記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/7 記事改定日: 2020/8/17
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
消化管は食道、胃、腸など口から始まり肛門で終わる臓器のことです。この消化管のどこかで血が出ることを、消化管出血といいます。
この記事では、消化管出血を引き起こす原因疾患と、出血する場所や原因による症状の違いについて解説していきます。
消化管は、食物を摂取し消化吸収した後に排泄するための臓器です。
消化管出血とはこれらの臓器から出血することで、口から血を吐く吐血、肛門から排泄される下血の症状が現れます。
出血の原因は以下のように多岐に渡り、出血する部位や原因よって出血量、様態、持続期間なども変わります。
口に近い上部消化管である食道や胃、十二指腸から短時間に多量に出血すると、口から血を吐くことがあります。
吐血の色は、血が胃にとどまっている時間が長いほど胃酸に消化されて黒色がかり、胃にとどまる時間が短いほど鮮やかな赤色に近くなります。
代表的な原因としては、胃や十二指腸の潰瘍が挙げられます。これはヘリコバクターピロリ菌への感染や、他の病気の治療のためアスピリンをはじめとする消炎鎮痛剤、血液をさらさらにしたり固まりにくくする抗血栓薬の使用などが主な要因です。
また慢性肝臓病を患っている人の場合は、食道や胃の静脈瘤の破裂による出血などが原因になることもあります。
上部消化管からの出血量が少量の場合は、吐血としてあらわれることはまれであり、便に血が混じることが多くなります。
消化の影響を受けたことで「墨のような黒色」をしていることが多く、コールタールに似ているためタール便と呼ばれます。
胃や十二指腸の潰瘍、胃がんなどが原因になります。
小腸や大腸から出血すると、便に血が混じります。
血の色は出血の部位と量に応じて変化し、排泄までに時間がかかる小腸の出血はより黒色に近く、排泄まで時間が短い大腸の出血はより赤色に近くなるといわれています。
大腸の出血原因としては、加齢により形成される大腸壁の異常である大腸憩室、大腸ポリープや大腸がんなど、腫瘍からの出血が考えられます。
小腸は長さが3mほどあり、上部消化管や大腸に比べると小腸からの出血は少ないと考えられています。
出血部位や出血量によって症状は異なり、潰瘍や腫瘍、血管異形成と呼ばれる粘膜血管のわずかな異常が、出血の原因の一例として挙げられます。また近年は、消炎鎮痛剤や抗血栓薬を原因とする小腸の潰瘍による出血も増加しているといわれています。
消化管出血は体の深部からの出血のため少量の出血では気づきにくく、また自分で止血措置を施すことができません。
一度に大量出血をきたすと重篤な状態になりかねず、緊急に内視鏡や手術による治療が必要となります。治療方法は原因疾患によって異なるため、速やかに原因を特定することが重要です。
はっきりした吐血や下血がない場合でも、食道や胃、腸からじわじわと出血を生じている場合、貧血症状が見られることがあります。
このような消化管出血による貧血は徐々に進行していくため、貧血症状に気づかないことも少なくありません。
しかし、以前に比べて疲れやすくなった、動くと息切れや動悸がする、立ちくらみやめまいが生じやすくなったなどの症状がある時は注意が必要です。また、黒っぽい便が出たり、「アッカンベー」をして下まぶたが白っぽい場合は消化管出血による貧血が生じている可能性があるので注意しましょう。
気になる症状がある場合は早めに病院を受診して、検査・治療を受けるようにしてください。
消化管出血が疑われるような症状があるときは、次のような検査が行われます。
貧血や炎症の有無などを調べるために血液検査が行われます。また、同時に「CEA」や「CA19-9」など消化管のがんの腫瘍マーカーの数値を調べることもあります。
便の中に血液が含まれているか調べる検査です。通常であれば、便には血液が含まれないため、便潜血検査が陽性の場合は消化管のどこかで出血している可能性が高いと考えます。
口・鼻や肛門から内視鏡を挿入し、内部の状態を詳しく調べる検査です。胃や十二指腸からの出血が疑われる場合は上部内視鏡検査(胃カメラ)、大腸の出血が疑われるときは下部内視鏡検査(大腸カメラ)が行われます。
また、近年ではカプセル型の内視鏡検査も普及しており、通常の内視鏡では観察できない小腸内の出血の有無も調べることができるようになっています。
なお、通常は血液検査や便潜血検査を行った後に内視鏡検査が行われますが、明らかな吐血や下血が見られる場合は緊急で内視鏡検査が実施されることとなります。
出血の原因の多くは腹痛などの自覚症状がなく、出血により初めて病気に気づくことが珍しくありません。便潜血検査といった検診の機会を大切にすると共に、普段から便の色をよく観察し、早期に異常を発見して病院で適切な検査を受けることが大事です。
また、はっきりとして吐血や下血(血便)がなくても、最近貧血が多い、疲れやすくなったという人は、念のため検査を受けるようにしましょう。
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