります。
糖尿病予備軍であることが判明したら、1年~2年ごとに1回は2型糖尿病検査を受けるようにしてください。
以下のようなポイントに注意して生活習慣を改善することで、糖尿病予備軍の人が糖尿病を発症するリスクを減らすことができます。
糖尿病を発症すると様々な合併症が起こる可能性が高いです。
できるだけ早いうちに診断を受けて、糖尿病予備軍にならないようあるいは糖尿病に発展しないように、生活習慣を見なおしてください。
また、糖尿病と診断された場合は、できるだけ早く治療を始めて、血糖コントロールを徹底し合併症を発症させないように努めましょう。
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