記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
「なんだか胃腸が痛いかも」とお腹をさすることはよくありますよね。しかし胃腸の正しい場所や臓器の位置関係をよくは知らない人も多いはず。なんとなく「痛みの原因は胃だろう」と思っていたものの、実は別の臓器に異常が発生している場合もありえます。この記事では、胃腸の調子が悪いときに疑われる病気を紹介します。
消化管とは食道、胃、腸など飲食物を消化・吸収するための臓器です。ひとつひとつの臓器の働きが関連しあい、体は栄養素を正常に吸収しています。消化管に異常が発生したときにみられる症状は、のどの痛みや違和感、げっぷ、胃や胸の痛み、胃もたれ、膨満感、嘔吐、便秘、下痢などさまざまです。
どの臓器に異常が発生しているか、何が原因で症状を引き起こしているかを自分で判断するのは難しいといえます。適切な処置を受けるためには、病院に行って痛みを感じる場所や症状が発生した時期、頻度、痛みの強さなどを医師にしっかりと伝えることが必要です。
次の項目では、痛みが発生する場所ごとに疑われる病気を説明します。痛みの種類を知ることで、いざというときに自分で症状を説明できるようにしておきましょう。
胃のあたり、いわゆるみぞおちとは、腹部の上方の中央部分にあるくぼみです。みぞおちの周囲には、胃、十二指腸、胆のう、膵臓が集まっています。心臓に異常が発生した際にみぞおちが痛むことがありますが、心臓が正常である場合はそのほかの臓器に原因があると考えられます。
腸の周辺には小腸、大腸、腎臓が位置しており、細菌の感染による急性腸炎を原因として症状があらわれやすい部位です。そのほか腎臓や尿路が病気にかかると、お腹の真ん中あたりに痛みがあらわれることがあります。
下腹部には、大腸、子宮、卵巣、膀胱などが集まっています。急性腸炎(細菌感染によって起きる腸の炎症)、右下腹部に痛みがあらわれる虫垂炎(盲腸炎)、下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群、子宮や卵巣の疾患、膀胱の疾患などが下腹部の痛みの原因として考えられます。消化器内科、泌尿器科、婦人科など診察をどこで受ければ迷ってしまいますが、まずは内科か、かかりつけの医師に診てもらうとよいでしょう。
腹部が全体的に痛む場合は重症の病気が疑われます。命に関わることもありますので、すぐに病院を受診してください。診察の際には、痛みがどこから始まったかを伝えると原因の特定がしやすくなります。
胃腸の不調は「食中毒」によって引き起こされるケースが多くみられます。食中毒とは「感染性腸炎」の一種で、主な原因は体に害を与える細菌またはウイルスに汚染された食べ物や飲み物を口にすることです。乳幼児と高齢者など免疫力が低い人が罹りやすいといえます。食後に腹痛、下痢、嘔吐、発熱、血便などがみられたら食中毒の可能性があります。食中毒を引き起こす代表的な細菌やウイルスと、その症状を紹介します。
食中毒への感染は特に夏と冬に多く発生します。
胃腸などの臓器には異常がないのに、腹痛や便秘、下痢を繰り返す場合はストレスを原因とする「過敏性腸症候群」を発症しているかもしれません。臓器の働きは、脳の視床下部から出された命令が自律神経に伝わることで正常に行われます。ところがストレスは視床下部に影響を与え、臓器の働きを乱しますので、ストレスが胃腸に不調を引き起こすことがありえます。
胃腸のあたりに起こる不調は珍しくはないように思えますが、原因の見極めは簡単ではありません。原因を正しく特定することで、症状の改善がしやすくなります。胃腸について理解し、気になる症状に正しく対応できるようにしておきましょう。
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