オリゴ糖の効果 ― 毎日の食事に取り入れるコツと注意点

2021/10/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

オリゴ糖のイメージ画像

オリゴ糖は、ダイエットや血糖値コントロール、腸内環境改善に役立つことで知られている糖類です。実は、オリゴ糖にも種類があるのですが、効果や使用上の注意点は違うのでしょうか。また、オリゴ糖にはデメリットもあります。使い方を間違ってしまうと望んだ結果が得られないことがあります。

今回は、オリゴ糖の種類別の特徴と効果の違いと、食事に取り入れるときのコツと注意点について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

オリゴ糖の種類と特徴の違い

オリゴ糖は、糖質の最小単位である「単糖」が複数個(通常は2個〜10個程度)結合した糖のことです。少糖類と呼ばれることもあります。
オリゴ糖にははっきりした定義がなく、ショ糖や麦芽糖、乳糖などの二糖類をオリゴ糖に含める場合もありますが、一般的には単糖類が3個〜10個結合したものをオリゴ糖と呼びます。

オリゴ糖には、消化しにくい「難消化性オリゴ糖」と、消化しやすい「可消化性(消化性)オリゴ糖」があります。難消化性オリゴ糖は腸まで届きやすく、ビフィズス菌などの善玉菌のエサになることで「プレバイオティクス」として働き、腸内環境の改善に役立ちます。
オリゴ糖にはたくさんの種類がありますが、食品として商品化されているオリゴ糖のほとんどは「難消化性」の性質を利用したものです。一般的なオリゴ糖の種類には以下があります。

フラクトオリゴ糖の特徴

原料
果糖(フルクトース)が結合したオリゴ糖で、ショ糖から作られる
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • 短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸など)に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • 虫歯になりにくい
  • 血糖値が上がりにくい
  • ミネラルの吸収を助ける
  • スカトールやインドールなどの便中の腐敗物質を抑制し、便やおならの臭いを低減する
  • 脂質代謝や免疫機能の向上に役立つ可能性がある
  • 飲料やデザート、砂糖の代替調味料として使われることが多い
甘さの特徴
砂糖の30%〜50%程度の甘さで、クセがなく、まろやかでサッパリした甘みが特徴。甘さ控えめだが砂糖の風味に近いため食べやすく、料理でも使いやすい
含まれる食品
  • バナナ
  • 玉ねぎ
  • ごぼう
  • ニンニク
  • アスパラガス など

ガラクトオリゴ糖の特徴

原料
乳糖にガラクトースが結合したオリゴ糖で、牛乳に含まれる乳糖から作られる
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • 虫歯になりにくい
  • 血糖値が上がりにくい
  • ミネラルの吸収を助ける
  • たんぱく質の消化、吸収を助ける
  • 熱や酸に強いので保存しやすく、料理でも使いやすい
  • 吸湿性があるため、ホイップやクリームの質感を高める
甘さの特徴
砂糖の30%前後の甘さでクセがなく、あっさりと控えめな甘さが特徴
含まれる食品
  • 牛乳
  • 母乳 など

キシロオリゴ糖の特徴

原料
キシロースが結合したオリゴ糖。とうもろこしの芯などの食物繊維から作られる
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • キシロビオース、キシロトリオースの作用でビフィズス菌の増殖が活性化されるため、ほかのオリゴ糖よりも少ない量で腸内環境改善効果が期待できる
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • 血糖値が上がりにくい
  • 熱や酸にとても強く、安定している
  • 菓子類などに使われることが多い
  • 酢を使った飲料にとくに適している
  • 錠剤として使われることもある
甘さの特徴
砂糖の25%〜40%程度の甘さ。甘さはひかえめだが、甘みの質は砂糖に似ている
含まれる食品
  • タケノコ
  • キノコ など

