耳せつ(限局性外耳炎)を予防することはできる?

2018/1/24 記事改定日: 2019/9/20
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三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

耳せつとは、限局性外耳炎という外耳炎の一種であり、耳の穴に膿が溜まった塊ができてしまう病気です。
この記事は、耳せつの原因や特徴、治療法について解説しています。プールや海に行く機会が多い人は発症しやすいといわれているので、この記事を参考にしてください。

耳せつ(じせつ)の痛みの特徴は?

耳せつ(じせつ)とは、耳の中の外耳道(がいじどう)が炎症を起こし、「せつ」と呼ばれる膿のかたまりができてしまう病気です。
主な症状は耳の痛みで、通常の外耳炎よりも強い痛みが出ます。

耳せつは外耳道の耳の入り口付近に発症することが多いですが、まれに鼓膜に近い外耳道の内側にできることもあります。
痛みはせつの位置が耳の奥であればあるほど強く、炎症が進んで重症化すると、頭痛などの症状を引き起こすこともあります。

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耳せつは何が原因で発症するの?

耳せつは、爪や耳かきによって耳の中に外耳道に傷ができ、そこからブドウ球菌などの細菌に感染することによる外耳炎が原因で発症することが多いです。
夏に患者数が増えるのは、夏は耳が濡れる機会が多く、傷ができやすい状態になっていることが多いことが原因ではないかと考えられています。

耳が濡れるとかゆくなるので耳かきをしたくなる気持ちはわかりますが、一般の人が耳かきをすることは、耳垢を耳の奥に押し込んでしまったり、外耳道を傷つけて外耳道炎を引き起こす原因になることがあるのであまりおすすめしません。

関連記事:耳かきが外耳炎の原因!?耳掃除は必要ないって本当なの?

耳せつはどうやって治療するの?

耳せつは、外耳道内のせつがつぶれて膿がすべて出てしまえば治るため、炎症を抑えてせつを自潰(じかい:自然にやぶれること)させるための治療が行われます。

基本的には患部に対する投薬が治療の中心であり、せつの炎症をおさえるための抗生物質や副腎皮質ステロイド薬の塗布、酢酸と副腎皮質ステロイドが入った点耳薬を使用していきます。

状態によっては、圧迫してせつをつぶすために耳に綿を詰めたり、鎮痛薬や抗生物質などの飲み薬が処方されることもあります。

また、炎症を抑えるには外耳道が乾燥した状態でなければいけないため、治療期間中は水泳を控えたり、入浴時にキャップをつけるなどして、外耳道が乾燥した状態を保つための対策が行われます。

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切開するのはどんなとき?

耳せつは悪化すると飲み薬や塗り薬ではよくならないことがあります。そのような場合には、耳せつを切開して溜まった膿を出す治療が必要になることも珍しくありません。
具体的には次のような状態のときに切開が必要になります。

  • 治療をしてもよくならない
  • 非常に強い痛みがある
  • 病変が大きく腫れ上がって熱感などを伴う

切開の仕方は医療機関によって異なりますが、一般的には少量の局所麻酔を行った上で耳せつの一部にメスで穴をあけ、耳の中を洗浄します。
切開した部位は自然にふさがりますので縫合の必要は通常ありません。また、乳幼児の場合は局所麻酔のみでは危険なことがありますので、外耳道の奥にできた耳せつの切開は全身麻酔をかけて行うケースもあります。

耳せつを予防するにはどうすればいい?

耳せつを防ぐには、耳の中を清潔に保つことが重要です。
とくに水泳をする機会の多い人は発症しやすいですので注意しましょう。

日常生活では、こまめに耳垢を除去し、定期的に耳鼻科で耳の中のクリーニングを行うのがよいでしょう。
ただし、過度な耳掃除は外耳道を傷つけ、かえって耳せつができやすくなることがあります。自分で耳掃除をするときは、先端が柔らかい綿棒などを用いて、そっとやさしく外耳道を撫でるようにふきとってください。

また、耳せつは耳の入り口にできやすいため、入浴後や水泳後など耳の中が濡れている場合には、タオルで入り口付近をふきとるものよいでしょう。

関連記事:耳掃除はどのくらいの頻度で行えばよい? 耳にやさしい掃除方法は?

おわりに:原因を知って普段から意識しておけば、耳せつは予防できる

耳の激しい痛みを伴う耳せつは、日常生活での癖や習慣を改めることで、予防できるといわれています。
万が一発症したとしても、耳鼻科で適切な治療を受ければ、1週間ほどで回復できる病気です。この記事で原因と症状理解し、予防に役立てましょう。そして思い当たる症状がある場合は、すぐに耳鼻科を受診してください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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