記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
よく「中性脂肪が多いとよくない」とはいいますが、中性脂肪の数値が高いとどんな病気になるリスクが高いのでしょうか。以降で詳しく解説します。
「中性脂肪」とは、3つの脂肪酸とグリセロールという物質が結びついてできた、体脂肪のもとになるものです。3つの脂肪酸のうちのほとんどがトリグリセリドという脂肪酸なので、「トリグリセリド」ともよばれています。
体についた贅肉の大部分が中性脂肪であることから、中性脂肪は良くないものというイメージがありますが、生きていくためになくてはならない役割を果たしています。
ひとつは、万が一に備えた「エネルギーの貯蔵庫」としての役割です。体を動かすエネルギー源としては血液中に含まれる糖分が使われますが、これが枯渇したときには中性脂肪がその代わりになります。また、脂肪組織として「断熱材」として冷たい外気から体を守って体温を一定に保ち、さらに、衝撃を受けたときには「クッション材」として骨や内臓など体のさまざまな組織を守ります。
中性脂肪は、検査値が高くてもこれといった自覚症状はありません。しかし正常値とされる30~149mg/dLを超える場合には、なんらかの対策が必要です。
中性脂肪を必要以上に貯め込むと肥満症になるだけでなく、いったん増えた中性脂肪がなかなか分解できなくなります。そのまま放置すると、エネルギーに変換されない中性脂肪が善玉コレステロールを減らして悪玉を増やし、その結果、血管にコレステロールが付着したり血液がどろどろになって脂質異常症に発展します。
血管の老化が進んで、動脈硬化から狭心症や心筋梗塞といった心疾患や脳血管疾患を起こしやすくなるほか、肥満症により糖尿病などを発症することもあります。さらに高いコレステロール値、高血圧、糖尿病、喫煙、ストレスなどが重なると、動脈硬化の危険性は増大します。正常値を超えかつその他の危険因子がある人は医師に受診しましょう。
食事では、過食をやめてバランスよく栄養をとること、甘いものは控え魚介類と植物性タンパクを増やす、固形の油脂は使わず液状のものを減らして使う、飲酒は控え喫煙はやめる、食物繊維や抗酸化物質をとるのが基本です。
もしも肥満であるなら、まずそれを解消するようにしましょう。特に糖尿病を合併している場合には、1日のカロリー摂取を1,300kcal程度に抑える必要があります。肥満でない人は、標準体重×(30~35kcal)で計算し、1,500~1,800kcalほどが良いでしょう。
食事では、麺類や清涼飲料水、果物に注意して糖分の摂取を控え、間食はしないようにしましょう。適度な運動も必要です。ウォーキングや軽いジョギングや水泳など有酸素運動を、1日30分以上行うことを目標にしましょう。
中性脂肪は、エネルギー源の不足を補う貯蔵庫としての役割を果たすなど、人が生きていくためになくてはならないものです。しかし貯め込みすぎると、肥満症から高脂血症や糖尿病を起こしたり、悪玉コレステロールを増やして動脈硬化を引き起こし、狭心症や心筋梗塞といった心疾患や脳血管疾患を起こすリスクがあります。日頃から生活習慣を見直しましょう。
この記事の続きはこちら