イソマルトオリゴ糖の特徴

原料
ブドウ糖(グルコース)が結合したオリゴ糖のうち分岐構造も持つオリゴ糖。とうもうろこしなどのデンプンから作られる
性質、期待される効果
  • 一部が難消化性
  • ほかのオリゴ糖と違って小腸である程度消化されるが、デンプンよりは消化されにくい
  • ビフィズス菌の増加や有害菌の減少を促すことで、腸内環境の改善効果が期待できる
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • 腸内や便中の腐敗物質を抑制する作用により、腸内環境の改善を促す
  • 一部が消化されるため、ほかのオリゴ糖よりも血糖値が上がりやすい
  • 熱や酸に強く、保湿性が高い。デンプンの老化(やわらかくなったデンプンが再び固くなること)の抑制作用がある
  • しっとりとした食感を作る、風味や味質調整、煮崩れ防止などで使われる
甘さの特徴
まろやかで、旨味のある甘みが特徴。口にすると甘みが弱く感じることもあるが、砂糖の40%〜50%程度の甘みがあるものもある
含まれる食品
  • みりん
  • しょう油
  • 日本酒
  • 味噌
  • はちみつ など

大豆オリゴ糖の特徴

原料
ラフィノースとスタキオースが結合したオリゴ糖。大豆に含まれるため、直接抽出したものを製品化する
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • ほかのオリゴ糖よりも少ない量でも、腸内環境の改善がみられる
  • ほかのオリゴ糖よりもカロリーが高く、甘みも強い
  • 熱や酸に強く、旨味やコクの増強、保存性の向上で使われる
甘さの特徴
砂糖の70%〜80%の甘さを持つ、非常に甘いオリゴ糖。砂糖に近い甘味がある
含まれる食品
  • 大豆
  • 豆類
  • しょう油や味噌などの大豆製品 など

乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)の特徴

原料
乳糖に果糖が結合した三糖類のオリゴ糖。乳糖とショ糖(砂糖の主成分)を酵素の作用で糖転移反応させて製品化している
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • 血糖値が上がりにくい
  • ビフィズス菌の増殖を促すため、少量でも腸内環境の改善効果が得られる
  • 便の性状を良くする作用がある
  • ミネラルの吸収を助ける可能性がある
  • 砂糖と性質が似ているため、砂糖や水飴の代わりで使われる
甘さの特徴
砂糖に近い甘みの質を持ち、50%程度の甘みの強さがある
含まれる食品
酵素技術で開発されたオリゴ糖のため、自然の食べものには含まれない

ラフィノースの特徴

原料
ショ糖にガラクトースが結合した三糖類のオリゴ糖。甜菜(ビート、砂糖大根)から甜菜糖を精製する際に出る糖蜜から作られる
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌などの善玉菌のエサになり、腸内環境を整える
  • ビフィズス菌の増加や有害菌の減少を促すことで、腸内環境の改善効果が期待できる
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • ビフィズス菌がエサにしやすい
  • 血糖値が上がりにくい
  • 免疫やアトピー性皮膚炎への効果の研究が進められている
  • 熱や酸への強さは砂糖と同じくらい
  • 吸湿性がないため、錠剤や粉末、顆粒などへの加工に適している
  • 砂糖の代替調味料で使われることも多い
甘さの特徴
甘みは砂糖の20%程度とそれほど強くないが、甘みの質は砂糖に近く、甘みが上品なためさまざまな料理で使いやすい
含まれる食品
  • 甜菜(ビート)
  • キャベツ
  • ブロッコリー
  • アスパラガス
  • 大豆
  • ユーカリ樹液 など

キチンオリゴ糖の特徴

原料
グルコサミン(N-アセチルグルコサミン)が結合したオリゴ糖。カニやエビの殻に含まれるキチンから作られる
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • ビフィズス菌の増加を促すことで、腸内環境の改善効果が期待できる
  • 血糖値が上がりにくい
  • 免疫やがんに対する効果の研究が進められている
  • 医薬品として研究されてきたが、サプリメントや食品としての効果についても研究が進められている
甘さの特徴
あっさりとしている甘み。甘さの強さは砂糖の20%〜30%程度
含まれる食品
  • カニやエビの殻から精製されるため、自然の食べものには含まれない

