天気の変化でめまいや頭痛が起こる「気象病」。発症のメカニズムと治す方法は?

2020/9/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

季節の変わり目や天気の悪い日、低気圧の日に体調不良に見舞われた経験はありませんか。このような体調不良は「気象病」が原因かもしれません。
ここでは「気象病」の症状の特徴や原因、なりやすい人の特徴、対処法についてわかりやすく解説していきます。天候の変化で体調が崩れてしまう人は参考にしてください。

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気象病とは?どんな症状が特徴なの?

天気が悪いときや気圧が安定しないときなどに以下のような症状が現れ、病院で診てもらうと気象病や天気病と診断されることがあります。

気象病で見られる症状
  • めまい
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 肩や首のこり
  • 関節痛
  • 古傷の痛み
  • 布団から起き上がれないほどの全身倦怠感
  • 手足のしびれ
  • 血圧が上下する、動悸がする
  • イライラして気持ちが落ち着ない
  • 不安な気持ちになる
  • 目のかゆみ、鼻水などアレルギー症状 など

頭痛やめまい、肩こり、関節痛、古傷の痛みなどは気象病の代表的な症状です。また、めまいや痛みのようなはっきりとした症状が現れず、倦怠感や気持ちの変化などの症状しか現れないこともあります。

気象病は病気というよりは天気の変化がきっかけで起こる諸症状のことであり、正式な医学的な診断名ではありませんが、近年認知が広がりつつあり、専門外来を設けている医療機関が増えていることから注目を集めています。

気象病の原因は?天気の変化で頭痛やめまいが起こるのはなぜ?

気象病のメカニズムははっきりと解明されていませんが、気圧や気温、湿度などが大きく変化することによる自律神経の乱れが原因と考えられています。
このなかでも、気圧の変化が症状の発現に大きく関わっているとされ、以下の時期は発症する人や悪化する人が増えるといわれています。

  • 梅雨前線上を低気圧が横断する「梅雨」
  • 巨大な低気圧の塊である台風が多く発生する「夏から初秋」にかけて

低気圧や天候の変化が片頭痛メニエール病の発症と関係していることから、気象病との関係性が指摘されています。

気象病と内耳器官の関係

内耳とは、外から入ってきた音を聴覚神経に伝える役目を担い、平衡感覚を司る器官です。
平衡感覚とはいわゆる「バランス感覚」のことで、体勢やバランスの変化で起こる「三半規管」に満たされたリンパの変化が、前庭神経を介して脳に伝わることでコントールされています。

佐藤純教授の研究によりマウスの内耳前庭器官に気圧を感知する部位・機能があることがわかっていることから、人間にも同様の機能がある可能性が考えられさらなる研究が進められています。
このような「気圧のセンサー」が感知した大きな気圧の変化の情報が、平衡感覚の誤作動や自律神経のバランスの乱れを引き起こし、頭痛やめまい、関節痛、気分の落ち込みなどの気象病の症状を引き起こすのではないかと考えられています。

▼ 中部大学の研究活動 気圧の変化を感じる場所が内耳にあった ―気象病や天気痛の治療法応用に期待― (佐藤純教授らの共同研究グループ)

気象病になりやすい人の特徴は?

気象病は気圧の変化がおもな原因とされていることから、どのような人も発症する可能性があります。しかし、近年の研究では、もともとの体質や個人の特性により「なりやすい人」と「なりにくい人」がいることがわかってきました。
以下の項目に該当するものが多い場合は、気象病になりやすい可能性があるので注意しましょう。

  • 乗り物酔いをしやすい
  • 新幹線や飛行機に乗ると耳が痛くなる
  • 過去に大きなケガをした箇所が、ときどき痛む
  • 天候の変化や季節の変わり目に体調不良になったり、気分が落ち込むことがある
  • 几帳面な性格で、ストレスを感じやすい
  • 片頭痛持ちで、定期的に頭痛に見舞われる
  • 姿勢が悪く、無意識のうちに前かがみになりがち

気象病はどうやって治せばいいの?

気象病の治療では、各症状に対する対症療法と自律神経を整える治療が中心になり、痛みに対しては鎮痛薬、めまいや自律神経の不調に対しては抗めまい薬や漢方薬などが処方されます。
市販薬で対処する人もいるようですが、適切な薬を使用しないと症状が悪化することもありますし、薬物乱用頭痛などを引き起こすことがあるので注意が必要です。

また、めまい、頭痛、首や肩のこりは熱中症の初期段階にも見られる症状でもあります。気象病が起こりやすい梅雨や夏から秋にかけては熱中症が心配な季節でもありますし、他の病気が似た症状を引き起こしている可能性もあります。
気になる症状があるときは内科や耳鼻咽喉科、気象病外来に相談しましょう。

気象病のセルフケア

気象病はまだはっきりしていないことが多く根本的な治療方法は見つかっていませんが、自律神経を整えることで発症をある程度抑えられることがあります。自律神経を整えるためには、以下のようなセルフケアがおすすめです。

  • 食事は3食規則正しく食べ、栄養バランスの整ったメニューにする
  • 1日6時間以上の睡眠時間を確保する
  • 質の良い睡眠をとれるように、睡眠環境を整える
  • 就寝前のスマホの使用、カフェインやアルコールの摂取は控える
  • ヨガやストレッチ、マッサージ、入浴などで適度にリラックスする(片頭痛が起こっているときは悪化することがあるので注意)
  • 体調が良いとき、天候が安定しているときに適度な運動をする
  • ストレスがたまらないように、こまめにストレスケアを行う

関連記事:台風がくると、モーレツな頭痛に襲われるのはなぜ? 対処法は?

おわりに:気象病はおもな原因は低気圧。自律神経のケアで改善することも。

めまいや頭痛、肩こりなどを引き起こす気象病は、気圧の変化をはじめとする天気の変化が原因と考えられています。発症のメカニズムが完全に解明されたわけではありませんので根本的な解決は難しいですが、専門外来が増えてきていることもあり対応できることは増えてきているといわれています。

自律神経を整えることである程度抑えられるといわれていますが、めまいや頭痛は、気象病以外が原因のこともありますので、何度も繰り返す場合や日常生活に支障があるほどの症状があるときは早めに医師に相談しましょう。

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