記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
緊張したり、いきなり走ったりするとドキドキと脈打つ「心臓」。ちょっとした瞬間に動きを意識することも多いですが、この心臓の構造はどうなっているのでしょうか?心臓の冠動脈が不調に陥ったときに起こる疾患などを解説します。
心臓は、胸の中央、やや左側にあります。全体が筋肉でできており、収縮することで全身に血液を送ります。
血液は人間が生きるのに必要な酸素や栄養を運んでいるため、心臓の動きが止まれば、これらが身体に行き渡らなくなって死んでしまうのです。
さらに心臓は、このように血液が送り出される場だけでなく、全身の臓器をめぐった血液が戻ってくる場でもあります。心臓に戻ってくる血液には、全身の臓器から排出された二酸化炭素や老廃物が含まれているため、それらを処理できる臓器へとまた血液を送り出すのです。
心臓は、左右上下で4つの部屋に分かれています。上部にある2つを心房、下部にある2つを心室と呼び、それぞれが左右に分かれているのです。
下部右側の部屋である右心室からは肺動脈と、下部左側の部屋である左心室は大動脈とそれぞれつながっています。
左側の部屋にある血液はこれから全身に送り出される新しいもの、右側の部屋にある血液は全身から戻ってきた古いものです。そのため、左右の血液が混ざることのないよう、筋肉と繊維で完全に分けられています。さらに、血液が逆流することのないよう、各部屋には弁がついていて流れを一方向に保っています。
心臓の表面には、冠動脈という血管が張り巡らされています。冠動脈には右冠動脈と左冠動脈という2種類があり、左冠動脈は前下行枝、回旋枝に大きく3本の枝に分かれます。
このなかのどれかが狭くなったり詰まったりすると、心臓そのものに十分な血液が行き渡らなくなります。すると心臓に酸素が届かず、狭心症や心筋梗塞といった重篤な病気が引き起こされるのです。
狭心症は、原因や症状によって種類が分けられます。たとえば、日常生活では支障がないものの運動などで酸素が多く必要となったときに起こる「労作性狭心症」や、安静にしているときでも突然起こる「冠痙攣性狭心症」や、頻繁に発作が起こる「不安定狭心症」などです。
また、冠動脈が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉に酸素が行き渡らなくなって一部が壊死してしまった場合は「急性心筋梗塞」と呼ばれます。一度壊死した部分の筋肉は元に戻ることがないうえ、命の危険も高くなる重篤な病気です。
冠動脈に疾患が見つかった場合、その治療法は大きく3種類あります。
1つめは、血液をサラサラにする薬などを用いた薬物治療です。アスピリンなどの抗血小板薬、心臓の酸素需要量を減らすβ遮断薬、冠動脈を拡張させる冠血管拡張薬などを飲み続け、心臓の動きや血液の流れを管理します。
2つめは、カテーテルやガイドワイヤーと呼ばれる道具で、血管が狭くなっているところを拡げる冠動脈形成術です。狭くなった血管部分に細いワイヤーとバルーンと呼ばれる風船を通し、それを拡げることで血管を拡張させます。この手術の長所としては、胸を開く必要がなく体への負担が少ない点、短所としては再度血管が狭くなる可能性がある点などが挙げられるでしょう。
3つめの治療法は、「冠動脈バイバス術」と呼ばれる外科手術です。狭くなった血管部分の先に、グラフトと呼ばれる新しい血管をつなぐことで、新しい血液の通り道を作り出します。このグラフトはグラフトの適性をもつ患者本人のいくつかの血管の中から、状態のよいものなどが用いられます。胸を開いて行う外科手術のため、患者の負担は大きく、危険度が高いという短所がありますが、現在狭くなっている血管部分の状態が悪化したとしても新しい通り道で血液を運び続けられるという長所もあります。
心臓は、新しい血液を全身の臓器に送り込んだり、古い血液が戻って来たりする非常に大切な臓器です。心臓の表面には、右冠動脈と左冠動脈と呼ばれる2種類の血管が3つに分かれて流れており、ここに異常が起こると、狭心症や心筋梗塞といった重篤な病気を引き起こします。
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