ラクチュロース(ラクツロース)の特徴

原料
ガラクトースと果糖が結合した二糖類のオリゴ糖。牛乳に含まれる乳糖から作られるミルクオリゴ糖の一種。牛乳を加熱することでも生成される
性質、期待される効果
  • 難消化性
  • ビフィズス菌のエサになり腸内環境を整える
  • 善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促すことで、腸内環境の改善効果が期待できる
  • 短鎖脂肪酸に分解され、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促す
  • 虫歯になりにくい
  • 血糖値が上がりにくい
  • カルシウムなど、ミネラルの吸収を助ける
  • 赤ちゃんの便秘、産婦人科手術後の排便や排ガス(おなら)の促進に処方されることがある
  • 血液中のアンモニアを減らすために処方されることがある
  • おもにシロップとして流通しているが、最近は粉末も流通している
  • 熱や酸に強く、溶けやすいので料理や加工品で使われる
  • 育児用ミルクにも配合されている
甘さの特徴
甘さの強さは砂糖の50%程度。飲みやすいように加工されていることが多い
含まれる食品
  • 牛乳

オリゴ糖のメリットとデメリット ― 毎日の食事で使いこなすコツ

オリゴ糖には、善玉菌と悪玉菌のバランスを整えて腸内環境を改善する効果があり、低カロリーで血糖値が上がりにくいというメリットがあります。甘みの強さや風味は種類によって違いますが、砂糖に近い風味のオリゴ糖も多く、砂糖の代替調味料としても使いやすいです。

一方で、難消化性のオリゴ糖は、摂りすぎるとお腹がゆるくなったり、お腹にガスが溜まったりすることがあります。また、低カロリーで血糖値が上がりにくいとはいっても、摂りすぎれば肥満や血糖値の異常の原因になります。

オリゴ糖を使いこなすには、メリットとデメリットを理解することが大切です。毎日の食事に取り入れるときは、以下を意識しましょう。

オリゴ糖のメリットを活かすポイント

ダイエット、肥満解消したい人

難消化性のオリゴ糖は、直接消化、吸収ができない低カロリー・低GI食品です。血糖値が上がりにくく、便秘解消の効果が期待できます。ダイエットをしたい人はもちろん、中性脂肪値が高めと指摘された人、血糖値に気をつけるように指摘された人にもおすすめです。ダイエットで不足しやすい、ミネラルの吸収も助けてくれます。

料理、コーヒーや紅茶、デザート、ヨーグルトなどで砂糖を使っていた人は、砂糖の代わりにオリゴ糖を使いましょう。オリゴ糖の1日の摂取量の目安は、2g〜10g程度といわれています。

オリゴ糖の味に慣れていないのに、今までつかっていた砂糖をいきなり全部置き換えても、長く続きません。1日の摂取量の範囲内で、少しずつ置き換えながら慣らしていきましょう

便秘解消、便性・便臭の改善したい人

短鎖脂肪酸には、善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促し、腸内環境を整える働きがあります。短鎖脂肪酸は、腸内で善玉菌がオリゴ糖を分解、発酵することで産生されます。
短鎖脂肪酸は食物繊維からもできますが、オリゴ糖は食物繊維よりもビフィズス菌にエサにされやすく、善玉菌の増殖を助ける働きもあるため、早く効果が出やすいといわれています。

オリゴ糖を少量摂取する治験では、便秘の解消、軟便などの便性の改善、便臭やおならの臭いの改善がみられたという報告もあります。

野菜など、食物繊維をたくさん摂っているけど、お腹の調子が良くない、便やおならの臭いが気になるという人は、毎日の食事にオリゴ糖を取り入れてみましょう。ヨーグルトや納豆、味噌、しょう油などの「善玉菌が豊富な発酵食品」をあわせて摂るようにすると、腸内環境はさらに整いやすくなります。

