記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/27 記事改定日: 2020/8/24
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高齢者やヘビースモーカーの方は特に感染に注意が必要な「肺真菌症」をご存知ですか? 近年の高齢化社会に伴い、感染者数が増加傾向にある感染症です。今回はこの肺真菌症について、症状や原因、レントゲン検査、治療法などをお伝えしていきます。
「真菌」とはカビの仲間の総称で、空気中に浮いている真菌を吸い込んだことで発症する感染症を「肺真菌症」といいます。近年患者数が増加傾向にあり、アスペルギルス、クリプトコッカス、ムーコルなどの種類の真菌によって引き起こされます。
肺真菌症の主な症状は、以下の通りです。
結核や肺炎の症状とよく似ているため、真菌が原因とは疑いにくい場合もあり、検査によって真菌症とわかることがあります。症状は急激に進む場合と緩やかに進行する場合があります。これは原因となる真菌の種類によって違ってきます。
真菌にはさまざま種類がありますが、肺真菌症をもたらす主な真菌は、アスペルギルス、クリプトコッカス、ムーコルなどです。中でも多いのはアスペルギルスによる肺真菌症で、これは肺アスペルギルス症とも呼ばれます。
アスペルギルス、クリプトコッカス、ムーコルはその多くが、土壌などの環境中に存在する真菌で、その酵母などが空気中に飛散し、それを人が吸収することで肺へと感染します。
ただ、健康な人が肺真菌症に突然かかることはほとんどありません。基本的には、次の項目に当てはまる人が肺真菌症にかかるといわれています。
上記に当てはまる人は、免疫力が低下しているため肺真菌症に感染しやすいといえます。ただし、クリプトコッカス菌は、健康な人にも感染することがあります。
また、上記の服薬や治療を行っていなくても、次の項目に当てはまる人は肺の防御システムが弱っており、肺真菌症を起こしやすいので注意が必要です。
アスペルギルスなどの真菌は肺に病巣をつくるので、ご紹介したような症状が現れたら、まずは呼吸器科を受診してください。感染症科もおすすめです。
肺真菌症は、肺内に球状の塊のような病変を形成することが多いです。このため、レントゲンやCTなどの画像検査によって病巣を発見することが可能です。
しかし、画像検査だけではその病変が真菌症によるものなのか確定することはできません。真菌症を確定するには、真菌に感染すると血液中に上昇するβ-Dグルカンと呼ばれる物質の数値を調べるための血液検査が行われ、真菌の種類を調べるには気管支鏡検査を行って病変の一部を採取し、病理検査を行う必要があります。
検査で肺真菌症が判明した場合は、基本的には抗真菌薬による服薬・点滴治療が進められます。ただ、肺アスペルギルス症など病巣が一箇所に限定されている場合は、切除手術を行います。
肺真菌症の治療は基本的には抗真菌薬による薬物療法が行われます。軽度な場合には内服薬が用いられますが、高熱や激しい咳嗽などの症状がある場合には点滴による治療が行われます。
重症度や患者の免疫力などの状態によって異なります。薬物療法では2週間~2か月程度で治療を完了するのが一般的です。
一方、手術を行う場合には完治するまでに1か月程度かかることが多いとされています。
肺真菌症は、上述した通り免疫力が低下しやすい病気や肺の機能が低下する病気にかかっている、免疫力が低下するような副作用のある薬を服用している方が発症しやすい病気です。
発症リスクがある人は、肺真菌症を予防するためにも日ごろから次のような対策を行いましょう。
肺真菌症の原因菌はどこにでも存在している菌のため、誰でも感染の可能性はあります。特に免疫力が低下している人や肺の病気の既往がある人は感染リスクが高く、発見が遅れた場合は治療が難しくなるともいわれています。血痰や咳など気になる症状が見られたら、早めに呼吸器科などを受診してください。
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