ネフローゼ症候群の治療法は症状によって違う?どんな薬を使うの?

2018/9/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ネフローゼ症候群の治療法はどのようなものがあるのでしょうか?また、どのような薬を使用するのでしょうか?ネフローゼ症候群の治療方法について解説していきます。

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ネフローゼ症候群は原因によって治療法が異なるの?

ネフローゼ症候群とは、1日の蛋白尿が3.5g以上あり、血清のアルブミンという蛋白質が3.0g/dl以下の状態(成人の場合)のことです。

ネフローゼ症候群の原因となる病気にはさまざまなものがありますが、慢性糸球体腎炎により発症する場合が最も多く、そのうち糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群が近年増加傾向にあります。

治療法は、ネフローゼ症候群の原因によりそれぞれ異なり、特に慢性糸球体腎炎と糖尿病性腎炎ではかなり異なる治療を行います。

治療目標

ネフローゼ症候群の治療方法はその原因により異なりますが、いずれの場合もむくみの改善を目的として行います。微小変化型ネフローゼ症候群では尿蛋白の改善を目的としますが、他の疾患の場合では必ずしも最重要視するわけではありません。

また、抵抗力を発揮させるために必要な免疫グロブリンなどのタンパク質が尿中に排出されることから、著しく抵抗力の低下が見られるため(易感染症)、原因疾患を問わず治療目標を達成するまでは入院が必要であるとされています。

慢性糸球体腎炎によるネフローゼ症候群の治療で用いられるステロイド薬や免疫抑制薬などの使用も、抵抗力低下を引き起こすため、軽い感染症などでも命に関わる事態になる恐れがあります。

ネフローゼ症候群の治療ではどんな薬が使われるの?

微小変化型ネフローゼ症候群に見られる尿蛋白は、副腎皮質ステロイドホルモン(プレドニン®など)を使用することで改善される場合が多いとされていますが、再発することも少なくないため使用する際は注意が必要となります。

慢性糸球体腎炎(膜性腎症や巣状球体硬化症など)で見られる尿蛋白は、ステロイド剤の使用のみでは改善されないことが多いため、ステロイド静注パルス療法、シクロスポリン製剤(ネオーラル)などの併用を行い、また効果があまり見られない場合は、エンドキサン®、イムラン®、ブレデイニン®などの免疫抑制剤の併用を行います。それらを行っても効果が見られない場合は、難治性ネフローゼ症候群と呼ばれる状態で、治療は困難な傾向にあります。

その他の薬剤

ネフローゼ症候群になると体内の血液の凝固が起こりやすくなるため、心筋梗塞脳梗塞、静脈血栓症などの血管の詰まりを引き起こす病気になりやすくなります。そのため、抗血小板薬や抗凝固薬などが使用されることがあります。

高血圧が見られる場合は、レニン―アンジオテンシン系阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬が使用されます。
また、ネフローゼ症候群でよく見られる血中コレステロールの上昇がある場合は、動脈硬化を引き起こす可能性があるため、コレステロールを低下させる作用のある薬を使用します。

新しい治療薬「リツキサン®」とは?

新たに日本でネフローゼ症候群に対する薬として承認された「リツキサン®」は、体内の特定の物質に反応をして効果を発揮する生物学的製剤と呼ばれるもので、白血球の一種であるBリンパ球を認識して破壊する作用により効果を得られる薬剤です。
ネフローゼ症候群に対する治療効果が高いとされており、今後の治療への貢献に期待されています。

ネフローゼ症候群治療中に、日常生活で気をつけることは?

適度の安静

必要となる安静の程度を判断する際には、負荷腎機能検査などで尿蛋白や腎機能の変動などを参考に行いますが、最も重要な生活制限は、毎日をコンスタントに(一定で変わらない)生活することだとされています。

適度の運動

病状によっても異なりますが、基本的に慢性糸球体腎炎を患っていても運動を全く行えないということはありません。ただし、競争するスポーツ、長時間行うスポーツ、団体で行うスポーツ、高温下や寒冷下で行うスポーツなどは避けるようにしましょう。
また、学校で体育を行う場合も激しい運動でなければ行うことができますが、クラブ活動で行うスポーツは避けるようにしましょう。

趣味

体をあまり使わない文化的趣味を見つけて気分転換をすることも大切です。
また、軽い運動をすることも可能ですが、疲れたときは無理せずに休憩するようにしましょう。

家事

基本的に家事は普段通りに行うことができますが、忙しいときや疲れているときなどは家族に協力してもらうようにしましょう。

保温

体が冷えると腎臓の血管収縮や血行不良が起こるため、衣類や暖房器具などを使用して冷えすぎないようにしましょう。また、夏でもエアコンの温度調整をこまめに行いましょう。

お酒、タバコ

アルコールの過剰摂取は腎臓に負担がかかるため、適量を心がけましょう。
また、酒の肴などは塩分の高いものが多いため、食べ過ぎないように気をつけましょう。

薬、健康食品

服用している市販薬や、普段使用している健康食品などがある場合は、事前に担当の医師に伝えておくようにしましょう。
また、新たに他の医療機関で投薬などを行う場合も、患っている腎臓病や治療の有無などを伝えるようにしましょう。

妊娠・出産

腎臓病を患っている人は、妊娠高血圧症候群になる確率が高いとされています。妊娠を希望する場合は、妊娠や出産の準備をする前に、薬の使用について医師と相談する必要があります。
ただし、クレアチンクリアランスが70ml/分(正常:100ml/分)以下の腎臓機能低下が見られる場合は、妊娠・出産が難しいとされています。

風邪などの感染症

風邪などの軽い感染症でも、腎炎の悪化や再発が起こる確率が高いとされているため、普段から規則正しい生活を心がけ、予防することが必要となります。十分な睡眠、疲労回復、栄養バランスのとれた食生活、人込みを避ける、外出後は必ず手洗いうがいをする、などをきちんと行うようにしましょう。

おわりに:ネフローゼ症候群の治療ではむくみの解消を目標とします

ネフローゼ症候群の治療方法はその原因により異なりますが、いずれの場合もむくみの改善を目的として行います。また、著しく抵抗力の低下が見られるため、治療目標を達成するまでは入院が必要であるとされています。

治療では主に副腎皮質ステロイドホルモン、免疫抑制剤などが使用されますが、最近ではリツキサンなどの新薬も導入されています。むくみで悩んでいるなど、気になる症状がある場合は一度医療機関で診てもらいましょう。

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