食後も集中力を長続きさせたい人

難消化性のオリゴ糖は直接消化、吸収されませんが、ビフィズス菌が産生した短鎖脂肪酸が腸内で吸収され、エネルギーとして利用されます。難消化性のオリゴ糖は、ゆっくりとエネルギーに変わるため、食後血糖値は急激には上がりません。

食後にガマンできない眠気におそわれたり、集中力が長続きしなかったりするのは、血糖値スパイクが原因の場合があります。血糖値スパイクとは、食後に急激に血糖値が上がった後、急激に下がることです。

食後に必ず眠くなってしまう人は、砂糖をオリゴ糖に代えてあげると、改善するかもしれません。ただし、砂糖とは別の糖類が血糖値スパイクの原因になっている可能性もありますので、ご飯やパンなどの主食を、玄米や全粒粉パンなどの低GI食品にすることも大切です。

免疫機能を保ちたい人

免疫機能の維持には、ビタミン類が必要です。ビフィズス菌などの善玉菌は、腸内でビタミン類を産生します。また、善玉菌自体が免疫機能の維持に関わっていることもわかっています。
オリゴ糖を摂って善玉菌を増やすことは、免疫機能を保つことに役立ちます。

ただし、免疫機能を維持するには、規則正しい生活とバランスの良い食生活、十分な休養と適度な運動習慣が大切です。また、健康のためには「特定の栄養や食品に頼りすぎる」こともよくありません。生活習慣全体を見直し、サポートとして取り入れるようにしましょう。

オリゴ糖のデメリットと注意点

オリゴ糖の摂りすぎによるお腹の不調や体重増加を防ぐため、オリゴ糖を取り入れるときには、以下に注意しましょう。

摂取量を確認する

オリゴ糖の調味料やオリゴ糖配合の食品、サプリメントを使用するときは、必ず摂取量を確認しましょう。1日の摂取量の目安は2g〜10g程度ですが、摂りはじめたばかりの時期や一度にたくさん摂りすぎた場合は、目安の範囲内でもお腹がゆるくなることがあります。
オリゴ糖の摂取量は、自分の体質や体調にあわせて調節しましょう。

味覚に頼りすぎない

オリゴ糖は砂糖と甘みの質が似ているので、砂糖の代わりとして使いやすいです。しかし、甘みの強さは砂糖の20%〜50%程度のものが多く、砂糖に比べると「甘さ控えめ」になります。砂糖と同じ甘さを再現しようとすると、使用量が増えやすいです。

慣れてくるとオリゴ糖のやさしい甘みでも満足できるようになります。使いはじめのうちは十分に注意してください。

オリゴ糖以外の糖類が添加されていないか確認する

オリゴ糖と表記されている調味料や食品には、砂糖などの「オリゴ糖以外の糖類」が添加されていることがあります。また、甜菜糖のように、オリゴ糖が含まれていても大半はショ糖が占めているものもありますし、イソマルトオリゴ糖のように一部が小腸で吸収されるオリゴ糖もあります。

オリゴ糖100%と勘違いして使いすぎてしまったという人も珍しくないようです。オリゴ糖と表記されている食品は、成分表や総カロリー量をきちんと確認してから使いましょう。

おわりに:オリゴ糖を使うときは、成分表と量に注意。少しずつ慣れさせて継続することが大切

難消化性のオリゴ糖は、低カロリーで低GIの血糖値を上げにくい糖類です。善玉菌の増加と悪玉菌の減少を促すことで腸内環境の改善し、便秘解消や免疫維持にも役立ちます。食生活が乱れがちな人や高齢者・シニアの健康対策にもおすすめです。
ただし、摂取量に気をつけないと、カロリーオーバーになったり、お腹がゆるくなったりすることがあるので注意が必要です。オリゴ糖配合の食品を使うときは、成分表を確認して、自分の体質と体調にあう適切な量を摂取しましょう。
また、オリゴ糖は自然の食べものにも含まれています。オリゴ糖を多く含む食品をうまく取り入れることも、過剰摂取を防ぐことに役立ちますので、ライフスタイルにあわせて使い分けてください。

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